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    私家版オールタイム・ベスト(映画)

    邦画ベスト2「十三人の刺客(’63)」

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     もちろん、工藤栄一監督の白黒バージョンである。リメイクは、この傑作を見た後では怖くて見られない。イメージを傷つけたくないのだ。

     それでこの映画であるが、戦後の時代劇映画の中ではベストである。いや、「七人の侍」があることは認めるよ。だが、シンプルなストーリーと、異様なまでのパワーでは「十三人の刺客」のほうが遥かに上だとわたしは思う。

     とにかくいい意味でのゲーム感覚に満ち溢れた脚本。「相手はこう考えるだろうから、こちらはこういう手を取ろう」とすると、相手はその上をいく奇手を打ってくる。ならばその上を行く妙手を……という頭脳戦を繰り返した先に、まるでチェス・ゲームでもするかのようなクライマックスシーンが待っているのだ。ただのチェス・ゲームではない。肉弾相打ち、知略の限りをこらし、双方ともにぎりぎりの線で血がしぶく激闘死闘を演じるチェス・ゲームである。

     ゲームとしてみれば、勝利条件が明確なのがいい。攻撃側は、相手の王様(殿様ではあるが)を取れば勝ち。防御側は、王様を守り抜けば勝ち。燃える展開にならざるを得ない。

     そしてあの延々三十分にも及ぶ一大アクションシーン。わたしが見たのはVHSを家のテレビでだが、それでも十分に血がたぎるものだった。五十二人対十三人である。迫力からして違う。攻撃に使えるものはなんでもかんでも使い、疲れきって斃れるまで剣を振るう。それを鬼気迫るようなカメラワークで撮っていくのである。痺れた。

     世の中にこんな面白い映画があっていいのかと思った。十数年して「忠次旅日記」にその座を追われるまでは、わたしのオールタイム・ベストで不動の一位を保っていたものだ。

     その後、「大殺陣」「十一人の侍」と続く集団抗争時代劇三部作を見たが、「十三人の刺客」はやはりベストだ。「大殺陣」は話が暗すぎる。「十一人の侍」は突飛な道具を使いすぎる。いまいち、燃えない。

     まあこの映画を見たことで、わたしの小説はもろに影響を受けた。アクションシーンになると、「剣や刀は切るものではなく殴るもの」であるし、「その場にあって使えるものは何でも使う」というのがデフォになってしまった。もちろん剣や刀はボキボキ折れる。その結果として肉弾戦の武器としては斧や棍棒のほうが……まあそれは関係ないか。

     評判がいいのは知っているが、リメイクを見る気にはどうしてもなれない。どうやってあの役者陣を上回る「武士」を現代からスカウトしてくるのだ。どうやってあのモノクロのフィルムによる映像以上の迫力をカラーのビデオで再現するのだ。どうやってあの発泡スチロールが存在しない状況で投げ落とされた本物の丸太以上の迫力を現代日本の安易なCGで再現するのだ……。

     そこまでほれ込んでしまう偉大な映画なのだ。バイアスがかかっていることは認めるが、一度見てみることをお勧めする。見なきゃ損だ。できれば一度劇場で見たかった、と思う映画のナンバーワン。
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    ~ Comment ~

    Re: 宵乃さん

    三池 崇史監督の劇場用作品は「ヤッターマン」くらいしか見ていないのでなんともいえませんが、

    シリーズ監督をしたテレビの連続特撮ドラマ「ケータイ捜査官7」は、文句なしの大傑作です。毎週テレビにかじりついて見てました。特撮やSFがお好きだったらぜひ見てほしい作品です。

    だから「十三人の刺客」リメイクにもちょっと魅かれるものがあるのですが、工藤監督のこれを見ると、うーんイメージ傷つけたくないなあ、と(^^;)

    こんにちは♪

    この間オンエアがあって観ました。
    ちょっと調子が悪かったらしく終盤の殺陣にかかろうという時にはうとうとしてしまっていいました…(自分のバカ!)。
    でも、バカ殿に苦労させられている家臣と、バカ殿に息子夫婦を殺されたおじさんが印象に残ってます。
    バカ殿が悪役としてしっかりキャラが立ってる一方で、彼らのような芯の通った人物がいて、メリハリありますよね。
    顔を見分けるのが苦手で、主役?の13人の区別がつかなかったのが残念ですが、観られてよかったです。

    小説を書いてらっしゃると、良い作品に出会う事で良い影響を受けるんですね~。

    >評判がいいのは知っているが、リメイクを見る気にはどうしてもなれない。

    この監督さん、彼特有のチープさと、どぎついエログロが売りだった気がするので、評判がいいのは、それと知って観た人たちにって事じゃないでしょうか?
    わたしはそういうのは苦手なので、絶対観たくないです!
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