ささげもの

    40000ヒット記念ショートショート!

     ←それが…… →機械性難聴殺人事件
     というわけで、40000ヒットのお題は黄輪さんによる「きつねみみ」と決まりました。深夜まで起きておられたそのご好意にはむくいねばならん。では、原稿用紙五枚、1700字のショートショートをお楽しみあれ。



     ※ ※ ※ ※ ※


    きつねみみ

    「総理。起きてください。緊急事態です」

     どれだけ世間から無能だのバカだのいわれていようが、総理も政治家のひとりだった。

    「どうした。近隣諸国で大規模な内乱でも勃発したのか」

    「もっと悪いかもしれません。全国的規模で、たぬきがきつねの耳を生やし始めました。その総数は未確認ですが、すでに全体の半数は超えているものと思われます」

     このバカ! と怒鳴りつけるには、総理の頭脳は怜悧に過ぎた。

    「……新種の伝染病か? ヒトにも感染するのか?」

    「今のところ、よくわかってはいません。今入った情報ですが、オーストラリアで、有袋類化した羊が大量発生しているとか……」

    「主だった閣僚を数人、それと各分野から専門家を呼んでくれ。わたしもすぐ行く」



    「ミュータント化した動物たちの状況は、もはや全容が把握できないほどになっています」

     首相官邸に据え付けられたモニターには、全地球的規模で報道される「奇怪な生き物たち」の画像があふれかえっていた。

    「東欧の小村で目撃された、イッカクの角……正確にはあれは角ではありませんが……を額から生やしたヤギをはじめとする動物群は、一部地域で宗教的暴動まで発生させるに至りました」

    「それだけではありません、総理。南米とアフリカでは」

    「そこらへんにしておいてくれ。わたしが知りたいのは、この事態の原因はなにか、最悪の場合に人体への影響はあるのか、そして解決策があったらそれはなにか、だ」

     生物学者が挙手した。

    「原因ですが、わたしはウイルスを考えております、総理」

    「ウイルス?」

    「総理はウイルスによる進化論というものをお聞きになられたことがありますか?」

    「いや。不勉強で、よくわからない」

    「ウイルス進化論とは、同じような突然変異がどうして広範囲に起こるのかを説明したものです。詳しいことは省きますが、ひとつの個体に生じた突然変異を、ウイルスがいわば『運び屋』のようになって爆発的に拡大させる、といったものです。現代でも無視し得ない学説です」

     文部科学大臣が異を唱えた。

    「でもおかしいじゃないか、獲得形質は遺伝しないというのが進化論のセオリーだろう」

    「ウイルスが、遺伝子レベルでの欠損を媒介し、拡散させるのです。キリンの首が長いのは、首が長くなる遺伝病が爆発的に発生したから、と考えるようなものです」

    「文科相の意見ももっともだ。ウイルスが媒介するにしては、この突然変異の規模は大きすぎる。いや、待て、きみがいいたいのはこういうことか。すでにわれわれを含む全生物はこのウイルスに感染しており、今の事態は隠れていた病状が一気に顕在化しているだけではないのか、とこういうことなのか」

     生物学者はうなずいた。

    「細胞がいっせいにアポトーシスで自壊するように、全世界の生物が、いっせいに遺伝子レベルでの種のシャッフルを行っているのではないでしょうか。それこそ、植物、動物、菌類に至るカテゴリーさえ崩壊するような……総理! 総理! その耳はなんですか!」

     恐怖をはらんだその声に、総理は思わず耳に手を当て……絶叫した。



    「そこから先はないの?」

    「遺跡から発見された古文書には、ここまでしか書かれておらんかったのじゃよ」

    「ふうん。総理とかいう人が、どんな耳をしていたのか、興味あったのになあ。あたしと同じ、きつねさんの耳かな? それとも、博士と同じ、うさぎさんの耳?」

     頭からかわいいきつねの耳を生やした少女の質問に、博士と呼ばれたうさぎ耳の老人は、首を横に振った。

    「当時の文献を読む限り、何万年も昔は、人間の耳は一種類だけだったらしいぞ」

    「そんな世界、あまり面白くないなあ。みんながいろんな耳を生やしていたり、いろんな面白い身体をしていたりするから、世の中って面白いんじゃない。それが一種類だけなんて、ひどい灰色の世界よ、きっと」

    「だから神様が、ちょっと手を加えて、世界を面白くしてくれたんじゃないのかね。お前さんに、似合いのそのきつねみみをくださったように。さ、お茶にしようか。きつね色のトーストもどうかね? みみまできれいに、よく焼いてあげるからね……」
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    ~ Comment ~

    Re: 小説と軽小説の人さん

    ありがとうございます。

    これを書いたときには「今日中に上げなくては!」とスマホを抱えてヒーヒーいっていた覚えが。

    周囲から見ればなんだあれは、という光景だっただろうなあ……(^_^;)

    王様の耳はロバのみみ!
    ……だったかかな?

    40000ヒットおめでとう御座います。
    良いオチでした。次こそはキリ番絶対踏んでやります!
    • #9888 小説と軽小説の人 
    • URL 
    • 2013.02/06 16:36 
    •  ▲EntryTop 

    Re: kyoroさん

    残念賞~!

    お子さんにお話をわたしも書きたかったです。

    女の子でしたっけ?(爆)

    Re: いもかるびさん

    人間が顔のパーツのどこに萌えるかを比較し統計することで、これまでの既成観念を打ち砕くような美学論を樹立できるかもしれない(ウソです(^_^;))

    鼻といえば象さんも特徴的ですね。

    Re: LandMさん

    やっぱり、耳は表情に直接関係のないパーツの中でいちばん目立つからでしょうか?

    そういやあわたしがRPGをやっていた若いころは右を見ても左を見てもオッドアイのキャラクターばっかりだったなあ。

    こんにちは

    40000HITおめでとうございます
    くうっ、ワタシが踏んで、子の為にお話を書いて欲しかった~~
    次こそは・・・

    40000hitおめでとうございます。
    動物耳キャラでかわいいキャラはいるが
    動物鼻萌えキャラはいないじゃないか(耳とかひげとsetならある)
    これ自分が最初に創造したら神になれるんじゃないかなどと思ったんですが・・・

    よくよく考えてみると動物の鼻などほとんど区別がつかない上、
    特徴的なのは豚さんぐらいだという事に気づき、
    どうして先人がやろうとしなかったのかうっすら理解しました。

    そういえば先日は間違ってなぞの人物としてコメントしてしまいました。
    お気づきになられていらっしゃいましたが。

    お、4万ヒットおめでとうございます。
    これからもがんばってくださいませ。

    私の世界観と通づるところがあるから嬉しいですね。
    基本的にグッゲンハイムの世界も耳で種族を判断するので。
    エルフ耳、ケモノ耳などなど。
    耳が変わるだけではそんなに生態は変わらないのですが・・・それで戦争が起こるのも人間ですね。

    Re: 黄輪さん

    40000ヒットが嬉しくてサービスいたしました(^_^)/

    少なくとも帽子屋はもうかるだろうな(笑)

    Re: limeさん

    いや恐ろしいパンデミックです(^_^;)

    耳萌が廃れないのは、それがいちばんわかりやすい「異化作用」をもたらすからだ、とわたしは考えてますが、うーん。

    リクエストにお応えいただき、
    誠にありがとうございます。

    全人類に色んな耳を……。いい神様です。
    さぞ楽しい世界でしょうね。僕にとって。

    4000ヒットおめでとうございます。
    なにやら恐ろしいパンデミックか、と思わせておいて、可愛らしげに終わらせるギャップがいいですね。
    総理の耳は、やっぱりロバあたりでしょうか。

    しかし、依然として耳萌が廃らないのは、やっぱりなにか原因があるんでしょうね。不思議です。

    Re:レルバルさん

    えっ? あの狐が生まれる裏にもこのようなSFじみたことがっ?(なわけがねぇ(笑))

    Re: マーサさん

    まあこういうのは倫理的にどうこう、方法論的にどうこうよりも、出来上がったキャラクターがかわいければすべてOKという側面もありますし。

    それにしても、セイレーン、無事にネコに戻れたのかなあ。あれから一年経つけど心配だ。

    なんだか、麓狐と被るところがあってひやりとしました。
    よかったww
    びっくりですww

    ネコ耳は邪道だ…!

    私はヒトに獣の耳をくっつけるのは、
    あまり好きではありません。むしろ嫌いかも。
    でもエレンは元がネコだし、かわいいからOK(ぉ

    それはそうと、40000ヒットおめでとうございます~。

    Re: 矢端想さん

    ファンタジーワールドに至るまでがハードSFですが(嘘こけっ!)

    まあ黄輪さんのお題でもありますしね(^_^) サービスサービスゥ!

    Re: ダメ子さん

    残念でした、またの機会に(^_^)

    残念賞としてトーストにたっぷりのバターと蜂蜜、メープルシロップをどうぞ(^_^)

    きつねみみの少女とうさみみの老人・・・なんて素敵なファンタジーワールド!

    「きつねみみ」のお題を最後「きつね色のパンの耳」に落とし込んだ手腕は見事と言うほかない!!

    聞こえる聞こえる・・・だってうさぎの耳は長いんだもん・・・(byウサミミ仮面)

    狙ってたのに…

    やっぱりネコミミが一番モテるんでしょうか?
    でも、キツネ色のパンの耳が一番気になる…w
    おなかがすいてきました
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