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    幻想帝国の崩壊(遠未来長編SF・完結)

    断片010「ルジェの目には黄金でできた紗に見えた」

     ←断片009「それは光のかたまりだった」 →断片011「概念チェスは」
    (欠落)

    (楼閣の門は?)ルジェの目には黄金でできた紗に見えた。

    「来るのだ、ルジェ。何も恐れることはない。印さえお前の心にしっかりとあれば、ここは知識に満ち満ちた図書館であり、愉しき会話の場だ」

    「はい、殿下」

     意識体となったルジェは、礼法に従い、情報により編まれた紗に意識の手を伸ばし、触れ、めくった。

     光が奔流となって流れ出してきた。光はルジェをとげとげしい刺激で包み、ひとつの問いとなった。

    「問う。汝は何者ぞ」

    「億兆の口を持ち、無限の知識を生み出す生ける皇宮スヴェル・ヴェルームに仕える百万の皇子のうちでもっとも気高きもの、皇子アヴェル・ヴァールが従者、刺青師のルジェ。光の城なる結晶楼閣に住まえる錬金術師組合の賢者たちよ、我に組合に対しての異心ありと思わば、その光の杖もてわれとわが意識を焼き尽くすがよい」

     ルジェは、懸命になってそう答えた。

     ひかりの刺激がいくらか弱くなった。

    「ならば問う。知識とはなんぞ?」

    「われらの知らぬ命題へ、光の道をかけることなり」

    「光の道とはなんぞ?」

    「論理印象なり」

    「論理印象とはなんぞ?」

    「かつて物理帝国の旧人たちは、記号をもって論理を究極的な原子一粒一粒に変えられると信じた。われら幻想帝国に住まうものは、そうした論理原子を信じぬ。われらは原子を印象でとらえる。それは光子が粒子でありながら波動であるのと同様、論理原子も粒子でありながら波動であるがゆえに」

    「汝はこれなる光をいかに見るか?」

    「光ならぬ光、霊ならぬ霊、情報ならぬ情報、論理ならぬ論理、不確定の確定、止揚されるべきにあらざるものの止揚そのもの、賢者の結晶を通して見られた光」

    「賢者の結晶とはなんぞ?」

    「憶測に毒されぬ視点そのもの」

     今や光は、柔らかく暖かく、抱擁するかのように変わっていた。

    「卑しき刺青師よ、われら錬金術師組合は汝を気高き皇子の従者と認める。来るがよい、知恵ある者にはここ以上の有意義な知の宝庫はない」

     ルジェは目の前の光の奥に、壮大な伽藍があるのを知った。

    「よくやった、ルジェ。お前は知恵ある者と認められた。錬金術師組合しか信じておらぬ知恵であるが、知恵には間違いあるまい」

     ルジェは、主の手に支えられ、うながされるままに伽藍へと進んだ。

    「なに、いつもの形式通りの問答だ、皇子アヴェル・ヴァール。おぬしの従者を疑っていたわけではない。ただし、妙な答えを返したら、その場で精神を焼き切ってしまおうと思っておったがな」

     その声とともに、光で編まれた、老人の姿が現れた。

    「賢者どの、あなたは……」

    「ここでは身分の上下はなしだ。知に仕える者どうし、胸襟を開こうではないか」

     老人はそういうと、光輝く襟元をなでた。

    「わしはトリスメギストス。この皇子とはゲームを楽しむ仲だ。ルジェとかいったな。おぬしも達人同士の知恵の戦いを眺めるがよい。そのつもりでここへ連れてきたのであろう、皇子アヴェル・ヴァール?」

     皇子(欠落)
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    ~ Comment ~

    Re: ぴゆうさん

    トリスメギストス師は書いていていちばん安心できた登場人物です。その割に影が薄いですが。(^_^;)

    この「結晶楼閣」についてはツッコミ出すときりがないので黙っておきます。これもひとつの戦術なのです(←ただの卑怯者(笑))

    うっほほ
    二重スリット実験を思い出しましたよ。
    全く不思議な世界ですよね。
    不思議だし、ありえないけど存在をしている。
    目に見えている。

    トリスメギストス、この賢者の登場で益々ややこしくなりそうな・・
    私の頭でついていけるか・・心配じゃ。
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