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    私家版オールタイム・ベスト(映画)

    洋画ベスト10「戦艦ポチョムキン」

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     現代における映画の教科書だそうだ。そんなことはどうでもいい。この映画は面白いから面白いのだ。トートロジーだがそれがどうした。

     今の視点で、心を無にして思えば、こんな演出の映画を無声映画時代に撮れたということで、エイゼンシュタイン監督や当時のロシアの知的レベルに尊敬の念を払うところである。しかし、色眼鏡でしか見られないのだろうなこの映画は。なぜかというと『共産主義』というやつが呪いのようにかぶさってくるからだ。そのせいで、「この映画は面白いから面白い」といっただけで、危険人物視されかねないのだとほほほ。

     今のわれわれは、「全部スターリンが悪いんだ」みたいな発想がなにも解決しないことも知っている。スターリンが死んだ後も、ソ連の崩壊まで延々何十年もの時間がかかったし、その過程において、何人もの罪なき人が泣くことになった。

     だがしかし、坊主憎けりゃ袈裟までなんとやらの理屈に基づいて、共産主義体制のもとで作られたものはなんでもかんでも悪い、みたいな風潮が形成されてしまったのは納得がいかん。面白いものは面白い、つまらぬものはつまらぬ、という知的活動抜きで貼られたレッテルほど非文化的なものはないのではないかと思う。

     そういう意味で、「戦艦ポチョムキン」は、「面白いから面白い」といえる作品であると断言する。徹底したリアリズムと湧き上がる不安感、有名な虐殺シーンと、そこから反乱に至るまでをねっちりと重厚なドラマとして描き出したのはいくら賞賛しても賞賛しきれない。

     だから「イワン雷帝」の第一部も見たいのだが、レンタル屋にもないしなかなかCSでもかけてくれないし、とほほほである。

     スターリニズムと当時のロシア映画人たちの関係を克明に記したノンフィクションが図書館にあったのでぱらぱらめくってみたが、内容は暗澹とせざるを得ないものだった。左右を問わず、独裁的権力者のかわいがる文化というものにろくなものはない、ということであろうか。当たり前のことだが。

     そして今の日本を見ると、だんだん当時のロシアに近づいていくような気がしてならない。アニメやゲームには規制がかけられ、文化は一色に染まりつつあり、挙げ句の果てにはアマチュア作家の自由な祭典であるはずのコミックマーケットにすら文化的な妨害の手が伸びる始末。

     ニーメラーの詩句が思い出されるが、あれは、思い出したときにはもうアウト、という意味でのリトマス試験紙みたいな詩句なのだ。

     高度情報化社会で、自由な言論は果たして保証されるのか? 炎上をちらつかせる、別な形でのテロを横行させるだけにとどまるのではないか? そういうことを考えるとだんだんと眠れなくなってくるのである。全体主義はすぐそこまで、風紀の是正、綱紀の粛正の美名に隠れてやってきているのではないか?
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    ~ Comment ~

    Re: 矢端想さん

    塩水で洗っても蛆のわいた肉では立ち上がれません(笑)

    思えば初めて見た無声映画はこれだったなあ。NHKの放送だったなあ。また見たいなあ。

    あ、それと「ベン・ハー」ウン十年ぶりに見直しました。アカデミー賞をとるのもわかる面白い映画でしたが、マイベストには入れにくい映画でもありました。詳しくは後で。

    おおー、サイレントだけど熱い映画ですねー。
    学生時代、近鉄劇場(大阪)屋上での上映会を観に行きました(ローカル)。
    ロシア人はもともと文化レベルが高いと思います!
    よくわからんヘンな感性も好きです。

    さあ、今年もメーデーですよ。
    Это есть наш последний и решительный бой !!

    エータ イェスチ、インターナショナル! 起て飢えたるものよ!
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