「ショートショート」
    SF

    ジョン・ケージとともに送る第三次世界大戦

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     もはや事態はのっぴきならないところまでさしかかっていた。地球を二分する勢力がともに抱えた有形無形のさまざまな社会不安は、なにか思い切ったことを起こさねば解消できないレベルにまで達していたのだ。解消手段に敵陣営との「戦争」、総力戦にまで至る戦争が採択されたのは、ある意味仕方のないことだった。

    「初手はサイバー攻撃からですな。敵勢力の軍事的、民生的設備をことごとくストップさせるのです。その混乱に乗じて宣戦布告を発し、主力部隊を動かして急襲をかけるのが、もっとも有効な作戦でしょう。戦略コンピュータとの意見も、それで一致しました」

     参謀総長の意見に、大統領はうなずいた。

    「敵側も、われわれと同程度の戦略コンピュータを有しているからな。宣戦布告後、ただちに相手のそれを止めないと、こちらの首が絞まりかねん。こちらの戦争準備だけは入念に整えておきたい。戦略コンピュータに、臨戦態勢を整えさせておいてくれ。整い次第、攻撃をかける」

    「はっ」

     参謀総長は一礼し、電脳化された自分の脳の一部から、戦略コンピュータにアクセスし、大統領の命令を伝えた。

     戦略コンピュータは、五秒とかからずにサイバー攻撃態勢を整えた。結果として、大統領は倒れた。参謀総長も倒れた。兵士が倒れ、労働者が倒れ、いまだ電脳化手術を受けてもいなければネットにつながってもいない乳幼児を除く全ての国民が倒れた。敵陣営の設備を短期間で無力化するためのプログラムを組むのは至難の業だ、と判断した戦略コンピュータは、電脳化された全国民の脳細胞をつないで、そこで恐るべき量の計算を行なわせたのだ。組み上げられた攻撃プログラムは、敵陣営に向かい即座に放たれた。

     予想もしない攻撃を受けた敵陣営の戦略コンピュータも、防御プログラムを組むために、電脳化された全国民の脳をつないで計算を行なわせた。その計算には、全国民の情報処理能力をもってしても足りないかと思われた。だが、戦略コンピュータはその不可能事をやってのけた。

     プログラムとプログラムの争いは、一進一退の攻防を続け、ついに互いの戦略コンピュータの機能を完全に止めて相打ちとなった。

     かくして戦争は、四分三十三秒で事実上の終結をみた。電脳化された国民の脳はひとつ残らず、プログラム同士の戦場と化して完全な焦土となったのだ。聞いて理解するものが誰もいなくなった地球上に、宣戦布告のテレビ映像だけが激高した調子で流れていた。



    BGM:ジョン・ケージ作曲、演奏「四分三十三秒」
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    Re: 矢端想さん

    ジョン・ケージの曲ですが、

    どんなものでも、

    「シンプルなものがいちばん難しい」のです(笑)

    しかしシングルカット盤はほしくない曲だな(^_^;)

    未来の戦争なんておおかたそんなことでしょうよ(笑)。

    > 4分33秒
    どんな楽器初心者にも易しい素晴らしい曲ですね。人前で演奏する度胸をつける訓練には最適だと思います。

    > ヌートピア国際讃歌
    収録CD持ってます(笑)。続けて聞いた後でタイトルリスト見て「あれっそんな曲あったっけ?」と最初思いました。

    Re: 面白半分さん

    ジョン・レノン、やっぱりすごい男だと思います。

    その曲(?)は知りませんでしたが、批判精神だけはビンビン伝わってきますね(^^)

    しかし、レノンに劣らず、ピアノに向かって4分33秒座り続けたジョン・ケージもロックな野郎だぜ(^^)

    ジョン・レノンに
    「ヌートピア国際讃歌」という作品があり
    これは 6秒間の無音状態 を レコードに刻んでいます。

    ヌートピアとは領土も国境もない世界であります
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