「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと緑の森の家(童話掌編シリーズ・完結)

    エドさんと緑の森の家・12月30日

     ←信じなくともよいのだぞ? →あとがき
    「行ってしまったね。宇宙人も、女王さまも、それに……」

    「いわないで、あなた」

     エドさんとクロエさんは、ふたり並んで、窓から、降り積もる雪を眺めていました。

    「グレンは、今どこにいるのかしら」

    「さあ……女王さまの話では、ほんとうに大人になって、女王の座を継ぐまでには、この人間界をはじめ、ありとあらゆる世界で、修行を積まなくちゃならないそうだしね。それが終わるまでには、人間界の時間で、あと四百九十九年もかかるそうだから……それまで、人類が滅びないでいればいいんだが」

    「不思議なものね。あなたとの子供が、わたしのおなかの中にいるのに、こんなことばかり考えて。でも、グレンはグレンよ。わたしたちにとって、かけがえのない子よ」

     そうです。あの日、女王さまはみんなの前で、クロエさんの懐妊を告げたのでした。翌日、すぐに病院へ出かけていったエドさんとクロエさんは、『おめでたです。妊娠三ヶ月になりますね』というお医者さんの言葉を、神妙な顔をして聞くことになったのでした。

    「世の中に、誰だって、取替えのきく子なんていないよ。わたしたちは、グレンといっしょに、一生涯記憶に残るだろう一年を過ごしたんだ。それでいいじゃないか」

    「そうね。ねえ、あなた、子供が生まれたときの名前、なんてつけようとわたしが考えているか、わかる?」

    「わかるさ」

     エドさんは、窓にカーテンを下ろし、妻をいたわるようにしながら、いっしょにテーブルに向かって歩き始めました。

    「……男の子だったら?」

    「グレン」

    「……女の子だったら?」

    「グレンダ」

     テーブルについたクロエさんは微笑むと、向かいに座るエドさんの手を握りました。

    「当たり。……あなたの、そんなところが大好きよ」

     ふたりは見つめあい、五百年、いや、四百九十九年後の世界について、それぞれに思いを馳せました。

     明日は大晦日です。そして、あさっては新年です。緑の森に囲まれた、小さな村では、村人たちが、それぞれの家で、それぞれの家族と、幸せな時間を過ごしています。病院にいるアリントン夫人だって、来られない伯爵閣下の代わりに話し相手としてやってきたグィド老人と、愛犬モルデカイを連れての伯爵領での療養生活を相談するのに夢中です。

     宇宙人はクロエさんの絵を手に入れて、ご満悦で宇宙のかなたの星へと帰っていきました。今ごろは宇宙船の中で、鼻歌でも……鼻があったらですが……歌っているのではないでしょうか。時間と空間の果てからは……そこがどんなところだかは知りたくもないですが……さすがの悪魔も、おいそれとは逃げ出すことはできないでしょうし。



     さて、一年にわたって続けてきた、この物語も終わりです。それでも、緑の森の家に住む、エドさんたちの生活は続きます。

     どこかのんびりとしている、平和な村ですが、毎日どこかで、さまざまな、小さな事件や、問題が出てきているものです。私立探偵だったときと同様に、いやそれ以上の熱意をもって、エドさんは便利屋として、それらのもめごとを解決していくことでしょう。

     ジム署長は、エドさんとはまた違った意味で、巻き起こるさまざまな事件に頭を抱えています。しかし、署長は優秀な警察官ですから、心配するにはおよびません。

     司祭さまは、村でただひとりの聖職者として、毎日、聖務にいそしんでいます。今の主な仕事は、噂を聞きつけてやってきた物見高い観光客に、ここはそういう異常な村ではないのだと説明して回ることです。

     悪魔に二度もひどい目にあわされたカラン校長先生は、もうすっかり元気です。悪魔とひとりで戦った勇敢な人だ、と生徒たちが噂しはじめ、みんな、尊敬するようになったからです。エドさんたちは……裏ではなにもしていませんよ。たぶん。

     しかし、修行中だとかいう、グレンと女王さまには、いったいどこで会えるでしょう?



     その答えは、エドさんの家の寝室に飾られた、一枚の絵にあります。その木炭画は、緑の森の村の便利屋で頼めば、誰にでも快く見せてくれることでしょう。『聖母子像』というその絵に描かれた、幸せそうな親娘の姿は、クロエさんの最高傑作という人もいます。そしてなぜか、母に抱かれている幼い女の子の背中からは、蝶の羽が生えているのです!

    聖母子像


    エドさんと緑の森の家・了

    画:矢端 想(特別友情参加)


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    ~ Comment ~

    Re: 山西 左紀さん

    クリスマスとあとがきがからんだので、ひさしぶりにショートショートをたくさん書こうと思いまして。

    たくさん書けて楽しかったです(^^)

    それにしても、矢端想さんの絵、素敵ですよねえ……。拡大コピーして額に入れたいという欲望と戦っている毎日であります(^^)

    あぁ!大団円でした。よかった。
    やっとここにたどり着きました。
    最終回を読もうとブログを訪問したんですが、
    ほかの作品にコメントを重ねてしまって、
    なかなかエドさんにたどり着けなかったんですよ。
    よかったです。
    イラストも見事ですね。

    Re: まりんママさん

    エドさんも探偵から便利屋へと華麗なる転身を遂げましたからねえ。でもやることはほとんど変わっていませんけれど。

    なんとなく、長いマラソンを終えた気分である意味爽快でもあったりします。やっぱり、小説は終わらせてなんぼだなあ、と思いますね。つくづく。

    その割には未解決のまま放りっぱなしのエピソードも多かったりするので、それも片づけなくちゃ心が落ち着かないなあ、と思うのはわたしが貧乏性だからでしょうか(^^;)

    Re: limeさん

    矢端想さんのファンになることは誰も止めはしないぞ(^^)

    ブログに遊びに行けば、たぶん楽しい時間を過ごせると思います。

    ほんとですよ。たぶん。


    クロエさんの目が変わったのではありません。グレンが変わったのです。ある意味、これはグレンの成長物語でもあるのですから。そういう意味もこめたつもりです。

    妙な知識だけで小説を書いている男、スパイダーマッ! というのは冗談としても(そうか?)、この三年、貯め込んだ知識を吐き出す量が膨大すぎるので、来年は少々休んで充電しようかと思っています。……って毎年同じこといってるんだよわはは!(^^;)

    Re: 和平明憲さん

    長編を書いたのは一度や二度ではなかったので、ある意味気構えはできていましたが、やっぱり一年間は消耗しますね。いろいろとあった一年でしたし。

    本来は、今日明日とコミケに行って外食して豪遊するはずだったのですが……世の中うまく行かん(^^;)

    1年楽しませていただきました。
    お疲れ様でした。
    エドさんは便利屋の時から好きだったのですが
    終わってしまうのは
    何ともさびしい気がします。

    日曜日の楽しみだったもんな~

    またいつかエドさんに会えますように・・・

    おお、最後にあの絵で締める演出が、にくいです。

    それにしても、素敵な絵ですね!矢端 想さんのファンになりそうです。
    こんな絵が描きたいなあ~><

    グレンって、私のイメージではどうしても映画のグレムリン的になってしまうんですが、クロエさんには、あんな可愛らしい子供に見えるんですね。
    別れが辛いはずです。

    エドさん、おつかれさまでした。
    ポールさんの引き出しの多さに、改めて驚かされるシリーズでした。

    お疲れ様です!

    完結、おめでとうございます!

    1年間書き続けるとは凄いですね。(^_^;)
    私は中途半端ながら今年分の小説は終わりで、今から一人宴会です。(笑)

    ではでは!

    Re: YUKAさん

    楽しみにしてくださってありがとうございます。一年は長かったなあ今にして思えば。

    さて、これから「あとがき」を書かなくちゃなあ。

    いろいろと思っていることもあるからなあ。

    Re: 黄輪さん

    続きですか……。

    書きたくないというわけではないですが、その場合は一気呵成に、ということになるでしょうね。

    体力残っているかなあ。

    考え中です(^^;)

    Re: 矢端想さん

    シャンパンかあ……いいなあ(^^)

    最後にシャンパンを飲んだのは、友人の結婚式に行った時だからなあ。それからはずっとウーロン茶かオレンジジュース。

    さて、あとがきを書くか。ウーロン茶を飲みつつ絵をながめながら。

    それにしても素敵な絵だなあ。ありがたいなあ。わたしの小説を完成させてくださってありがとうございます。これで心おきなく、ぐちゃぐちゃで人が悪くてわけのわからんSF小説に邁進できます(笑)

    こんばんは^^

    一年間お疲れさまでした^^

    素晴らしい物語、最後の大団円、最高です^^

    私もエドさんは日曜日の楽しみでした。
    終わってしまうのは寂しいですが、それでもラストに満足です^^

    矢端 想さんのラストのイラストもとても素敵ですね^^
    エドさんを温かく見守ってきた矢端さんの気持ちが伝わってくるような温かい作品です^^


    ……あ。クロエさんの作品でしたね(笑)

    本当に本当にお疲れさまでした^^

    管理人のみ閲覧できます

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    完結おめでとうございます

    1年間お疲れ様でした。
    毎週日曜にこのお話がアップされるのを、いつも楽しみにしていました。
    また続きがあること、期待しています。

    ありがとうございました!

    「エドさんと緑の森の家」大団円、おめでとうございます!
    やりましたなあ!最後にオイシイとこもらっちゃってスミマセンww

    さあ打ち上げだ!シャンパン飲むぞー!
    ポンポン!!
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