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    「ショートショート」
    ユーモア

    THE LITERATURE TO END LITERATURE

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     のっけから仰々しいタイトルでもうしわけない。「文学を終わらせるための文学」とは、自分で書いていてもいささか誇大妄想気味だということはよく承知している。

     二一九八年の全面核戦争をピークに、人間はとりかえしのつかないことをしてしまっていた。この地球を、生物が生存可能な状況ではなくしてしまったのだ。賢人会議は、生物そのものの存在意義について議論し、生物は、特に人間レベルにまで肥大化した知性はこの宇宙に害しか及ぼさないと結論をくだした。

     地下シェルターに籠もることができたわずかの人類たちは、その結論にうなずくしかなかった。ほかになにができたというのだ。「人類安楽死計画」なるものが行われることになった。緩慢に人口を減少させ、八十年かけて人類を滅亡に導こうというプロジェクトである。

     わたしはその一員として、人間がこれまでに作り出してきた文学のうち、最上位にあたるものを墓碑銘として刻むため、蓄積された情報を推論コンピュータにかける作業をしているのだった。

     推論コンピュータがいかなる文学を最上位に置くか、それとも人類にとっていまだ未知のなにかを吐き出すのか、いずれにしてもそれは人間のすべての文学活動を終わらせるものとなるだろう。

     その任についてからちょうど三十年になる。推論コンピュータが結論を出すころだ。

     わたしはいつものように、モニタを眺めた。

     コンピュータは推論を終えていた。わたしはうやうやしくモニタに吐き出された文字列を読んだ。俳句らしい。

     吐き出された文字列はこうだった。

    「古池や芭蕉飛び込む水の音」

     なんだこれは。こんなものを人類の墓碑銘としていいものか。

     わたしは怒りのあまりモニタを叩き壊した。

     わたしには知る機会がないことだったが、それから百年経った後でも人類は生存し繁殖し、地球に限りない迷惑をかけていたそうである。世の中そんなものなんだろう。
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    ~ Comment ~

    Re: 小説と軽小説の人さん

    このパロディのセンスは真似できません。やったもん勝ちといえばそうですが、仙厓禅師の発想力には完敗です。(^^)

    前にイジワルクイズで、以下の文を訳せ、というのがありました。

    「Full in care cow was to become Ms. NOT.」

    それがわたしと俳句との最初の接近遭遇だった気がします(^^)

    芭蕉のカッパ泳ぎが目に浮かぶ。
    うーん、いいセンスです。

    私的な事ですが、義務教育時代、この俳句がテストの問題に成った事があって、その回答を思い出せず、適当な事を書いて暴露されて、クラスで笑い者にされた思い出が……。思えば、あの時が文学との出会いだったような。
    • #9913 小説と軽小説の人 
    • URL 
    • 2013.02/09 22:45 
    •  ▲EntryTop 

    Re: 矢端想さん

    まあそうなんですけれどショートショートを書くうえではこう書かないと小説にならない(^^;)

    この手の「人類存在の意義」というテーマを掘り下げた作品に、半村良先生の「妖星伝」という傑作があります。

    えっちで面白いです(笑) そのくせ読んだ後ものすごく暗い気持ちになりますが(^^;)

    別に人間は地球にも宇宙にも害を及ぼさないのですけどね。
    生態系を変えるも勝手に滅ぶも人間の勝手。植物が増えて大気を変えたのと同じです。
    人間の営みもすべて自然の一部。地球には痛くも痒くもない。

    だから今世紀(?)最大の欺瞞として嫌いな言葉が「地球を守れ」です。
    それをいうなら「人類を守れ」です。
    地球自体の消滅の危機などを回避させて初めて、人間が地球を守ったことになります。

    それはともかく。
    人類存亡をかけた深刻なプロジェクトを「世の中そんなもの」とレベルの違う言葉で言ってのける軽さが好きです。

    Re: レルバルさん

    だから芭蕉を飛び込ませたのは仙厓義梵禅師だってば(^^;)

    わたしにそこまでの自由な発想力はないです(^^;)

    いいですね!
    芭蕉さんがとびこむあたりポールさんみたいな感じがします!

    Re: ダメ子さん

    ちなみにこの句は仙厓義梵という江戸中期の臨済宗の高僧が詠んだそうであります。

    狂歌や絵も多数残しており、自由闊達に生きたかただったそうであります。

    この句を拾ってきたのは小林信彦先生のパロディ小説の傑作「ちはやふる奥の細道」からです。とんでもない芭蕉像に死ぬほど笑えます。ぜひご一読を。

    ブラックユーモアが文学の最上位という結論に?
    私はどちらかというと歓迎です
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