幻想帝国の崩壊(遠未来長編SF・完結)

    断片125b「なんてことだ!」

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    「なんてことだ!」

     中島准教授はモニタを激しく叩いた。

     その傍らで、続由美子は呆然としていることしかできなかった。ディアが。わたしのマイディアが。これはなにかの冗談なの? 悪夢なの? わたしの大事な思い出まで、この異様な機械は食べてしまったというの?

    「続くん」

     中島准教授は、続由美子をぎらぎらした目でにらみつけた。

    「きみと、そのディアとかいう男の出会いは、こうだったのか? そうなのか?」

     そんなことを聞かれても。あたしにはなにがなんだか。もうあたしはなにを信じればいいのだか。

    「答えろ!」

     肩を強くゆすぶられ、続由美子の瞳の焦点がようやく合った。

    「……そう。そうです」

    「雨上がりの日に、道で出会い、こういう会話を交わしたというのか! 本当に、そうなのか!」

    「そうですってば!」

     肩に食い込む指の痛みに、続由美子は叫び、自分の大声で我に返った。

    「放してください、准教授!」

     身を振りほどき、続由美子はモニタをもう一度見た。

     間違いない。自分と、あの外人の青年とが出会いのときに交わした、ふたりだけしか知らない会話が、そこには書かれていた。

     中島准教授は、ぶつぶつとなにかをくりかえしつぶやいていた。

    「ほんとうにいたずらなのか……? それなら、誰がプログラムを書けるというんだ、SVELの、すでに人間には理解不能なまでに高度な言語を使って……? 誰が、誰の意図がここに存在するというんだ……? いったい……?」

     続由美子は天を仰ぎ、そしてこの地下にあるコンピュータを眺めた。逃げられるとは思えなかった。いや、すでに逃げる意思などなくしていた。

     このコンピュータのそばにいさえすれば、あの男性ともう一度逢えるかもしれない!

     そう考えるだけで希望が湧いてきた。もう一度逢うことができるのならば、自分は悪魔にだって魂を売ってしまうだろう。そう思った夜もあった。ほぼあきらめていたが、そのチャンスが来るかもしれないのだ。

    「続くん」

     ようやく理性を取り戻した中島准教授が、続由美子の手首をつかんだ。

    「全てを話してくれないか。きみがいっていた、その、ディアという男のことについて。詳しく。詳細を知りたい。その男は、SVELでプログラムを書くことができるのか。このクローズドなはずの環境に、クラッキングを仕掛けることができるほどの腕の持ち主なのか」

    「中島准教授」

     続由美子は、自分でもこんな自信たっぷりな声が出せるとは思わなかったような冷たいトーンで答えた。

    「いくらでも話します。ただし、条件があります」

    「条件? ……いや。のもう。なんでもいってくれ」

    「あたしを、このプロジェクトの一員として扱ってください。実験材料でもなく、癌細胞のキャリアとしてでもなく、ひとりの続研究員として。お話しすることがあるとしても、すべてはそれからです」

     続由美子は、かすかに笑った。
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    Re: ぴゆうさん

    ほんとはここらへんをもっと書き込むつもりだったのですが(汗)

    こればっかりですみません(汗汗)

    NoTitle

    おおーー
    何かホッとした。
    木偶の坊然と
    教授の言うがままになっていたと思っていたら
    この展開
    フムフム
    そうでないといけません。
    由美子の感情が素直でいいです。
    好きな人に会いたい
    いいです♡
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