幻想帝国の崩壊(遠未来長編SF・完結)

    断片021「たしか天才的な学者が」

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    (欠落)



     たしか天才的な学者がわれわれの誕生に関わった、といっていたな。ルジェはトリスメギストス師の言葉を思い出していた。生化学者というのがなんだかはよくわからないが、トリスメギストス師の言葉についていた印象からすれば、医者とそうたいした違いはないと見てよさそうだ。

     それにしてもあっちにもこっちにも、無心に自分の身体を食べ続ける旧人ばかりだ。そういうやつしかいないのか、この物理帝国には。

     あそこで人々が群がっているのはなんだろう? 金属でできたなにかの……機械? のようだが。

     ルジェは立ち止まりかけたが、すぐに思い直し、足を病院へと向けた。

    『賢明な判断じゃ』

     トリスメギストス師の声がした。

    「論理印象カクテルか、それに類したものを配るためのものですね」

     ルジェは答えた。

    『そのとおり。この世界は過去に起こった現実を細部にいたって再現したものだから、あれを使うだけできつい論理印象カクテルが楽しめる……いや、きみには端子がないから無理だな』

    「端子とは?」

    『お前さんが知ってもしかたのないことじゃよ。情報媒体を知っているお前さんが知ったところで、嫌悪感しか抱かないじゃろう。もっとも、この物理帝国末期の住人も、情報媒体やあの皇子たちがやっていることを知ったら、同様のことを考えるだろうがな』

     ルジェにはよくわからなかった。

    「どちらにしろ、わたくしは脳を焼かれたくありません」

    『やはりお前さんは賢いよ』

     そういったにもかかわらず、トリスメギストス師は『端子』について語り始めた。

    『物理帝国の旧人たちは、情報媒体を咀嚼し、その情報を自分の中に取り込むことができなかった。その代わりとして、頭や身体に穴を開けて金属を通して脳細胞やその他主要な神経細胞のひとつひとつと結び、電気的刺激によって情報を取り込んでいたのだ』

    「そんな帝国の果ての蛮族でもしないようなやりかたでですか!」

    『きみは、この物理帝国というものが存在したのは、今から十万年も前のことだということを忘れているぞ。そんな中に、よくぞこれまでの文明を築き上げ、文化を花開かせたものじゃよ』

     ルジェは嫌悪感をあらわにして吐き捨てた。

    「文明と文化の成れの果てがあれですか! ……失礼しました、師よ。皇子たちや錬金術師組合のかたがたがやろうとしておられることを鑑みることを忘れておりました」

    『そうだ。われわれは、こうした『知的野蛮』に陥らないために、日がな一日埒も明かんことに時間を空費して議論しているわけだよ』

     トリスメギストス師は嘆息したようだった。

    『もっとも、最近の若い連中を見ていると……おっと。わしのほうが、『知的野蛮』に陥ってしまうところだったわい』

     ルジェは足を速めた。

     病院らしき建物までは(もう少しだ?)



    (欠落)
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    ~ Comment ~

    Re: ぴゆうさん

    「流されていく」というのはこの小説のメインテーマと大きく関連があります。

    まだ語るわけにはいきませんが……。

    わたし自身がこの小説を書くことにより、背負ったものにけりをつけたかったのかもしれません。それは「知ることの喜び」よりは、「『考える』という病気」と呼んだほうが近いような気がします。

    読んでいて思うのだけど
    この物語の主人公たちには知る喜びみたいなものが感じられないんだよね。
    只、流されているような感じ。
    由美子がどんな風に終焉を迎えたかはまだ謎だけど、
    由美子だけに生きているもがきみたいな生を感じられる。
    どうかね。
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