幻想帝国の崩壊(遠未来長編SF・完結)
断片104「酒を飲んでの夢は」
酒を飲んでの夢は、甘美というには程遠いものだった。どんな夢を見たのかすら忘れてしまった。
しかし、悪酔いしたことは事実だった。続由美子はその結果である、二日酔いのせいでずきずきする頭を抱えたまま「中落ちラボ」の自分のパソコンの前に座っていた。
確認した、あの謎の日本語の文章は七個。機械的に番号を振っていく。うち最後の二つは文章の距離も近いし、意味的にも同一のものと見て間違いないだろうから、それぞれに6a、6bと番号をつけた。
後は、やることといったら、パソコンを流れる意味のない文字列から、さっきのような日本語のアウトプットを探すだけだった。退屈にもほどがある。
「収穫はどうだね」
中島准教授がパソコンを覗いてきた。
「さっぱりですね。まったく、あのいたずら文章を入れたのは誰なのかしら」
「そのことなんだが」
「いったい、なんですか?」
「ぼくはあの文章を、頭からとっくりと読んでみた。そして考えてみたんだ」
「なにをです?」
「この文が真実を語っていたとしたらどうだろう」
「え?」
何か、わけのわからないものを突きつけられていたかのような感覚を覚えた続由美子は、オウム返しに答えることしかできなかった。
「真実。この、君がまとめてくれた断片は、真実を語っている。そして君は重要人物のひとりだ。その仮定で考えてみてくれ。どれだけ荒唐無稽でいいかげんな結論でも、単なる問題提起でもかまわない」
「でも、なんであたしに……」
「きみは人文学者としての訓練、訓練じゃおかしいか、教育を受けている。専門的なね。その発想力がほしい。それと、なんにせよ、この文章を読む限り、書いた人間はきみのそばにいるに違いない」
「はあ」
「しばらく、きみを専従にする。いいかい、どんなことでもいいからね」
「はあ」
考える気もしなかった。
しかし、悪酔いしたことは事実だった。続由美子はその結果である、二日酔いのせいでずきずきする頭を抱えたまま「中落ちラボ」の自分のパソコンの前に座っていた。
確認した、あの謎の日本語の文章は七個。機械的に番号を振っていく。うち最後の二つは文章の距離も近いし、意味的にも同一のものと見て間違いないだろうから、それぞれに6a、6bと番号をつけた。
後は、やることといったら、パソコンを流れる意味のない文字列から、さっきのような日本語のアウトプットを探すだけだった。退屈にもほどがある。
「収穫はどうだね」
中島准教授がパソコンを覗いてきた。
「さっぱりですね。まったく、あのいたずら文章を入れたのは誰なのかしら」
「そのことなんだが」
「いったい、なんですか?」
「ぼくはあの文章を、頭からとっくりと読んでみた。そして考えてみたんだ」
「なにをです?」
「この文が真実を語っていたとしたらどうだろう」
「え?」
何か、わけのわからないものを突きつけられていたかのような感覚を覚えた続由美子は、オウム返しに答えることしかできなかった。
「真実。この、君がまとめてくれた断片は、真実を語っている。そして君は重要人物のひとりだ。その仮定で考えてみてくれ。どれだけ荒唐無稽でいいかげんな結論でも、単なる問題提起でもかまわない」
「でも、なんであたしに……」
「きみは人文学者としての訓練、訓練じゃおかしいか、教育を受けている。専門的なね。その発想力がほしい。それと、なんにせよ、この文章を読む限り、書いた人間はきみのそばにいるに違いない」
「はあ」
「しばらく、きみを専従にする。いいかい、どんなことでもいいからね」
「はあ」
考える気もしなかった。
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~ Comment ~
「専従」って、言葉だけでもラクなイメージだなあ。
それだけやってればいいなんて、まるで夢のよう。
イヤな仕事だったら地獄ということもありえますがね。
アレもオレ、コレもオレ、ソレがやっとひと段落ついてホッとしてたらアレがほったらかしだったりして、いろんな部署からアレはどうなったコレはどうなったと常にギャースカ言われ日常的に追い詰められてるのがデフォみたいになってて、さらにイレギュラーな余計な仕事が常態化しているようなストレスに比べれば・・・・・・いかん、また愚痴が。
それだけやってればいいなんて、まるで夢のよう。
イヤな仕事だったら地獄ということもありえますがね。
アレもオレ、コレもオレ、ソレがやっとひと段落ついてホッとしてたらアレがほったらかしだったりして、いろんな部署からアレはどうなったコレはどうなったと常にギャースカ言われ日常的に追い詰められてるのがデフォみたいになってて、さらにイレギュラーな余計な仕事が常態化しているようなストレスに比べれば・・・・・・いかん、また愚痴が。
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Re: 矢端想さん