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    私家版オールタイム・ベスト(映画)

    邦画ベスト8「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」

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     ただ単に面白い映画を……聞き飽きたからやめろ?

     山中貞雄の作品はこの一作しか見ていない。なぜなら、「人情紙風船」なんか見たら、ショックとストレスで寝込んでしまいかねないほど、ショックとストレスに弱い人間であるからだ。

     それにしても、この作品は人情喜劇として実にすばらしい。子供と丹下左膳と長屋のおかみさんが、見事なほどうまくはまっている。みんな口ではきつい言葉をもてあそんだりもするけれど、根がすさまじいほどに人情家なのだ。最初のやりとりを見て笑ってしまった。もしこれが現代の監督だったらこうはいかないだろう。もっと、イヤになるようなドラマを絡めてくるに違いない。そこを絡めないのが腕であり才能であり良識であるはずなのだが。

     そこに「こけ猿の壺」がからんでくるのだが、そこから先は爆笑また爆笑である。よくもまあギャグを思いつくことだ。それでいて左膳を決して弱くは描かないのがすばらしい。剣を抜けば強いのだ。それを逆手に取ったギャグが見事である。

     もともと丹下左膳は伊藤大輔が得意にしていた登場人物で、大河内傅次郎主演の「新版大岡政談」三部作は面白さで他の追随を許さなかったそうだ。見る機会があったらなにを措いても見たいところだが、そうもいかない。天災と戦災と人災で、フィルムが現存していないのである。くやしいことこの上ない。

     「新版大岡政談」のヒットを受けて、伊藤大輔は「丹下左膳」という映画も撮った。もちろん丹下左膳は大河内傅次郎である。現存しているが、ちょっと見る気になれない。なぜなら肝心の剣戟シーンがすべて抜き取られているからである。当時のマニアが、自分が楽しむために編集したらしく、使わなかった残りのフィルムが現存盤らしいのだ。そして剣戟シーンのほうは天災と戦災と人災で(略)。

     だから、この「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」も大河内傅次郎主演である。それを戦前のあの時代にパロディ喜劇に仕立て上げた山中貞雄はやはり天才というしかない。ちなみに作品はこれと「人情紙風船」を入れて三作しか現存していない。無声映画時代に周囲を驚嘆の渦に巻き込んだ監督デビュー作「抱寝の長脇差」をはじめとする他の傑作群は天災と戦災と人災で(略)。(略)とか書いているが、書いてるこっちのほうがつらいのだ。察してくれい。とほほほほ。

     いずれにしても、現存する中で、日本喜劇のベストワンはこの作品だろうと思う。同時期にスラップスティックコメディで一世を風靡した斉藤寅次郎はどうしたんだ、と思われるかもしれないが、傑作群が天災と戦災と人災で(略)

     今や戦前の無声映画は15パーセント程度の断片のほかは天災と戦災と人災で(略)

     どうしてシネマテークを作ってフィルムを保存しようと考えなかったんだ日本映画界!それがいちばんとほほほほ。
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    ~ Comment ~

    Re: 宵乃さん

    ほんと、「忠次旅日記」の項にも書いたとおり、映画マニアの友人に誘われて無声映画の世界に入ったのですが、その「今の映画とは違った」奥深い世界に魅了されて今に至ります。その課程で、残存フィルムの少なさに呆然とさせられてしまいました。

    海外の映画の名作群はほとんど残っているのですが、日本は全部かき集めても15パーセント。だれも映画を文化資産として積極的に保存しようだなどと考えていなかったのであります。悲しいを通り越して情けなくなってきます。

    もし大都市近郊にお住まいならば、活弁・伴奏つきの無声映画上映会に足を運んでみられることをお勧めいたします。すごいんですよほんとだよ。

    NoTitle

    しっかりフィルムを保管してあれば、今日の邦画ももっと室の良いものがたくさん作られていたかもしれませんね~。
    「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」はわたしも大好きで、以前企画でも扱いました。

    >根がすさまじいほどに人情家

    そうなんですよね~。ホントにみんな優しくて、丹下左膳とおかみさんのやり取りは、楽しいだけじゃなくあたたかい気持ちになれます。
    これで音質がよければ、何度でも気軽に再見するんだけど…。
    なんて、フィルムが無事に残ったことを感謝しなきゃですね!

    ところで、12月もブログDEロードショーを開催いたします。
    作品は「オペラ座の怪人:THE PHANTOM OF THE OPERA」(2004年アメリカ・イギリス製作、ジョエル・シューマカー監督)
    オペラ座に暗躍する怪人と可憐な歌姫の愛憎模様が、豪華絢爛な美術と音楽をバックに展開するミュージカル作品です。
    開催は 12月13日(金)~15日(日)。ちょうどDlife(BS258)で12/14(土)24:00からオンエアがあります。
    DlifeはBS放送が観られる環境なら誰でも観られますので、よかったらまたみんなで一緒に映画で盛り上がりましょう♪
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