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    幻想帝国の崩壊(遠未来長編SF・完結)

    断片133「中島准教授は」

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     中島准教授は、日本、いや、人類の将来がかかった貴重な検体が、頭から落下していくのを呆然と見ていた。

    「衛生班! あの女の身体を押さえろ!」

     近くの通信用端末に叫んだときには、続由美子の身体は、情報媒体の山をすべるようにして、遥か下の床にまで落ちていた。

     それは身体のすべてではなかった。首から頭の部分だけは、情報媒体の山に埋もれ、取り込まれていた。このコンピュータは、自分がそんなギロチンになったことなど気づかないかのように、静かに計算を続けていた。

     中島准教授は、確かに頭の回転は速い男だった。

    「衛生班!」

     声のトーンが変わった。

    「あの女の身体が全体死する前に、子宮頸部から癌細胞を摘出、保存せよ! 急げ!」

     白衣を着た集団が、もはや「物体」と化したその身体に群がるのを見ながら、中島准教授はコンピュータを見た。

    「これも、お前の、『未来の記憶』の一部なのか?」

     コンピュータは答えなかった。

    「お前は、『神』なのか? 人間は、『神』の創造に一役買ったのか?」

     コンピュータは答えなかった。

    「あの女を取り込んで、SVELは『神の使う言語』の資格を得たのか?」

     コンピュータは答えなかった。ただ、SVELを使って計算を続けるだけだった。

     人をやって、続由美子の頭部を回収させねば。もし、情報媒体に飲み込まれ、その一部と化していたというのなら、それはそれでよい。人体が、情報媒体を構成する材料のひとつとなることが証明されることになるからだ。

     中島准教授には、表裏に渡って、これからやらねばならないことが山ほどあった。

     その口から、どこか狂ったような笑い声が漏れてきたのを、周囲の人間たちはあっけに取られたように眺めていた。
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    ~ Comment ~

    Re: 矢端想さん

    まあもともとそういう何が何だかな形而上的SF話が書きたかったこともありますし。

    なんとなく野心家のやり手というと「准教授」とか「助教授」のほうを想像してしまうんだよなあ。「教授」だとポストが安定しすぎていて……。

    ついに続由美子の肉体は崩壊し、物語の舞台はいよいよ何が何だかな形而上の世界へ。

    ところでこんな大それたことをする中島さんは准教授ですけどもっと偉い教授っていなかったのかな。あっ、大それたことをするために「窓際准教授」になってたんだっけ!
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