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    幻想帝国の崩壊(遠未来長編SF・完結)

    断片003「身を包んだ皇子に」

     ←MRI →断片004「従者に手渡した」
    (欠落)

    (皇族としての正装に?)身を包んだ皇子に、ルジェは謹んで針を返した。ルジェの身体も、皇族の従者としての正装に包まれていた。

    「よく耐えた」

     襟元で鎌首を上げた蛇に、皇子アヴェル・ヴァールは受け取った針を飲ませた。蛇は口を閉じると、元の肩章に戻った。

    「ルジェ。わたしがなんのためにお前を従者としたか、わかるか?」

     平伏していたルジェは、顔を上げて答えた。

    「おぼろげなことしかわかりませぬ。されど、わたくしめの、刺青師としての素質を見込まれてのことであることだけは、なんとか。それと、ことは畏れ多くも帝国そのものの」

    「口を慎むことを学ぶがよい、ルジェ。わが居室は一面の情報雑音障壁で守られてはいるが、あの『結晶楼閣』に籠っておる錬金術師組合の賢者たちの技術は、雑音より情報を引き出す反(アンチ)エントロピー波動の解明まで、あと一歩と迫っていると聞く」

     皇子アヴェル・ヴァールは薬指を見た。

    「どうしてもその技術が欲しい。技術ではないな、知恵が欲しいのだ。しかし、相手は知と情報のためならば、いかなることも平気でしでかすことで名高い、貪欲なる賢者たちだ。やつらの知識の範囲外にある知をもって、その値に代えざるを得まい」

    「それで、わたくしめの技術を……?」

    「卑しい職人と思うでない、ルジェ。お前は幻想帝国でも最高級の、芸術家にして情報処理技術者だ。スヴェル・ヴェルームに仕える貴人の肌の細胞組織を読み取り、そこに繊細なる注意力をもって、認識の針を操り原子レベルで色素を融合させていく。それがかなわぬでは、生きて自律的に考える、動き這う刺青など、とうてい彫れたものではない。しかも、お前は、その若さで技術を身につけたのだ」

    「もったいなきお言葉を」

     ふいに、皇子アヴェル・ヴァールは鋭い目に変わり、従者を見た。

    「されど、思い上がってはならぬぞ、ルジェよ。素質があるにしてもお前はいまだ原石にすぎぬ。わずか一滴の皇宮のかけらを飲み下しただけで三日三晩を困憊の内に過ごさなければならなかったお前には、まだ、危機の全てを明らかにすることはかなわぬのだ」

    「御意……」

     ルジェは、背筋に、ぞっとしたものを感じた。皇子の眼光の鋭さを恐れたのではない。その貴腐葡萄酒色の眼の底にある、白色矮星の放つ放射線にも似た憂愁の色に、帝国の直面しつつある危機の一端をうかがい知って(恐れたのである?)

    (欠落)
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    ~ Comment ~

    Re: ぴゆうさん

    生きて這い回る刺青は、ブラッドベリ「刺青の男」からのいただきです。竜が動いたらかっこいいだろうな、と思って書いてみました。でもこれも、どこかで読んだような。ディレイニーかな?

    うっひぉーー
    またまた、効くぅーー
    動き這いまわる刺青・・・
    スゴイ、スゴイ
    ぜひともアニメで見たい。
    実写版だと誰かなぁ〜
    やっぱ無理だわ、こんな凄みがある人なんて居るわけがない。
    ファンタジーの楽しさが詰まっているノォ
    楽しみ。
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