幻想帝国の崩壊(遠未来長編SF・完結)

    断片025「ルジェはすべてを見た」

     ←眼鏡を外して書いてみる →断片026「ルジェは叡智がなにをもたらしたかを見た」
    (欠落)



     ルジェはすべてを見た。

    『旧人に対し、われら現生人類はその処理できる情報量に格段の開きがあった』

     トリスメギストス師がつぶやく。

    「しかし……しかし師よ、このようなことが許されていいのですか?」

    『許されるもなにも、しなければこちらが死ぬのだ。そういう時代だったのだ。あの惑星が、物理帝国の中枢から離れていたのはわれわれ現生人類にとって幸運なことだっただろう。それとも、お前は、われわれが旧人の奴隷種族として生きる現在のほうがよかったと、そういうのか?』

     ルジェは答えに窮した。

     天才的な学者を殺した、若き日の……ほんとうに若き日のことなのだろうか? 生まれたてのトリスメギストス師は、その肉塊から足を引き抜き、部屋を探し回り始めた。

    『見るがいい。われわれが、文字を捨てる瞬間を』

     生まれたばかりの現生人類は、まるで本能に導かれるように、学者の持っていた何らかの機器に歩み寄っていった。

    『原始的な生体コンピュータ、今の生ける皇宮スヴェル・ヴェルームの基になったようなものじゃよ』

     現生人類は生体コンピュータを打ち壊し始めた。

    『ほぼ全体が軽量なプラスチック製だ。わしにとってはこれもまた運がよかった』

     トリスメギストス師は他人事のようにつぶやいた。

     生体コンピュータが破壊され、中の機械がむき出しになった。

    『破壊されると保護システムが働き、高圧電流が停止するつくりになっていたのも運がよかった』

     かつてのトリスメギストス師は、機械の中から、何かを取り出した。

    「師よ、あれはなんですか?」

     ルジェは尋ねた。答えはわかっていた。

    『あれは、生体コンピュータの中枢部のひとつ、生体メモリ、今のわれわれが知るところの「情報媒体」の塊じゃ』

     トリスメギストス師は、かつての自分の行いを淡々と語った。

    『ルジェくん、きみはこういう話を聞いたことはないかね? 「未来の記憶」というものを』

    「いえ……」

    『わしは、これからやるべきことのすべてを、これから学ぶことになるのだよ。それを表現するのに、「未来の記憶」以外のなんという言葉をつかえばいいのかわからんのだ』

     かつてのトリスメギストス師は、そこになにがあるのかわかっているように、生体メモリのかけらをほじくり出すと、当たり前のように口に入れて、咀嚼した。

    『旧人にはこのようなことは無理だった。一度「書き文字」にしないと、その内容を読み解くことができないのだよ。それもこれも、旧人とわれわれの情報処理能力の差から来るのだがな』

     ルジェは見た。自分もそうだったのだ。生ける皇宮スヴェル・ヴェルームのかけら、ほんのわずかな情報媒体のひとしずくをなめることで、どのようになったかが、今になって思い出されてきた。

     ルジェは見た。生まれたばかりのトリスメギストス師の瞳に、叡智の光がひらめく、まさにその瞬間を!(欠落)
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    ~ Comment ~

    Re: らすさん

    あまりに変な世界にしてしまったため、整合性を取るため毎日うんうん頭を抱えています。

    しかも時代がまったく異なる話を三つ同時に展開しておのおのをリンクさせる、という荒業に挑戦しているのでよけい頭がこんがらかって。

    これが終わったらしばらくは軽いものを書こうと思っております。たはは(^^;)

    こんばんは(´∀`)

    近未来ではなくて遠未来なんですね。
    確かに現代科学では想像もつかない世界ですね。

    どうやってそんな斬新な世界観を考えつくのだろうと、
    ただただ感心するばかりです。
    自分はSFといえばロボットぐらいしか思い浮かばないのです(;^ω^)

    Re: 弘と書いてひろむと読みますさん

    ありがとうございます。

    こちらこそよろしくお願いします。

    リンクさせて頂きました。

    こちらこそ有難うございます。リンクさせて頂きました。

    今後とも宜しくお願い致します。
    • #9962 弘と書いてひろむと読みます。 
    • URL 
    • 2013.02/18 18:12 
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