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    幻想帝国の崩壊(遠未来長編SF・完結)

    断片113「続由美子は呆然としていた」

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     続由美子は呆然としていた。自分の今後について、ここまであからさまに書かれていると、それ以外の反応ができるわけがない。

    「なにが……」

     続由美子はモニターに正拳突きを見舞いたいのをこらえた。

    「なにが癌細胞よ! なにが工業製品よ! ふざけるんじゃないわよ!」

     どこのハッカーだかクラッカーだかがやったことかは知らないが、そいつを見つけたら損害賠償を請求しよう、そう決意して席を立った。とりあえずコーヒーだ。なにか入れないと正気でいられそうにない。

    「どこへ行くのかね」

     中島准教授の声がした。

    「コーヒーを飲むんです!」

     続由美子は、夢想家の准教授に言葉を浴びせようとして……ふと、動きをこわばらせた。

     中島准教授の表情は、いつものそれとはまったくといっていいほど違っていた。

     官僚のそれだったのだ。

     中島准教授は静かにいった。

    「癌細胞の未来に失望でもしたのかと思ったよ」

    「なんで……先生も、あのやくたいのない文章を読んでいたんですか!」

    「正確には、違う」

    「正確には?」

     続由美子はくらくらときていた。

    「正確には、きみより前にあの出力を読んでいるのだ。ここのものは皆ね」

     続由美子は『中落ちラボ』の研究室全体を見渡した。昨日と違っているわけがない研究室。しかし、今の空気は完全に一変していた。

    「どういう……ことですか?」

    「それを説明するのは、簡単であり、骨でもある。どうだろう、ここはわたしに、説明をする機会を与えてはもらえないだろうか? ちょっと遠出をしてもらうことになるが」

    「遠出って……どこまでです?」

     中島准教授は、にこりともしないで告げた。

    「防衛省のほうへ」

     ぼうえい……。

     高梨しずかの声が頭に甦る。

    『あの准教授、防衛省とつながっているそうよ』

     あれはジョークでもなんでもなかったのだ。真実のことだったのだ。

    「きみたち。続研究員は疲れているようだ。ちょっと支えてやってはくれないか」

     いらないです、そう続由美子は答えようとした。

     だが、複数の腕が、続由美子の肩にかかるほうが早かった。

     男たちは、力を失った続由美子の身体を引きずるようにして、遍教大学中島研究室を出て行った。

     後にはデータを完全に消去されたパソコンの群れだけが残った。
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    Re: レルバルさん

    やはり去年の更新から二週間の間を空けたのは失敗だったか。

    「癌細胞」は比喩的な意味ではないのであります(^_^;)

    あけましておめでとうございます!
    今年もどうかよろしくおねがいします。

    癌細胞という名前にポールさんのセンスを感じました。
    いいですね、それ。
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