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    幻想帝国の崩壊(遠未来長編SF・完結)

    断片117「スパゲティが敵に見えた」

     ←断片116「食事は意外とまともだった」 →断片118「准教授がなにをいっているのか」
     スパゲティが敵に見えた。今の中島准教授の言葉を借りれば、敵に見えたということは、食らうべき存在だということなのだろう。続由美子はげんなりした思いでスパゲティを口に運んだ。

    「ばかばかしい。それじゃ、結局、あたしが襲われるか襲われないかは、コインを投げて裏が出るか表が出るかとまったく違わないじゃないですか」

    「きみは、じゃんけんをしたことがあるかね?」

    「ありますよ」

     中島准教授は、やれやれといった表情になった。

    「ならばわかるだろう。基本的に単純な物事ほど、心理戦としての奥は深い。とにかく、きみにはスパゲティを食べてもらわなければならないんだ。急いで」

    「ピザにしておけばよかった」

     それでも、続由美子はスパゲティを口に運び、咀嚼し、飲み込んだ。味なんてわかりはしない。

     食べ終えて水に口をつけ、中島准教授をにらみつけた。

    「食べ終えました。死刑執行はまだですか?」

    「われわれとしては、きみを保護するのが最大の目的で、殺すことは考えていないと、何度いったらわかるんだ」

    「似たようなものです」

     中島准教授は立ち上がった。

    「さて、行こうか」

    「また車ですか」

     続由美子はげんなりした。

    「ここからはエレベーターだ」

    「エレベーター?」

     続由美子は一瞬ぼんやりとしたが、すぐに中島准教授にかみついた。

    「それじゃあたしたちは、すでに目的地についたんじゃありませんか!」

    「なんとでもいってくれ。だが、ここから先のエレベーターは、きみが考えるより長いぞ」

    「そんなことはどうでもいいです」

     続由美子は腹の底から怒りを感じていた。

    「ここはどこなんですか!」

    「防衛省の研究施設だ。われわれが向かう先は、核攻撃にも耐えられるシェルターになっている」

     もはやなにをいう気にもなれない。中島准教授に案内されるままに、続由美子は迷路のような通路を歩き、ひとつのエレベーターの前にたどりついた。

    「これですか」

    「これだ」

     それはごく普通のエレベーターに見えた。扉が開き、二人は乗り込んだ。

    「シェルターということは、あたしはもう、ここから一歩も外へは出られないんですか」

    「保護のためだ。われわれのブラフに気づいた諸外国は、今頃切歯扼腕していることだろう」

     切歯扼腕しようがしまいが関係はなかった。なにしろ、無期禁固刑ないしは終身刑を宣告されてしまったのだから。

     それにしても長い降下だ。

    「きみは、あのSELについてどう考えていた」

    「どうもこうも……」

    「あのスパコンでも走らせられないほど高度な言語だと考えたことはなかったか」
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    ~ Comment ~

    Re: ぴゆうさん

    いちおう、ラストシーンでは落ち着くところに落ち着かせたつもりではいますが、そこまでたどり着く前に、続由美子はとんでもない目にあうことになります。

    なんかこうもうすみません(汗)

    なんとも気持ちの悪い方向に進んでいる。
    由美子自身は自分の存在価値さえあやふやな、自信の欠片もないような何が目的で生きているのかもわからない。
    恋も無残に敗れ、抜け殻のような生活。
    何かを見出そうと頑張っていたのに
    こんな形の自分の存在って何でしょう。
    あまりに可哀想だわ。
    これからどうなるのだろう。
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