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    私家版オールタイム・ベスト(映画)

    洋画ベスト9「吸血鬼ノスフェラトゥ」

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     あれだけホラー短編を書いているにもかかわらず、ホラー映画というものはあまり好きではない。なにせストレスにもショックにも弱すぎるほどに弱いのだ。そんな中で、唯一好きなホラー映画(怪奇映画といったほうがいいか)が、この「吸血鬼ノスフェラトゥ」なのである。いや、「カリガリ博士」も好きだから唯一というわけでもないか。

     ノスフェラトゥといっても、単に版権が下りなかったからこんな名前をつけているだけで、ストーリーとしては「吸血鬼ドラキュラ」そのものである。ある意味、他のドラキュラ映画などよりよほど原典に忠実に作ってある。

     ムルナウ監督による無声映画なのだが、まず、吸血鬼がすごい。普通のドラキュラ映画だったら、貴族的な要望を持つ美男子がその役に当たるところだが、この映画でノスフェラトゥ、オルロック伯爵を演じるマックス・シュレックは、どこでこんなすごい顔の人間をスカウトしてきたんだ、と思うくらいに異様な形相をしている。それがまた実に映画に味をもたらしているのだ。

     見たのは着色版(フィルムに色が着色されているのだ。とはいえフルカラーというわけではない。画面の色が黄色くなったり赤くなったりするのだ)だが、そのモノトーンで描かれる悪夢のような世界は、見ていてすばらしかった。不安を掻き立てるカットの数々が、実に効果的に差し挟まれるのである。ドイツ人らしいというかなんというか、美術の雰囲気からして陰鬱荘重、不気味さにさらに拍車がかかる。演技からしてどこか暗く重い。ものすごく重厚で真面目な怪奇映画なのだ。

     そしてくどいまでに繰り返されるペストの噂とネズミの映像。やっぱりひどい被害をこうむった国には、何年経っても消えないんだろうなあの悪夢は。気分がどんどん盛り上がっていくのがなんとなく後ろめたい。

     残念ながらヘルシング教授に当たる役の人はあまり活躍しないで終わってしまうが、ラストのヒロインとオルロック伯爵との対決の場面は、息を飲むような緊迫感と美しさに満ちている。だまされたつもりで一度見てほしい。

     しかし、こんないい映画を撮る国の人が、どうしてナチスなんかに傾倒してしまうのだ。まったくもって、歴史の皮肉を感じる。

     だが、見方を変えれば、こうもいうことはできないだろうか?

     どうしてこんな面白いアニメを撮る国の人が、なんとか主義に傾倒してしまうのだ。まったくもって、歴史の皮肉を感じる。そんなことを、後世の人間は噂しているかもしれないのである。気をしっかり持って、寛容な精神だけは大事にしていきたいものである。……なんか自分がとてつもなく時代錯誤なことを書いているような気になってきた。日本がどんどん自国民にとってすら危険な国になりつつあるのではないか、そんなことまで考えてしまう。

     まあ周囲の国々はもっと行くところまで行っていそうだが。
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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    ドラキュラは、原作小説の「吸血鬼ドラキュラ」が実は今読んでもなかなか面白いんですよ。ホラーというよりは、波乱万丈の冒険小説といったおもむきが強くて、ヘルシング教授たちが姿を見せない吸血鬼を追い詰めて行くところなんか、どきどきしてたまりませんでした。吸血鬼小説では、隠れた名作として「奴らは渇いている」なんてのもお勧めです。「呪われた町」読まなくちゃなあ……。

    ドラキュラは確かに真面目に見たことないですね。
    結構リメイクが多いですけどね。
    こういう正統派映画は確かにファンタジー物書きの私も見たほうがいいですねえ。
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