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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと緑の森の家(童話掌編シリーズ・完結)

    エドさんと緑の森の家・12月9日

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    「それで、またも怪しげな人間……じゃないな。怪しげな存在が増えたわけか」

     ジム署長は、苦々しげに、コーヒーをすすりました。

    「そこな人間の男よ。わらわの言を疑うのか。かような礼儀知らずは、衛兵たちの槍の錆にしたいところじゃが、口惜しいことよ」

    「そんなことになったら、わたしは許しませんからね!」

     鍋をかぶってほうきを構えたクロエさんは、妖精国の女王を睨みつけました。

    「まあ、待ってくれ。これで、いろいろなことが説明づけられることがわかるだろう。女王さまも話してくださったし」

    「いっておるではないか。この娘、グレンはわらわが娘だと」

    「てっきり、これまで、男だとばかり……」

     司祭さまが、信仰にはちょっとばかり脇に退いてもらって、複雑な顔でビールをひと口飲みました。

    「わらわは、このエドとかいう人間の男がわが宮殿を訪れたとき、考えたのじゃ。人間から身を隠すことで存在を保っていたわれらじゃが、悪辣な人間の知恵は、われらの想像を超えておった。いつまでも隠れ通すわけにはいかぬと悟ったわらわは、わが一族の勇士と契り、子をなすことにした。それが、グレンじゃ。じゃが、わらわがこれまで子をなさなかったのは、わが子には課される試練があったからじゃ。悪魔との対決は危険に過ぎた」

    「グレンは、成長すれば、妖精国の絶対君主というわけだ。悪魔が狙わないわけがない。妖精国が、丸々手に入るわけだからね」

    「一年のうちに、わが子が契約により進んで悪魔のものとなれば、悪魔の勝ちじゃ。妖精国は、悪魔がものと化そう。しかし、その約定には、わらわがわが娘に術をかけることまでは禁じられておらなんだ。わらわは、娘に、悪魔がそもそも、その存在にすら気がつかぬ術と、気がついたとしても、見ることも手を触れることもできぬようにする術をかけた。悪魔が見ることができぬよう、人間の知恵が作り出した、カメラとかいう機械……それはもちろん、絵や像を作ることもできなくして、わらわは大いなる約定どおり人間界に送ることにした。あまりに身を潜めすぎていたため、人間界のことなどとんとわからなくなっておったが、わらわには勝算があった。妖精と人間との間においても礼節を忘れぬ、正しき心と知恵を備えた、信頼できる男のもとへと、わらわは娘を送り出したのじゃ」

    「わたしのことらしい」

     エドさんは、自分を指差しました。

    「……つまり、その術のうち、悪魔に存在が気づかれぬ術、というのを、伯爵が礼法で破ってしまった、ということですか?」

     司祭さまの問いに、女王さまは重々しくうなずきました。

    「かようなことが起こるわけがないとは思っておったが……口惜しいことよ。人間と共存した新しき妖精国を作るには、まだまだ人間について知らねばならぬことが多いようじゃ」

    「わたしはだまされませんからねっ」

     クロエさんは、ほうきを野球のバッターのように構えてうなりました。

    「人間の女よ、そなたも頑固よのう」

     嘆息した女王さまに、司祭さまはかぶりを振っていいました。

    「無理もないですよ。一週間たっても、わたし自身が信じられないんですから。今でも、心の奥底で、あなたは実は悪魔が化けたもので、わたしたちをたぶらかすための作り話じゃないか、という疑いの念を捨てきれないんですから」

    「なにをいう。そもそも人の子のそなたらがそうだから、わらわの一族も、受けんでもいい苦しみを受けてきたのではないか」

    「しかたがないですよ。このところ、地獄の国税局のやつが……」

     そこまでいって、エドさんは、はっと気がつきました。

    「そうか! 悪魔があれだけ暴れていたのは、すべて、このときのためだったんだ! 『妖精国の女王』の言葉の真偽を疑わせる、そのためだけに、悪魔はわたしやみんなの前で、『誰にでも姿を変えられる』ということをあそこまでおおっぴらに示していたんだ!」

    「わたしは信じませんからねっ」

    「探偵、おれも、もうちょっと考えたほうがいいと思う」

    「神の啓示が降りてこないのでなんとも」

     エドさんは、すがるように女王さまに視線を向けました。

     女王様は、ごく自然にグレンをその手に抱くと、クロエさんにいいました。

    「そこな人間の女。絵師なら、わらわと娘を描くがよい。これより不可視の術を解く」


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    ~ Comment ~

    Re: YUKAさん

    人を信じることが人を疑うことより簡単なはずはないのであります。

    人を疑うことが人を信じるよりも簡単でないのと同様に。

    あなたがエドさんだったら、どうしますか?

    こんばんは^^

    そういうことか^^

    私も最後まで、女王は悪魔では???と思ってたりします。

    悪魔の罠に嵌まってる。。。?
    まだ、信用できない猜疑心の塊、YUKAですが(笑)

    次回はクロエさん、本領発揮ですね!^^
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