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    私家版オールタイム・ベスト(映画)

    洋画ベスト4「情婦」

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     ミステリ映画ではこれと「十二人の怒れる男」のどちらを入れるかで悩んだ。結局こっちにした。なんたって、ミステリ的な趣向と、娯楽作品としての面白さの質が違う。原作のアガサ・クリスティーはうますぎるから嫌いなのだが、本作もクリスティーのうまさが光りに光っている。くそうこういうミステリが書きたい。それで演出が、娯楽映画を撮らせたら他に出るものがない職人的監督のビリー・ワイルダーときている。面白くならなかったらウソだ。

     主人公の老弁護士がかっこいい。いや、かっこいいというより、頼もしいのだ。オーバーアクションに次ぐオーバーアクションでコミカルな雰囲気を漂わせながら、それでいて締めるところはきっちりと締めているので、ディクスン・カーのヘンリ・メリヴェル卿みたいな頼もしさがあるのだ。

     対するヒロインのほうがこれまた。マレーネ・ディートリヒの作品でまともに見ているのはこれくらいだが、その演技にはほれぼれしてしまう。なにを考えているのか最後までわからないところがまたいい。まあ、最後までわからないのは、原作のクリスティーがうますぎるからであって。くそっ、どうしてこんなアイデアを考えつくんだまったく。イギリスの女流ミステリ作家は化け物か。

     人間ドラマよりも、単純に見えた事件が二転三転する法廷でのやり取りが見どころだろう。クリスティーはほんと、うますぎて嫌い。見た後で絶対、トリックや趣向を人にしゃべりたくなる映画だが、それをしゃべるとこれほど台無しになる映画はない。まだ見たことのない人がうらやましい限りだ。未見で原作も読んでいなかった場合、目の前にちらつかされていたこのラストシーンを見抜けるものは皆無だろう。

     クリスティーはその人生において、自分が書いた作品を多数映画化されたが、そのひとつひとつについてミス・マープルの事件にポアロが放り込まれたりする無法ともいえる改変をくらったようで、『自分の原作の映画が酷評されるたびに喜んだ』という伝説すら残っているが、本作は別だったそうだ。そりゃそうだ、原作が尊重されたうえ、こんな面白い映画にされたんだったら誰だって喜ぶ。けれど、この邦題を聞いたら泣くか激怒するだろうなあ。なにせ『情婦』だからなあ。原作どおりに『検察側の証人』としてあげればよかったのに。

     今もシリーズが続行中である「名探偵ポワロ」シリーズはどう思うんだろう。徹底的に原作に忠実だし、デヴィッド・スーシェもはまり役なのだが、なにせあの『アクロイド殺し』をテレビドラマにしちまったもんなあ。個人的には、意気込みは買うけれど、あれには手を触れないほうがよかったんじゃないかと思うんだがなあ。天国のクリスティーはどう思っているんだろうなあ。同様に、NHKのアニメ「ポワロとマープル」はどう思っているんだろうなあ。なんとかいう新宗教のなんとかいう教祖も、妙な霊言ばかり降ろしていないで、こういう文化的なことに力を使うべきじゃないのだろうか。ウソです。
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    ~ Comment ~

    Re: 宵乃さん

    正直な話、スーシェのポアロは、どうやって「アクロイド」と「オリエント急行」をやるのか前から興味しんしんでした。まだオリエント急行は未見ですが、聞けばそうとうな低予算だそうで、よくやったなあ、とスタッフのがんばりぶりに拍手したいです。

    あのメンツで「カーテン」まで見られるとは、20年前は思いもしてませんでした。絶対頓挫すると思っていたので。がんばれスタッフ!

    洋もの2時間推理ドラマでは、「フロスト警部」シリーズが面白いですよ。DVDも出てるようですが、行きつけのレンタル屋に並んでないんですよねえ。ミステリチャンネルで最終回まで見たからいいといっちゃいいんですが……。

    こんにちは!

    >主人公の老弁護士がかっこいい。いや、かっこいいというより、頼もしいのだ。

    ですよね~。最初は可愛いおじいちゃんくらいに思ってたのに、仕事となれば別人のようで痺れました。

    >『自分の原作の映画が酷評されるたびに喜んだ』という伝説すら残っているが、本作は別だったそうだ。

    お~、クリスティのお墨付きということですか。さすがワイルダー監督です。
    邦題については、観た後には意外と納得できたものの、パッケージとあわせて借りにくいったらないですよね。知らない頃は(中高生くらい)このタイトルで観るのを避けてました。

    「名探偵ポワロ」シリーズは今年、本国で最終シリーズを放送しているみたいですね。結局、すべての作品を映像化できたのかな?
    スーシェのポワロが一番好きなので、最後まで頑張ってほしいです♪

    Re: LandMさん

    まあ見てくれる人がいるだけいいというのは道理ですが、クリスティ女史はいわゆる「原作レイプ」には賛成しかねる、という立場だったようです。

    横山先生については……あそこまで達観していればさすがだと思います。

    原作者がどう思うかは原作者次第なんでしょうけどね。
    しかし、無視されるよりどんな形であれ見てくれるほうが幸福だとは思いますけどね。

    横山光輝は好き勝手してくださいというスタンスだったらしいですけどね。

    Re: 矢端想さん

    レンタルビデオ屋のカード、年会費を取るのがアレですよねえ……。一時期年会費を払うのが嫌でカードを作らなかったこともありましたし。

    それに比べてみれば、図書館は金を取らないのでわたしにしてみれば天国みたいなものであります。嗚呼貧乏人。

    「十二人の怒れる男」も好きなんですけどねえ。ひとつひとつ証拠を推理と常識で覆していくところなんて、ミステリファンにはたまらないものがあります。ヘンリー・フォンダかっこいいし。アメリカ人のひとつの理想像ですな。

    実際の陪審制はこうはいかないことをきちんと糾弾している映画も作っているのがハリウッドの懐が深いところであります。今度借りてきて見ようっと。

    何かの齟齬で会員カードが失効して以来ビデオをレンタルで観ることがなくなってしまったのですが、世の中にはまだまだ面白い映画がいっぱいあることを思うと、やっぱりカード作り直そうか、という気分になります。「逆襲のシャア」も通してきちんと見直したいし。(なんの話だ)

    無罪だよ・・・ああ、無罪だよっ!・・・「十二人の怒れる男」の方は観ました。昔、社会心理学の先生の推奨映画のひとつだった事がずっと頭にあったので。観たのは卒業後10年以上経ってからですが。
    冤罪ものでは「牛泥棒(オックスボー事件)」('43)という西部劇がありますが、結局何もできなかった主人公(?)のヘンリー・フォンダが後日「十二人の~」で奮起して仇をとった、という気がしてなりません。
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    映画「情婦」観ました

    製作:アメリカ’57 原題:WITNESS FOR THE PROSECUTION 監督:ビリー・ワイルダー 原作:アガサ・クリスティ ジャンル:★ミステリー/サスペンスロンドン。金持ちの未亡人を殺した容疑者レナードの依頼で、病みあがりの敏腕弁護士ロバーツが弁護を引き受ける。彼はレナードが犯行時刻に帰宅していたと証言できる唯一の証人、妻クリスティーネをあえて呼ばない事にするが・・...
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