幻想帝国の崩壊(遠未来長編SF・完結)

    断片008「ルジェは身を横たえた」

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    (欠落)

     (長椅子に?)ルジェは身を横たえた。

    「これでよいですか、殿下」

    「印も組んだようだな。これからしばし、その印がお前の存在基盤となろう。指の神経に走る刺激と、甲に浮かぶ汗の一滴が、お前をこちらにつなぎ止める唯一のよすがになる」

     皇子アヴェル・ヴァールは隣の寝椅子で上を向くと、ひとこと命じた。

    「情報媒体注入」

     ルジェは身がすくむ思いだった。

     結晶楼閣、それが、まさか、論理空間内に構築、いや、論理空間そのものの構造を組み変え、「命題」……それは幻想帝国に生きるものの情報処理能力をしても追いきれないものだそうだが……が、論理記号により無限次元的なひとつ、いや、数としてのそれを超絶した「ひとつ」性そのものの、論理的な「なにか」を形作っていたのだとは。

     説明を受けてもよくわからない。皇子アヴェル・ヴァールは、「見ろ、しかし見てはいけない。感じろ、しかし感じてはいけない。眼を開いて心を閉じろ。散漫になって集中しろ。お前ならできる」というのみだった。

     身体は粘液状の情報媒体に浸されつつあった。触れた細胞のひとつひとつ、毛穴から、耳から、身体中のありとあらゆる穴から侵入してくる情報媒体は生ける皇宮スヴェル・ヴェルームのそれともまた違う圧倒的な情報をもたらしてくる。

     ルジェは印になりきろうとした。たしかに、これは、気をほんのわずかでもゆるめれば、精神の構造ごと粉砕されて飲み込まれかねない。

     自分に、結晶楼閣を認識することができるのか。

     ルジェは、情報媒体の中に目が没した瞬間、そんなことを考えた。

     そして。

     ルジェは、情報の大海の中に浮かんでいる自分に気がついた。

    「あ……あ……ああ!」

     ルジェは、ただ呆然とするだけだった。

    『印……印………印…………』

     ルジェが自身の無意識下に刻み込んだ自己命令が、ルジェの叫びに合わせてこだまのように応えを返した。

    『印……………印………………印…………………』

    (欠落)
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    ~ Comment ~

    Re: ぴゆうさん

    この皇子さまという人は逆説が大好きなのです。

    とはいえ、一種の異常な心理体験の場で「自然体でいろ」といっても飲み込まれるだけですので、ある意味実践に即したアドバイスかもしれません。

    皇子さまたちがなにを身につけているかですが、真のおしゃれの達人はそれほど身を飾らないとか。野の花はそれだけでソロモンの栄華よりなおも美しいのであります。

    前頁で解説を読んで、フムフムと頷いたけど
    この物語は読者にも挑戦だなぁ〜

    皇子アヴェル・ヴァールの容姿を想像すると楽しい。
    着物はどんなだろう。
    指にはどんな宝石を嵌めているのだろう。
    でも彼は脇役のよう。
    元刺青師のルジェが変わっていくのも楽しみになる。

    見ろ、しかし見てはいけない。感じろ、しかし感じてはいけない。
    眼を開いて心を閉じろ。散漫になって集中しろ。

    なんだすとぉ?
    [黒い白馬にまたがって前々とバックする]を思い出したぞ!
    ぷぷ

    Re: limeさん

    勿体をつけていますが、実はスヴェル・ヴェルーム自体はフタを開けてみれば「なあんだ」的シロモノだったりします。羊頭狗肉です(^^;) 石ぶつけられないかなわたし(^^;)

    スヴェル・ヴェルームってものが、まだよく理解できていません。
    これが分かれば、なんかもっと、わかるんですよね、きっと。

    初めて甲殻機動隊を見たときのような、感覚だあ・・・。
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