幻想帝国の崩壊(遠未来長編SF・完結)

    断片116「食事は意外とまともだった」

     ←断片115「車は別な高速に乗ったようだった」 →断片117「スパゲティが敵に見えた」
     食事は意外とまともだった。しかし、続由美子に味などわからなかった。

    「残念だが、これがわれわれのきみに出すことのできる最上等の食事なんだ。軽食ですまない」

    「じゅうぶんです」

     続由美子は、野菜入りスパゲティのフォークを置いた。

    「道は長い」

    「だったら鎮静剤でもなんでも投与すればいいじゃありませんか。それとも、発癌性物質がいいですか」

    「すぐに納得してもらえるとは考えてはいないが、われわれは、きみの身体に危害を加えようとしているわけではない」

    「貴重な戦略物資ですからね」

    「なんと思ってくれてもいいが、食事はしっかり摂ったほうがいいな」

     そこは地下に作られた施設だった。窓ひとつない施設。

    「こんなところで食事なんて……中国の工作員でも襲ってくるんですか」

    「こないことを祈るね」

     中島准教授はにこりともせずに答えた。

    「きみに関わることは、重大な機密事項ということになっているからな」

    「あたしを守るためですか?」

    「ひらたくいえばそうだ」

     続由美子はスパゲティをにらんだ。食欲の出る話ではなかった。

    「あたしが重大な機密事項だとなると、かえって諸外国からの攻撃が活発になるんじゃないですか?」

     中島准教授は首を横に振った。

    「それは物事の一面的な見方だ。物事はもっと流動的だ。重大な機密事項を前にすると、人間はどう出るかな」

    「だから、襲って……」

    「いや。人間はその前に、立ち止まって『これは罠ではないか』と考える。ラングレーのやり方を知っているか?」

    「ラングレーってなんです」

    「すまん。CIAのことだ」

    「知るわけがないでしょう!」

     続由美子はいらだってきた。中島准教授はそれに気づかないように続ける。

    「彼らは、なにひとつまともに表現しようとはしない。もし、彼らの名簿に、『これこれこのものはいてもいなくてもいいような、重要度Dの人物です』と書かれていたら、それは、ずば抜けた才能を持つ超重要な人物を意味する」

    「そういうものなんですか」

     どんどんスパゲティがまずくなってくるように思えた。

    「無論、その他諸国も、そんなことは重々承知だ。そこに駆け引きが出てくるわけだ」

    「どんな」

    「つまり、『重要機密』という言葉の価値がどんどん変動していくようなルールのもとでカードゲームが行われていると思ってくれ。今のルールでは、『重要機密』といったら、それはそのまま『重要機密』を指していることになっている。そんな中、われわれが『重要機密』というカード、つまりきみのことだが、そのカードを切って勝負に出たとする。そうすると、相手側は、これは『重要機密』にみせかけたくずカードを切って攻撃を誘い、それに対しカウンターパンチを食らわせる企みだ、と思うことだろう。そこにわずかな隙が出てくる。われわれはその隙、タイムラグを利用して、きみを安全なところへ輸送するというわけだ」
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    ~ Comment ~

    Re: living stereoさん

    あけましておめでとうございます。

    月日の経つのは早いものでもう11日。これからもよろしくお願いいたします。

    わたしもがんばってブログを更新いたします!

    遅れてすみませんが
    あけましておめでとうございます!
    今年もよろしくお願いします。
    最近あまり、更新していませんが
    ブログは続けて行きたいと思いますのでお願いします。
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