「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
2 闇は千の目をもつ(完結)
闇は千の目をもつ 14-2
わたしは目をこらした。闇の中で判然とはしないが、なにかが……なにかがわたしを見ている。
「誰だ?」
わたしは叫んだ。
葉ずれがさやさやと答えた。
わたしは、再び怒鳴った。
「誰だ? ……どこにいる?」
「本……」
森の暗がりの奥から、なにかが答えた。
「本を……」
幻聴ではない。
わたしは声の聞こえてきたほうに大声で答えた。
「本をどうしろというんだ?」
「血……」
「血?」
わたしは面食らった。この謎の声が示している「本」とはあの「闇は千の目をもつ」だと考えてまず間違いないだろうが、血でもってあれをどうしろというのだろう。
まさか。
わたしは頭に思い浮かんだことを問い返してみた。
「あの本に……大量の血液を使うのか?」
答えはなかった。
「どうした! 返事をしてくれ!」
返事はしてくれたが、それはわたしの望むような形ではなかった。
原生林の影の中から、獣のようななにか黒いものが飛び出してきた。その黒い獣は、わたしの手に噛み付いたのである。
「…………!」
激痛が走った。
わたしは手にした山刀で、その黒い獣を斬ろうとした。
わたしの手に、山刀はなかった。どうやら先ほど精神集中が切れたときに、物象化の焦点を失って、もとの精神エネルギーと化して消え去ってしまったらしい。
わたしは歯噛みした。
謎のなにかと格闘が始まってしまった今となっては、これから精神集中で役立つ道具を作れるだけの余裕がない。
わたしはめちゃくちゃに、拳と蹴りを繰り出し続けた。格闘技なんて知らないので、技もなにもあったものではない。
相手の身体にわたしのパンチが何発か当たったような気もする。気がするだけだ。もちろん、相手に対して効くようなパンチではないだろうけれど。
それに対して、相手の攻撃は素早くて正確だった。わたしはいくつもの箇所を噛まれた。そのたびに激痛が走り、わたしは叫び声を上げた。
逃げるわけには行かなかった。もしもわたしがここで逃げたら、高宮秋子はどうなるのだ。
しかし、限界が来ていたのも事実だった。
わたしは気が遠くなり……。
「誰だ?」
わたしは叫んだ。
葉ずれがさやさやと答えた。
わたしは、再び怒鳴った。
「誰だ? ……どこにいる?」
「本……」
森の暗がりの奥から、なにかが答えた。
「本を……」
幻聴ではない。
わたしは声の聞こえてきたほうに大声で答えた。
「本をどうしろというんだ?」
「血……」
「血?」
わたしは面食らった。この謎の声が示している「本」とはあの「闇は千の目をもつ」だと考えてまず間違いないだろうが、血でもってあれをどうしろというのだろう。
まさか。
わたしは頭に思い浮かんだことを問い返してみた。
「あの本に……大量の血液を使うのか?」
答えはなかった。
「どうした! 返事をしてくれ!」
返事はしてくれたが、それはわたしの望むような形ではなかった。
原生林の影の中から、獣のようななにか黒いものが飛び出してきた。その黒い獣は、わたしの手に噛み付いたのである。
「…………!」
激痛が走った。
わたしは手にした山刀で、その黒い獣を斬ろうとした。
わたしの手に、山刀はなかった。どうやら先ほど精神集中が切れたときに、物象化の焦点を失って、もとの精神エネルギーと化して消え去ってしまったらしい。
わたしは歯噛みした。
謎のなにかと格闘が始まってしまった今となっては、これから精神集中で役立つ道具を作れるだけの余裕がない。
わたしはめちゃくちゃに、拳と蹴りを繰り出し続けた。格闘技なんて知らないので、技もなにもあったものではない。
相手の身体にわたしのパンチが何発か当たったような気もする。気がするだけだ。もちろん、相手に対して効くようなパンチではないだろうけれど。
それに対して、相手の攻撃は素早くて正確だった。わたしはいくつもの箇所を噛まれた。そのたびに激痛が走り、わたしは叫び声を上げた。
逃げるわけには行かなかった。もしもわたしがここで逃げたら、高宮秋子はどうなるのだ。
しかし、限界が来ていたのも事実だった。
わたしは気が遠くなり……。
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