「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
2 闇は千の目をもつ(完結)
闇は千の目をもつ 14-4
「別の要因……?」
島田春江は疲れた目をさまよわせた。
「なにがあるとおっしゃられるんですか、桐野先生」
「それがわかればいいのですが」
そう答えるしかなかったのが、なんとも歯がゆい。
「このマンション自体になにかがあるのでしょうか?」
わたしはしばし考え、首を横に振った。
「そうとは思えません。もしそうだとしたら、これまでの間に、妹さんがここまで病状を悪化させるわけがない。もっと別な理由でしょう」
「あたしが来たことかしら……?」
わたしはうなずいた。
「それか、わたしが来たことに理由があるはずです。なにか、キーになるようなものがあるはずだ」
島田春江は真剣な表情で考え込みながらいった。
「あたしには、特に心当たりはありません。なにしろ、眠ろうとしたところに電話で秋子から深刻な身体の不調を訴えられ、そのまま化粧もしないで家を飛び出して来たんですから」
「変わったことは」
「今朝がた、桐野先生とお会いしたくらいです」
「わたしにも心当たりがない。それじゃあ、いったいなんだと……」
そういいかけたわたしは、はっとひらめいた。
「そうか」
「先生、いったい、なにか?」
島田春江は溺れるものの前に垂れ下がったひと筋の藁でも見つめるような目つきでわたしを見た。
「ここで待っていてください」
わたしは部屋を飛び出した。
大急ぎで階段を駆け下りた。悠長にエレベーターを待っている気持ちの余裕などあるわけがない。
まっすぐ車を停めた地点に向かった。
キーを探るのももどかしくビートルの扉を開ける。
車内を探し回った。
わたしの考えに狂いがなければ、「あれ」があるはずだが……。
あった。
わたしはそれをわしづかみにして、再びマンションの階段を駆け上がった。
「お待たせしました」
部屋に飛び込んできたわたしに、島田春江は急き込むように問いかけた。
「先生、なにかわかりましたか?」
「こいつですよ。こいつが、病気の力を弱めてくれているに違いありません」
わたしは車から取ってきた『闇は千の目をもつ』を手に、なんとか笑顔を作った。
島田春江は疲れた目をさまよわせた。
「なにがあるとおっしゃられるんですか、桐野先生」
「それがわかればいいのですが」
そう答えるしかなかったのが、なんとも歯がゆい。
「このマンション自体になにかがあるのでしょうか?」
わたしはしばし考え、首を横に振った。
「そうとは思えません。もしそうだとしたら、これまでの間に、妹さんがここまで病状を悪化させるわけがない。もっと別な理由でしょう」
「あたしが来たことかしら……?」
わたしはうなずいた。
「それか、わたしが来たことに理由があるはずです。なにか、キーになるようなものがあるはずだ」
島田春江は真剣な表情で考え込みながらいった。
「あたしには、特に心当たりはありません。なにしろ、眠ろうとしたところに電話で秋子から深刻な身体の不調を訴えられ、そのまま化粧もしないで家を飛び出して来たんですから」
「変わったことは」
「今朝がた、桐野先生とお会いしたくらいです」
「わたしにも心当たりがない。それじゃあ、いったいなんだと……」
そういいかけたわたしは、はっとひらめいた。
「そうか」
「先生、いったい、なにか?」
島田春江は溺れるものの前に垂れ下がったひと筋の藁でも見つめるような目つきでわたしを見た。
「ここで待っていてください」
わたしは部屋を飛び出した。
大急ぎで階段を駆け下りた。悠長にエレベーターを待っている気持ちの余裕などあるわけがない。
まっすぐ車を停めた地点に向かった。
キーを探るのももどかしくビートルの扉を開ける。
車内を探し回った。
わたしの考えに狂いがなければ、「あれ」があるはずだが……。
あった。
わたしはそれをわしづかみにして、再びマンションの階段を駆け上がった。
「お待たせしました」
部屋に飛び込んできたわたしに、島田春江は急き込むように問いかけた。
「先生、なにかわかりましたか?」
「こいつですよ。こいつが、病気の力を弱めてくれているに違いありません」
わたしは車から取ってきた『闇は千の目をもつ』を手に、なんとか笑顔を作った。
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おはようございます!
「あの本」に血を与えるとペストが治る…!?
どういう仕掛けでからくりなのか?そもそもこの考えが合っているかかも分からないし…まだまだ謎が謎を呼びますねえ…。
「あの本」に血を与えるとペストが治る…!?
どういう仕掛けでからくりなのか?そもそもこの考えが合っているかかも分からないし…まだまだ謎が謎を呼びますねえ…。
- #7114 有村司
- URL
- 2012.02/11 08:08
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Re: 有村司さん
ふっふっふっ(^^)
謎のほとんどは解けると思いますよ最終的には……。