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    ささげもの

    矢端想さんに捧げる特別企画「エリー×メカエリー」

     ←鳥かごと妖精 →理想の映画
     グルンワルイデの恐るべき力の前に、マジカルエリーは敗れた。ぼろぼろになった身体が、砂漠と化したアリゾナ準州の大地に、力なく倒れ伏していた。

    「終わりかえ? その程度で終わりかえ? 口ほどにもないではないか、マジカルエリー?」

     声は空から降ってきていた。天をもつく巨大な身体。グルンワルイデは、エリーの姿をコピーした「ダークエリー」となって最終決戦を挑んできたのだった。その膨れ上がった悪のエネルギーは、エリーの魔力を完全に飲み込み、跳ね返したのである。破壊の力を正面からもろに受け止める形となっては、ひとたまりもなかった。

     翼を失い、倒れたエリーの手から、SAAが落ちた。

    「エリー!」

     スリーピー・ジョンが叫んだ。その声に、エリーの右手が、わずかだが、ゆっくりと動いた。銃を探しているのだ。

    「あたしは……絶対に……あきらめない!」

     右手は取り落としたSAAをつかんだが、その言葉が虚勢であることは、誰の目にも明らかだった。エリーは立ち上がろうとしたが、またも大地にくずおれた。それでも砂を噛みながら、エリーは叫んだ。

    「あたしは、あきらめない!」

     そのとき、誰か第三者の声を、その場でまだ生き残っていたものたちは、はっきりと聞いた。

    『……そうだよ、エリー。あきらめちゃダメだ』

     少女の声がした。

    「誰? 誰がしゃべっているの?」

    『宇奈月忍子。きみも知ってる宇奈月範子の妹。そんなことより、ボクたちからのきみへの贈り物が、つっかえているんだ。さあ、立って、変身の言葉でこの時空に穴を開けてくれないか?』 

     渾身の力で、エリーは立ち上がった。手にしたバッジを高くかかげ、叫んだ。

    「……マジカルメタモルスタンピード! 荒野に開く一輪の花、プリティマーシャル・マジカルエリー!!さーあ、アナタの運命デッドオアアライヴ!?」

     なにか巨大な力が、エリーを包み込んだ。気がつくとエリーは、奇妙な機械に囲まれた、座り心地のいい椅子に身体を支えられていた。

    「これは?」

    『きみたちの戦いで時空が歪み、ぼくたちの世界では今や普通の人間は誰も踏み込めないノーマンズランドになってしまった、もとアリゾナ準州の砂漠から掘り出した、かつてきみたちが倒したメカエリーの残骸をもとに、宇奈月財閥が総力を上げて作り直した、プラスエネルギー増幅ブースターロボット、「機リー」だよ! どうだい? 巨大な機械式の自分自身のコクピットにいる気持ちは?』

     エリーは機械に目をやった。手元にあるレバーをぐいとにぎる。

    『そう、その調子。二十一世紀のヒューマンインターフェースの粋を凝らして作った操作機器だ。操作法など知らなくても直感さえあれば、エリー、このロボットはきみの思いどおりに動かすことができる! やれ、エリー、やっちゃえ!』

     グルンワルイデは叫んだ。

    「なにをごちゃごちゃと! そんなおもちゃ、こうしてくれる!」

     ダークエリーの強力な悪のエネルギー波の洪水が機リーを襲った。エリーは反射的にレバーを引いた。すべてを破壊する闇の力が、機リーの身体を包み込む。機リーの周囲で砂塵が吹き飛び、大地にクレーターが開いた。

     機リーはびくともしなかった。

    「すごい……」

     エリーはコクピットでつぶやいた。

    『いいかエリー、あのグルンワルイデは、作者の持つマイナスエネルギーの集合体だ。この「機リー」の増幅機で増幅した、きみのプラスエネルギーをぶつければ、勝てる!』

     エリーは勇気を出して操縦桿を握り、叫んだ。

    「いくよ、機リー! マジカル・シングルアクション、ピースメーキング!」

     機リーは腰から大型のSAA型投射機器を抜くと、ダークエリーに向かい素早く構えた。

    「スタンピード!」

     SAAから虹色の光、プラスエネルギーの奔流が吹き出し……。

     ダークエリー、いやグルンワルイデは跡形もなく消滅した。



     宇奈月忍子は、エリーの想像よりもまだ幼さの残る少女だった。ただし、その瞳だけは、底知れない知性により炯炯と輝いていた。

    「機リーは返してもらうよ。こんな世界にあっちゃ、いけない機械だからね」

     まだ幼さの残る宇奈月忍子は、エリーの手を取ってそういった。

    「もちろん、ボクがいる世界にも、あるべきでない機械だ」

    「どうするの?」

    「この機械は発明されなかったことにするのがいちばんだ。もともと、ボクの姉と友人が、作者の持つマイナスエネルギーのせいで時空を飛び越えてこの十九世紀アリゾナへ来たことが、マイナスエネルギーの蓄積を生み、ホールマン博士やグルンワルイデを生み出すもととなったんだからね」

    「あたしはどうすればいいの?」

    「機リーのもとになったメカエリーを開発するより前に、ホールマン博士を逮捕してくれればいい。残りはこっちでなんとかする」

     それだけいうと、宇奈月忍子は機リーの中へと入っていった。

     巨大なエリーは立ち上がった。

    『さようなら、エリー』

     空間が裂けた。機リーは、登場したときと同様、唐突に消えた。

     エリーは空をしばらく眺めていたが、SAAの残弾を調べると、ホールマンのアジトに向かい、歩き始めた。



     二〇一三年五月一〇日。

     天才ゆえの気まぐれから、のどかで平穏な米国西部のアリゾナ州を訪れていた、宇奈月財閥の令嬢にして万学の天才、当年十二歳の宇奈月忍子博士は、地面から古い歯車をひとつ拾い上げた。

     その日の宇奈月忍子はなぜか一日中上機嫌だった。随行の研究員が首を捻った。

    「宇奈月博士、いったいなにがあったんですか?」

     宇奈月忍子は珍しく笑顔で答えた。

    「今日は、旧暦で、なんの日だと思っているんだ? ボクだって楽しんでもいいだろう?」

     ヨーロッパ生まれの研究員にはなにが楽しいのかさっぱりわからなかった。



     ※ ※ ※ ※ ※



     善良な読者にはいったいなにがどうなっているのかさっぱりわからないと思いますので、矢端想さんのブログから、過去の経緯を。

    「妄想の荒野 2010年12月03日記事」

    「妄想の荒野 2011年04月01日記事」

    「妄想の荒野 2012年04月01日記事」

    「妄想の荒野 2013年04月01日記事」

     宇奈月忍子については、拙ブログのショートショートシリーズ「範子と文子の驚異の高校生活!」をお読みいただければ、すぐに……でもないか……ご理解いただけると思います。

     単に、「いくよ、機リー!」がやりたかっただけという話もありますが……。

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    ~ Comment ~

    Re: 矢端想さん

    ええまあ、基本的な方針として、よそのブログでもコメント欄で書いた宣言は可能なかぎり果たすことにしてまして(^^)

    ちなみにこの小説、やはり「正しい日時」に発表するべきかな、と、今日この日に合わせるために突貫工事を。やっぱり突貫工事だけあって、アラがいっぱい出てくるなあ(^^;)

    え? 「うるとらすーぱーひーろーぷりてぃーず」? 知らんなあ(大ウソ(笑))

    また変な企画があったら誘ってください(笑)

    Re: 荒野鷹虎さん

    ご丁寧なご挨拶いたみいります。

    ちょっと未だに引きずっている左翼くずれの小説ブログですが、お気に召しましたらまたどうかいらしていただきたいものであります。

    テキストだけはいっぱい用意してありますので!

    その気持ち、受け取ったよ!

    サプラーイズ!!驚いたのなんの。

    ほ、本当に書きやが・・・書いてくださるとは!ありがとうございます!
    アリゾナは「砂漠と化」さなくてもおおかた砂漠ですけど(笑)。

    マジエリーネタとメカエリーネタをいっしょくたにし、「荒野の範子文子」まで関連付け、それをチート忍子で解決するという力技はお見事!(もちろん賛辞)
    そして「メカエリー」のあとは「機リー」! 「機リー」って・・・(爆)
    最後は「くらえこの愛」じゃなかったんだ(笑)。

    これはやはり「コミカライズ」しなくては!
    とりあえず、ウチでも紹介させていただきます!(宣言)

    ・・・しかしよくもまあエイプリルフールネタを今頃堂々と・・・5月10日の旧暦ってなんだよ・・・・・・あっ。

    はじめまして!

    ご訪問有難う御座います。
    素敵なブログとかんどういつぃました。荒野という文章が印象的ですねーいずれはランクを抜いてくださる事を祈っています。私は年でですので。。ガンバってください、宜しくねー。!有難うございました。
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