幻想帝国の崩壊(遠未来長編SF・完結)

    断片035「淡々と語った」

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    (欠落。皇子アヴェル・ヴァールは?)淡々と語った。

    「帝国法に、反逆罪、という文言は存在せぬ」

    「御意にございます」

     皇子アヴェル・ヴァールはさらに続けた。

    「帝国法に、皇子を裁く条文は存在せぬ」

    「御意にございます」

     皇子アヴェル・ヴァールは従者の前で立ち上がった。

    「そうである以上、皇子たるものは帝国のためにもっともよきやりかたで、自らを裁かねばならぬ」

    「御意にございます……」

     ルジェは涙を流していた。皇子たちが、この軽挙の一部となったがゆえに従者に科した罰は過酷に過ぎた。従者に、自身の主人に対する弾劾者をやらせるというのである。それが、この従者の心に対するもっとも適した罰である、と判断したが故であった。

     ルジェは、自分がその罰を受けるにふさわしいことは知っていた。だが、皇子がいかにして自らを裁くことにしたのかはわからなかった。

    「ルジェ」

    「はっ」

    「お前には、我よりも過酷な道を歩んでもらわねばならぬ」

    「……はっ?」

     ルジェは、その言葉に、一瞬、面食らうものを感じた。

    「殿下。畏れながら、それはいかなることでございましょうか」

    「我がお前に命じたことを思い出せ。それだけでわかるであろう」

     ルジェは二、三瞬の間考え、そして思い出した。

    「殿下! 殿下、それは……」

     ルジェは反射的に立ち上がり、抗弁しようとしたが、やがて再びひざまずいた。

    「このルジェ、命ある限り、殿下の課した使命のうちに生きることを再び重ねてお誓い申し上げます」

     皇子アヴェル・ヴァールはわずかに微笑んだ。

    「よくぞ申した」

     ルジェはぬかづくばかりだった。

    「ルジェ。面を上げよ。ついて来い」

     ルジェは顔を上げた。

    「いずこへでございますか、殿下」

    「決まっておろう。帝国の皇子が自らを裁く、その一部始終をその眼にしかと映してほしいのだ」

     ルジェには皇子がなにをやるのかがわかった。

    「殿下……」

    「お前が生きるも死ぬも、生ける皇宮スヴェル・ヴェルームの肚ひとつだ。それを忘れるな。忘れることがなければ、希望も生まれよう」

    「殿下はご自分のおっしゃられたことを信じておられるのですか」

     ルジェの問いに、皇子アヴェル・ヴァールは答えた。

    「信じるも信じないもない。我は偉大なる幻想帝国の、誇り高き皇子なのだ。そればかりではないのだぞ、ルジェ」

     ルジェにはなにもいえなかった。

    「我はひとりの女を愛した男として、自らの罪を償うのだ。我にはそれしかできぬのだ。わかってくれ、(欠落。ルジェ?)」
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