私家版オールタイム・ベスト(映画)

    洋画ベスト3「ジーザス・クライスト・スーパースター」

     ←洋画ベスト2「無防備都市」 →(番外)で、今「シェルブールの雨傘」見たわけですが
     基本的にミュージカル映画はあまり好きではない。「サウンド・オブ・ミュージック」は過大評価されすぎていると思うし、「ウェスト・サイド物語」はいまだになにがいいのかさっぱりわからん。「シェルブールの雨傘」に至っては見る気にもなれん(付記:図書館の書架にあったので借りてきた。今晩見るつもり)。

     そんなミュージカル映画に対する偏見を見事に吹き飛ばしたのがこの作品。まあ途中で切るだろうけれど、話の種に十分くらい見てみるか、とNHKBSの放送を見て、最初の十分でその世界の人間になってしまった。

     曲がもう神曲ばかり。のっけからユダの歌う曲にノックアウトされてしまった。ユダ役に黒人俳優を持ってきてシャウトさせるなんて、反則じゃないかと思う。

     イエスの生涯については、新約聖書を読んだくらいの知識しかなく、たしかにあの旧約聖書の裏切り陰謀神の怒り炸裂パターンをくどいほど読ませられた後に登場するイエスはかっこいいよなあ、と思っていたが、この映画のイエスはそれとは違った。正直にいって、かっこよすぎるのである。さすが、「ジーザス・クライスト・スーパースター」とタイトルにつくだけある。

     ユダもかっこいい。あれだけ真摯なユダは金輪際見たことがない。そうか、新約聖書において、ユダを『トリックスター』ととらえるやり方があったのか、といまさらながらに気づいたしだい。いや、ユダにそういった役柄を与えて聖書におけるイエス自体を風刺するというやりかたがあるのは知っていたが、イエスの生涯に正面から取り組んだ映画で、そうしたユダ像を見たのは初めてだった。歌唱力も半端じゃないし、もう、この人が歌うと、ユダとイエスの対立が組曲みたいに見えるのである。

     最初から最後まで、これほど説教くささがなくそれでいて真剣、かつ楽しめるイエスの映画なんてないんじゃないかなあ。そんなことを思った。こんな映画を作ることができたアメリカは、やっぱり度量が深いと思う。

     宗教がかかわる映画なんか面白いわけないじゃん、と思っている人にこそ見てほしい映画。図書館に行けば必ずといっていいほどホコリをかぶっているキリスト教関連の入門書を読めば、もっと楽しめること請け合い。

     それに対して日本の宗教映画と来たらもう……泣けてくるなとほほほ。信者か「と学会」の宗教ウォッチャーしか見ていないんじゃないのか。ツッコミどころ満載の脚本と、変なところにかけるカネがあれば、もっとよそのところに使うべきだろう。これは宗教映画だけではなく、「宗教がネタになっている」すべての映画に適用可能だ、というところが今の日本の映画界のだな……よそう。信者から刺されたらかなわん。

     まあ、たしかに、日本でミュージカル映画「空海」「道元」「稗田阿礼」なんて作られたら、見る気がしないのも事実だけども、そのくらいの覚悟でことをやらなくちゃ、映画館に客足は戻らないぞ。いいかげん、テレビドラマの延長線上で映画を作るのはやめてほしいところなんだがなあ。困ったもんだなあ。
    関連記事
    スポンサーサイト



    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    【洋画ベスト2「無防備都市」】へ  【(番外)で、今「シェルブールの雨傘」見たわけですが】へ

    ~ Comment ~

    Re: いもかるびさん

    そういえば筒井康隆御大にも、「ジーザス・クライスト・トリックスター」なる爆笑パロディがありましたなあ。

    それだけパロディが出ているということは映画にとって勲章のようなものですね。

    このところミュージカルづいているので、「サウンド・オブ・ミュージック」も再見してやろうかなどとも思っています。

    それじゃ空海じゃなくて安倍晴明じゃないですか!(笑)

    あれ、昔どっかで聞いた事のあるフレーズだなーと思って思い出しました。
    昔買ったマリリンマンソンのCD、アンチクライストスーパースターでした。あはは

    サウンドオブミュージックは学生時代無理やり見せられた記憶があります。

    日本ミュージカル映画「空海」主演 ガクト とかどうでしょう。
    格闘陰陽道とかで歌いながら平安京にくる怨霊をばっさばっさやっつける奴。

    Re: 矢端想さん

    「雨に唄えば」は面白かったですね。なんでも雨中のタップダンスシーンは音源を取り忘れたかなんかで、その場にいたエキストラに水を入れたバケツの中でタップしてもらって急場をしのいだそうですな。アシモフ先生によると。

    もしかしたらわたしミュージカル映画好きなのかもしれん……。

    「ベン・ハー」も面白い映画でしたが、ベストからは外すなあ。なんかこう……違うというか。歳を食ったせいかどうか、もう一度見て確かめる必要がありそうです。

    こういう映画つくっちゃったのは実にアッパレですね。・・・と言ってまだ観たことがないのですが(語る資格ナシ!)。
    ミュージカル映画は「雨に唄えば」と「アニーよ銃をとれ」ぐらいしか観た覚えがありません。「雨に唄えば」なんて能天気で好きですが。

    イエス伝ではいつもイスカリオテのユダの解釈が要ですね。「最後の誘惑」の親友としてイエスを厳しく見守るユダは良かったです。太宰の「駆け込み訴え」も大好きです。愛する者は自分の手で始末をつける、みたいな美学が太宰作品には散見されます。たいていがユダは現実人すぎてどんどん浮世離れしてゆくイエスの面倒を見切れず逆切れした、との解釈が多いようですね。モーリヤックの解釈もそんなんだったかな?

    ちなみに、僕の洋画ベスト1は「ベン・ハー('59)」です。(←意外と面白味のないヤツ?)

    Re: limeさん

    ミュージカルというものに対する認識を一変させてくれた映画でした。宗教映画みたいなものか、と敬遠しているのならばぜひともごらんになるべきです。冒頭のユダのシャウトから引き込まれましたので。

    別にキリスト教について知らなくても、じゅうぶんに楽しめる伝記映画だと思います。

    さて、今晩は「シェルブールの雨傘」を見るぞ。半分自暴自棄になっているけど見るぞ!(笑)

    私も、ミュージカルはどうも苦手で。
    入り込めば楽しいのでしょうが、それまでに、弾き飛ばされて(逃げ腰に)なってしまって。
    でも、ポールさんも魅了させたミュージカルとは、興味深い。

    宗教ものと聞くと、やはり逃げ腰になってしまうのですが、ユダとキリストならば、なにかちょっとドラマ性を感じます。
    キリスト教については、宗教画をベースにしか知識がないのですが^^。
    もう少し、勉強してみたくなりました。

    そういえば、中学生の時見た映画「カインとアベル」、めちゃくちゃ感動した記憶があるんですが、内容を忘れました。もう一度見てみるかな・・・。
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【洋画ベスト2「無防備都市」】へ
    • 【(番外)で、今「シェルブールの雨傘」見たわけですが】へ