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    幻想帝国の崩壊(遠未来長編SF・完結)

    断片215「少年は書物を読んだ」

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     少年は書物を読んだ。『本読み』として、それはひとつの崇高な仕事であった。

     統制文字で記された膨大な数の文書。いつの間にか、少年は「統制文字」と、文書を残した時代の人間のことばで考えることに慣れていった。

     そこに語られていたのは、少年の想像も及ばぬような広大な版図を支配していた、ふたつの国の話だった。

     ひとつは、『物理帝国』。そしてもうひとつは、『幻想帝国』。同じく帝国とは名乗っているものの、そのふたつはいかにかけ離れていたことか!

     物理帝国の創始者たちは、人間から財産から、すべてを合理的に配置して能率的に動かせばそこに平和と安定が来ると考えていたらしかった。そしてそれは正しかった。

     だが、合理的な配置と能率的な運用は、人間が考えるには複雑に過ぎた。

     よって、人間は『神』を求めた。

     人間が自らの手で神を作るという試みが始められたのも当然だった。

     国母、『続由美子』の犠牲により、人間以上の思考をする『若き神』が生まれた。それがいかなる犠牲だったのかは、文書が欠落していて少年にはわからなかった。

     だが、『若き神』は、いつしか人間によるいましめを振りほどくまでの力を身に着けるようになっていった。

     『若き神』による冷酷なまでの策謀により、人間はいつしか自分から堕落の道を歩むように仕向けられていった。

     そして、人間は自らの座を新しい人類にゆずらなければならなくなった。

     新しい人類も、『若き神』に仕えた。

     だが、仕えるにあたり、新しい人類は、狡知をもって、『若き神』を縛り付けた。そのいましめは、いましめられているものにとりいましめられていると思えないものだったので、『若き神』は水が自由を得たまま器に収まるように、新しい人類を導く良き神となった。

     新しい人類たちは、良き神を神と呼ばず、皇帝とも呼ばず、ただ『生ける皇宮スヴェル・ヴェルーム』と呼び、敬意をもって仕えたのである。

     物理帝国の失敗を知っていた新しい人類は、その政略の方針を放恣と怠惰におき、その量の操作に求めた。

     それは、徹底的な『仁政』を行うことと同じであった。
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    ~ Comment ~

    Re: ぴゆうさん

    人類の文明を語るうえで「理由」や「意味」はどこまで有効な尺度だろうか、という思いがわたしにはあります。例えば、イエスや釈尊は、なにか彼でなくてはならない理由があったのか、と考えてしまうのです。

    もし意味や理由がなくとも、いやないからこそ、宇宙の帳尻は結局合ってしまうのでは、そんなことも考えました。

    同意していただけるかどうかはわかりませんが……。

    続由美子は犠牲になるのか・・・
    彼女が生きて生活をしている姿を知るだけにその結末には悲しくなるなぁ〜
    これは贄なのだろうか?
    器として選ばれるのにはそれなりの理由があるのだろうから、その理由が知りたい。
    知ったとしても納得はできないけど、知りたくなる。

    人を犠牲にする文明って意味があるのか?

    Re: レルバルさん

    ローマ帝国と中華帝国と大英帝国がでかすぎたので、その影響があるのではないでしょうか。まあ、中にはコンプレックス丸出しのなんとか帝国とかもありますが。ヴォルテール評するところの、『神聖でもローマでもなければ、いわんや帝国でもない』神聖ローマ帝国とかね。

    なぜかわかりませんが帝国と書いてあるだけで
    でっかい国って感じがしてしまいます。
    なぜでしょうか。
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