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    幻想帝国の崩壊(遠未来長編SF・完結)

    断片028「困惑を隠しきれなかった」

     ←断片027「どこか熱にでも浮かされたかのようだった」 →断片029「ルジェはぽかんとしていた」
     (欠落。ルジェは?)困惑を隠しきれなかった。

    「殿下。おそれながら、それが殿下にとってなんのお役に立つのか、わたくしはわかりかねます」

    「お前には尋ねていない!」

     皇子アヴェル・ヴァールは口調を荒げたが、すぐに自制心を取り戻した。

    「すまぬ、ルジェ。この身体を再構成してくれたことへの礼もいまだせぬのに、怒声などを浴びせてしまった」

     トリスメギストス師が静かにいった。

    「たしかに、わしら錬金術師組合は、反エントロピー波動の研究を続けている。しかし、この忠僕のいっていることと同じことを、わしは皇子に聞かねばならん。いったい、帝国の危機、『統制官』や『統制文字』の謎もまだわからぬというのに、どうして反エントロピー波動の知識が必要なんじゃ」

    「帝国の危機を回避するため……」

     皇子アヴェル・ヴァールがいいかけたところで、トリスメギストス師はぴしゃりと遮った。

    「嘘じゃな」

    「嘘? どうして嘘などを」

    「未来に起こる危機を回避するに、なぜに過去の情報にそれほどまでにこだわる。皇子がこの結晶楼閣を立ち去ってから、わしが『続由美子』という言葉に関する情報の総ざらいをしなかったとでも思うておるのか」

    「トリスメギストス師、それはまことのことですか?」

     ルジェは叫んだ。トリスメギストス師はそんなルジェを見やった。

    「まことであるとも。そのうえでなお、わしはきみにあの惨状を見せたのじゃ。知っておるのと知らぬのとではまったく違うからな。皇子を支えることひとつにしても」

     トリスメギストス師は皇子から視線をそらした。

    「わしの情報探索の結論をいおう。『続由美子』のそれと『統制官』のそれとをつなぐ情報は、存在しない。あるいは、存在したかもしれぬが、すでに失われてしまった。今や雑情報しか残ってはおらん」

    「だからだ!」

     皇子アヴェル・ヴァールは声を張り上げた。

    「だから、その雑情報から情報を選り出す反エントロピー波動の知識が必要なのだ!」

    「皇子よ」

     トリスメギストス師はどこか気の毒そうにいった。

    「なぜ隠す。その真情さえわかれば、われら錬金術師組合としても、皇子の役に立てるかもしれぬ。隠し事をしての談判など、いやしくも生ける皇宮スヴェル・ヴェルームに仕える皇子のひとりのやることか」

     その憐れみに満ちた語りは、大喝よりもいっそうきいたようだった。

    「……教えてもらいたい。旧人の女は、それは美しかったというのはほんとうの話か」

     ぼそりと呟くように皇子は問いを発した。

    「旧人の、女?」

     トリスメギストス師はあっけにとられたかのように問い返し、そして、笑った。

    「なにをいうかと思えば。そうか、そういうことか」

    「おっしゃる意味がよくわかりませぬが……」

     ルジェは助けを求めるかのようにトリスメギストス師を見た。

    「簡単なことだ、ルジェくん。この愚かな皇子は、おおかた皇宮の中ででも見たのだろうが、旧人の女に、心を奪われて(欠落)」
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    Re: ぴゆうさん

    まあそういうことです。もうバレバレ(^_^;)

    この無味乾燥な小説でも、ちょっとはロマンチックなことを入れたいのであります(^_^)

    うまく伏線が回収できたらごかっさい。

    NoTitle

    これはもしやして、続由美子が失恋したという謎の彼氏に
    繋がるのでしょうや
    むむ
    やっと、親近感が
    しかし、早いな
    油断していると又、わからなくなる。
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