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    幻想帝国の崩壊(遠未来長編SF・完結)

    断片024a「それはひとつの肉塊だった」

     ←断片023「おれも物理帝国のこいつらも」 →断片024b「諦念の底に」
     それはひとつの肉塊だった。肉塊から、さまざまなものが「生えて」いた。ルジェは逃げ出しそうになるのをなんとかこらえていた。

     肉塊の前にいる、トリスメギストス師のいった「天才的な学者」だろう相手はやせこけた男だった。その男はルジェに背を向け、自分の身体から生えている肉片を食いちぎりながら、肉塊に突き刺されたなにかの装置のようなものをいじっていた。

    『よく見るんだ。よく見るんだ、ルジェ!』

     トリスメギストス師の思念を感じた。

     ルジェはその思いに従い、肉塊と男をよく見た……ルジェはただただ呆然としていた。

     肉塊と男はつながっていたのだ。

    『そうだ。この男は、自分の身体そのものを培養地として、より高度な食用肉の細胞を作り出す研究をしていたのだ。その結果が、これだ』

     肉塊にくっついていたなにかが苦しげに身をよじり、振り返った。

     ルジェは自分が悲鳴を上げていることに気づいた。

     その振り返ったものは、人間の、ルジェと同じ現生人類の頭だった。顔はまだ少年のそれだった……しかし、ルジェに悲鳴を上げさせたものは、少年のその容貌だった。

     少年のそれではあったが、ルジェの印象把握能力によれば、それは、あらゆる面で、トリスメギストス師の幼きころと推定されたからだった。

    「師よ……師は」

    『そうだ。それはわしだ。わしは、この狂える天才科学者の体細胞の一部から作られたのだよ。そして、後ろを見たまえ』

     ルジェは振り返った。

     そこにあったのは、無数の首や胴体、手足といったものだった。

    『わしら現生人類は、これらパーツを、この人間の食用細胞に使われている基幹細胞を接着剤代わりにして、そして誕生したのじゃ。第二世代が生まれるまで、わしらがどんなおぞましいことをしでかしたか、わかるか?』

     ルジェは嘔吐しようとして……なにかにひっかかった。

    「師よ、わしらが、とおっしゃいましたけれども」

    『文字通りの意味じゃ』

     肉塊の中から、いきなり二本の腕が持ち上がった。両の腕は、その「天才的な学者」の喉にからみつくと、締め上げ始めた。

     恐るべき闘争が開始されたのをルジェは見守っていた。これは現実なのだ。トリスメギストス師が、その両の目で見、両の腕と手で十万年前に行っていた現実なのだ!

     肉塊の一部が、人の顔のようになった。女だ。

     口がぽかりと開き、なにかを呟くように二、三度閉じたり開いたりしてから、また肉塊の中に飲み込まれる。

    「祝福されて生まれたわけではない……」

     ルジェは喉がからからに渇くのを覚えていた。



    (欠落)
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    ~ Comment ~

    Re: ぴゆうさん

    マジコメすると、「なぜ生きているのか」に対しては、「生きているから生きているのだ」としか答えようがない、というのがわたしの結論です。ミもフタもないトートロジーですが、誠実に回答しようとしたらそう答えるしかないのです。

    「なぜ生きているのかについてどう答えられたらいちばん納得して充実した人生が送れるか」、という設問ならまた回答も違ってくるでしょうが……。

    ターミーネーター2で
    殺し屋が溶鉱炉で断末魔を迎え、今まで真似してきた人が出たり消えたりするシーンを思い出した。

    気持ち悪いなぁ〜
    それだけ醜いと何故生きているのかと言う疑問にぶち当たりそう。

    Re: limeさん

    気持ちわかります。

    よほどでない限りホラー映画を三分と見ていられない男(^^;)

    グロいのは、脳内再生のほうが、美しいです^^;

    映像になって、曲まで付けられたらもう、・・・><

    Re: 矢端想さん

    えいがかされても ぐろいえいぞうがきらいなので わたしはみにいきません ぶりっつ(わら

    「映像化不可能」と言われた(?)この作品の映画化をぜひ!

    撮るのはクローネンバーグかデヴィッド・リンチか!?
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