「ショートショート」
    その他

    作家パウル・ライトニングの晩年

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    「あなた」

    「なんだい。今日のぶんの薪はもう割ったが」

    「薪のことじゃありませんよ。ジョーンズのことですよ」

    「ジョーンズがどうかしたのか」

    「今晩、うちに人を連れてくるらしいんですよ。だからあなた、しゃっきりなさって」

    「人?」

    「女の子ですよ」

    「あいつ、いつの間に。成長するもんだな、人間。で、相手は誰だ」

    「魚屋のゴードンさんのお嬢さん」

    「……ふうん。いい娘じゃないか」

    「あたしも、そう思ってるんですよ。だから、ね、あなた」

    「わかってるよ。いちばん上等な……いや、普段着の中でこざっぱりしたのを出しておいてくれ。いかにも待ち構えていました、みたいに見えないようなやつ。料理はうまいものをこしらえてくれよ」

    「ビルに続いて、ジョーンズも独立するのね」

    「少ないけれども、助けてやるくらいの貯えはあるさ。それに、ジョーンズもしっかりしたやつだ。自分ひとりでなんでもやっていけるだろう」

    「あなた、寂しくならない?」

    「きみがいるじゃないか。それに、村の人々も、孫のパウルもいる。きみ、寂しいかい?」

    「……寂しくないわ。これで寂しいなんていったら、罰が当たるわね」

    「きみはわたしの宝物だよ。小説を取るか、きみと結婚してまじめに働く道を取るか迫られたあの日、きみを選んでほんとうによかった。ありがとう。愛してる」

    「あなた、そのせりふは、今晩のジョーンズとお嬢さんのために、取っておいてくれない?」



    パウル・ライトニング(1873~1938)作家、批評家。1893年、処女長編「赤い雨」をはじめとする数編の小説と文芸批評を発表するも文壇から完全に黙殺される。以後は寒村にひきこもり、貧困と失意のうちに晩年を過ごす。「赤い雨」が認められたのはその没後十年を経てからで……
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    ~ Comment ~

    Re: 面白半分さん

    ちと遊びがすぎたかな?(^^;)

    なるほどっ!

    Re: 面白半分さん

    申し訳ない(笑)

    名前だけでわかると思ったんで。(「ライトニング」はドイツ語でなんというか調べてみよう!(笑))

    Googleで検索してしまった。
    どうしてくれるんですかあ!

    補足

    わかりにくい作品の気がしてきたので補足。

    このショートショートは、「本人は現状に満足しきっているにもかかわらず、周囲や研究者から勝手に『貧困にある人生の敗残者』みたいにみなされ、辞書にまでそう書かれてしまった男」の話であります。

    ランボーもメルヴィルも、筆を折った後の生活は悲惨なものだったとわれわれは考えがちですが、もしかしたら実際はそれほどでもなかったのかもしれない、と思うところがありまして……。

    だからもちろん、作家パウル・ライトニング氏についての記載は、完全にわたしのこしらえた架空の人物のもの、デタラメです(笑)
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