FC2ブログ

    ささげもの

    ぴゆうさんブログ再開記念落語!

     ←断片021「たしか天才的な学者が」 →断片022a「ルジェは扉を開いた」
     相互リンクをしていただいている「五黄猫国往来記」のぴゆうさんがブログに復帰なされたことを記念して恒例の落語を一席。

     以下どーん。



    ※ ※ ※ ※ ※




    落語「大盤」  作・泡柳亭武律

     ええ、落語家の仕事というのは、こうやって皆様にバカバカしいお笑いをご提供させていただくことでございますが、ただ座っていりゃあバカバカしい話が出てくるわけもございません。座付き作者というものがございまして、そいつが書いた原稿に手を加えてこうおしゃべりするわけでございます。

     この座付き作者、優秀なのに当たれば半分は勝ったようなものでございますが、中にはとんでもないスカをつかまされることもある。例えば、いちばん上の文字が「泡」、次の文字が「柳」、真ん中に「亭」が来て、四番目が「武」、どん尻が「律」という作者が来たら、もうあきらめるしかないというわけでありまして。

     で、この落語は誰が書いたかですが、そんなこたァどうでもいいことでございますよね、ええ……。

     さて、一年中いつだって春と秋がいっしょくたになっているようなこの猫国。今日ものんきに朝ごはんをいただこうと、住猫たちがそれぞれの家に植わっている大事な三本の木、すなわちミルクの木、バターの木、パンの木から恵みをいただこうとした。

    「あれっ?」

    「あらっ?」

    「ニャんだっ?」

     ミルクの木も、バターの木も、パンの木も、ひとつも実がなっておりません。実がなっておらぬということは、収穫ができぬということでございまして、収穫ができなかったら食べるものがございません。

     いや、よく考えれば、肥沃な猫国の大地、そう食べるものにはこまらないはずでございますが、

    「(トントントン! トントントン!)すみやせーん! パンとバターとミルク、わけてほしいんですが!」

    「あらお隣さん、うちもそちらに借りに行こうと思っていたんですよ! うちのが、きょうは猫らしくバターミルクのパン粥を食べたいなんていっていたので」

    「えー! ニャんてこった。この村のパンとミルクとバターの木は、これで全滅ってえことですぜ」

    「うちのは、いくらほめてもほめてもほめちぎっても無駄でしたけど、お隣さんのは?」

    「うちでは嬶が最前からやってるんですが、なんにもなっちゃいません」

     いざ食べたいものがなくなると、無性に食べたくなるのがニャン間の性(さが)でございます。

     村から村へと伝令が飛び、これが自分たちの村だけではなくて全猫国規模にまで広がっていることがだんだんとわかってくる。

     猫国の者はもう顔色が真っ青でございます。

     ほめたってなだめたって、親木にいいつけるぞと脅したって、木は黙ったまんまです。まあそりゃあ木なんだからしかたがありませんが。

    「五黄さまには相談したのか?」

    「それがだめみたいニャんだ。お屋敷の門は閉じていて、中でなにをしているのかは、さっぱりわからニャい」

    「ニャにか、おれたち悪いことでもしたのかニャあ。団栗銭で花札やって酒を飲んだのが悪かったのかニャあ」

    「毎日のことじゃニャいか!」

     これではご飯を食べるどころではございません。猫国のものが全員、しょんぼりした顔つきで、自分の悪いところの反省を始めた。

     そのうちに、

    「そうだ……五黄さまや天狗さまや神様に謝りに行こう。いま謝れば、許してくれるかもしれニャい」

     だんだんとこういうことを言いだす連中が現れまして、まあぞろぞろと、四方八方から菰傘村の五黄屋敷へとやってくる。

     迷える猫たちがはっと見ると、お屋敷からは妖しげな煙がもうもうとたちのぼっているではございませんか。猫たちは地面に膝をこうつきまして、

    「うえーん、うえーん……」

    「おいらたちが悪かったです……」

    「許してくださあい……」

    「フニャああッ、フニャああ」

     老若男女身分の違いを問わず、ひとかたまりのでっかい団子みたいになって泣いている。

    「フニャああああッ、フニャああああ」

     そのとき、五黄屋敷の扉がぎいいいっと開いた。

    「ニャんだ、ニャんだ、騒々しい」

     現れた猫影を見て、そこにいた全員の顔が、ほっとしてフニャっとなった。

    「五黄さま!」

    「おーてん様もっ!」

     と同時に、なんとも甘いいい香りの風が、家の中からどおっ、と……。

    「五黄さま、ニャんですかこれは?」

    「ニャにを作ってらっしゃるんですか?」

    「それはそうと、うちのミルクの木とパンの木とバターの木が……」

    「どうしたらいいんでしょう?」

     みんなの訴えを、困った様子で聞いていた五黄さまでありましたが、

    「皆の衆、入りなさい。手伝ってもらわなければならニャいことがある。それにしても、桃吉とうーてんのやつときたら……。桃吉ッ! うーてんッ!」

     急に馬鹿でかい声で怒鳴りました。

    「うーん……」

     屋敷の隅では、桃吉とうーてんが酒樽を抱っこして寝ておりました。

    「うーん、五黄さま、なんでしょ……」

    「おーてん様、うーてん、もう飲めないよ……」

    「ああッ! とっておきの銘酒、『天狗ころし』を全部! こんな強い酒、ふたりで飲んだのか?」

    「烏天狗たちもいっしょに……こんなめでたい日でありますので、前祝の一杯が二杯、二杯が三杯に……」

    「バカっ! バカバカっ! 頼んでおいた仕事はどうしたんニャっ!」

    「仕事……」

     そのとたん、ふたりと烏天狗たちの目がぱっちりと開いた。

    「いま何時ですか?」

    「もうとっくに昼を回っているっ! お前たち全員、蔵の後ろで謹慎っ!」

     怒りに顔を真っ赤にしたおーてんに命じられ、酔いもすっかりさめた桃吉にうーてんに烏天狗たちは、しおしおと、日のささない蔵の裏へと歩いて行きました。

     わからないのは猫国の住猫たちです。

    「なにがあったんで?」

    「うむ。それなのじゃが、あれを見たまえ」

     案内されるままにぞろぞろと来た一同は、中庭の甘い香りのただ中にあるものを見て、うわっ、と、腰を抜かした。

    「な、な、なんですかい、あのばかでかいウェディング・ケーキのお化けみたいなものは!」

    「だからもなにも、ケーキだよ。人間界で、われわれの物語を書いてくださっている、のくにぴゆうさんが、病から癒えてブログを再開なさったので、そのお祝いに、超巨大なケーキを焼いて、お贈りしようと思ってな」

    「それと、猫国中の三本の木がなにも出さなくなってしまったのとは……」

    「ケーキの土台のスポンジを作るために猫国中のパンの木にお願いし、甘いクリームを作るために猫国じゅうのミルクの木にお願いし、飾りのお菓子を焼くために猫国中のバターの木にお願いして、それぞれ力を貸してもらったのだよ。急ぎなもので、木々にも皆にもたいへんな思いをさせてしまったようだが、間に合ってよかった」

    「み、水臭いですよ、五黄さまにおーてん様、ひとことおっしゃってくだされば、あっしらだってこんなに取り乱したりしなかったですよ。魚でも米でも野菜でもなんでも食べて待ちましたよ」

    「ひと晩のうちに猫国中にこのことを断り協力を求める触書を出すつもりだったのだが……それをやるはずの桃吉とうーてんと烏天狗たちが、まさか神酒を飲んで酒盛りをし、昼まで眠るとは思ってもおらんかったわい。これはわしと五黄の共同責任というところじゃ。すまん。詫びといってはなんだが、そこに、猫国じゅうに配るはずだったケーキに宴会のごちそうも作ってあるので、どうか皆、おなかも減ったろうから、食べて行ってはくれんかな。給仕だが……桃吉ッ! うーてんッ!」

    「は、はいッ!」

    「やりますッ! やらせていただきますッ!」

     そこで行われた、全猫国規模の宴会については、ことさら申すまでもございません。大盤ぶるまいという、たいへんにおめでたい噺でございました。
    関連記事
    スポンサーサイト






    もくじ  3kaku_s_L.png 風渡涼一退魔行
    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    もくじ  3kaku_s_L.png 焼肉屋ジョニィ
    もくじ  3kaku_s_L.png ご意見など
    もくじ  3kaku_s_L.png おすすめ小説
    もくじ  3kaku_s_L.png X氏の日常
    【断片021「たしか天才的な学者が」】へ  【断片022a「ルジェは扉を開いた」】へ

    ~ Comment ~

    Re: ぴゆうさん

    喜んでもらえて嬉しいです。

    どうぞどうぞお持ちください!

    ちょっと自分の長編で煮詰まっていたので、気分の切り替えにもなりましたし、書いていてわたしも楽しかったです(^_^)

    頂きま〜す

    さっそく頂いて帰ります。
    明日辺りにアップさせて頂きやす。
    本当にいつもありがとう。
    v-406

    ありがとう〜〜

    なんて幸せなぴゆうざましょ。
    嬉しいノォ〜
    想像するだけで楽しくなっちゃうよ!
    これだけの作品を即興で書いちゃう。
    すごすぎですよ。
    もう猫国のことを噛み砕いて、
    すり潰して飲んじゃってますな!
    ありがたや~ありがたや。
    v-406
    お波たちの作品も出来ているのに挿絵が足らん。
    待たせてばかりでごめんちゃい。
    きっと幸せになるから安心してな。
    v-392

    Re: レオ・ライオネルさん

    あなたにはこのイチゴが乗っているところを特別に(^_^)

    Re: limeさん

    まったくです。しばらくは週一とか書かれていたので本調子ではないらしいですが、めでたいものはめでたいのであります。

    即興で書いたので詰めが甘いのはごめんなさいでありますが(汗)

    めでたい!めでたい!

    さぁ一緒にケーキを食べに行こうw
    • #9804 レオ・ライオネル 
    • URL 
    • 2013.01/24 00:43 
    •  ▲EntryTop 

    さっそく、お祝い小噺を作ってしまうとは。
    さすがポールさんです。
    ここでも猫国が、活気づいてきました。
    なんにしても、ぴゆうさんが戻ってきてくれて、うれしいですね^^
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【断片021「たしか天才的な学者が」】へ
    • 【断片022a「ルジェは扉を開いた」】へ