幻想帝国の崩壊(遠未来長編SF・完結)

    断片227「幻想帝国の為政者たちは賢明だった」

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     幻想帝国の為政者たちは賢明だった。一種エゴイスティックに振舞う『若き神』を、自らの帝国の外部に位置するものでなく、内部……そう、脳髄として取り込んだのだ。幻想帝国の臣民すべては、『生ける皇宮スヴェル・ヴェルーム』を中心とする生物組織の細胞ひとつひとつであり、その成長はスヴェル・ヴェルームの成長ともはや不可分のものであった。

     臣民を害することは『生ける皇宮スヴェル・ヴェルーム』にとって自分を害することであり、その自己保存にとって思わしい自体ではなかった。幻想帝国の維持と発展なしの自己成長、増殖の解など、論理的にありえなかった。

     幻想帝国が死んだとき、また『生ける皇宮スヴェル・ヴェルーム』も死ぬのである。この蜜月関係は永遠に比すほど長く続くものだと思われた。

     幻想帝国に住まう臣民たちは、自らがやりたいことだけを、やりたいようにやっているものだと確信して生きていた。やりたいことと違うことがやりたければ、また違う仮面をつければいいだけの話だった。そうした形での、生体組織としての細胞どうしの交換ややりとりというものは、幻想帝国自体にとっても、『生ける皇宮スヴェル・ヴェルーム』自体にとっても好ましいものだった。

     そうした細胞に神経を通して情報を伝達する物質のように、皇子たちはスヴェル・ヴェルームに仕えた。皇子たちが伝える皇宮からの情報は、臣民たちに刺激をもたらし、その構成内容を変化させた。幻想帝国の体内で、新たな、想像もできなかったような『臓器』や『器官』が生まれ、それは再び幻想帝国の体内の一組織へと取り込まれていった。

     生物学的政体としての理想郷、幻想帝国をそう評することもできたろう。だが、しかし、この理想郷にも終わりが、没落がやってくるときが来た。

     「統制官運動」がそれである。
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    ~ Comment ~

    Re: ぴゆうさん

    近世ではよくあったんです、生物のそれに例えて社会のシステムを説明するやりかた。

    それに対して出てきたのが、機械的なもののそれとして社会のシステムを説明するものです。

    その頂点に当たるものとして「幻想帝国」と「物理帝国」というものを考えました。「物理帝国」にかわるものとして生まれた「幻想帝国」は、やがて「物理帝国」的な思想に復讐されるのです。

    自分にもうちょっとイメージ力があったらな、と思います(^_^;)

    NoTitle

    考えてみればこの文明も
    血が通った人が作り上げているもの
    この幻想帝国と何が違うのだろう。
    仕組みの中で生きていることに変わりはないような
    何やらゾッとするような
    納得するような

    Re: LandMさん

    エラ呼吸の魚類にとっての肺みたいなものです。あるいは一心房一心室の生物にとっての二心房二心室システム。

    あくまで生命体アナロジーですが。

    想像できなかった臓器とはガン細胞のことだろうか・・・。
    人も統治機構も同じようなものですけどね。
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