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    「ショートショート」
    SF

    雲を食べる話

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    「おなか、すいたねえ」

     ぼくは、隣で同じように膝を抱えて空を見ている子に話しかけた。

    「うん……」

     その子も、ぼんやりと答えた。おなかがすいて、まともにものが考えられないのだろう。

     空には、雲が浮かんでいた。

    「あの雲が食べられたら、いいのにねえ」

    「うん。でも、どんな味がするんだろう」

    「きっと、とってもおいしいんじゃないかな」

     ぼくとその子は、そんなことを話し合った。

     するとそのとき、空のかなたから声がした。

    「雲が、食べたいか」

     ぼくはびっくりした。だけど、勇気を出して、答えた。

    「うん、食べたい」

     空から聞こえてくる声は、やさしく、続けた。

    「それならば、お前たち人間に、雲を食べる力を授けよう。皆にも、教えてやるのだぞ。独り占めは、いかんからな」

     そして、ぼくは空に向かって手を伸ばし、雲のかけらをちぎり取り、口に入れ、食べた……。



     …………



    「きみたちなのか、最初に雲を食べたのは」

     国連のおじさんは、そういうと、がっくり肩を落とした。

    「飢餓で苦しんでいるきみたちの国を思うと、その選択を非難することは、わたしにはできない。むしろ、当然のことだと思う。しかし、雲には、『雨を降らせる』という大切な働きがあるんだ。きみたちの真似をして、皆が雲を食べ始めたために……見てくれ」

     おじさんは、ブラインドを開けて、窓の外を示した。

     雲ひとつない青空が広がっていた。

    「地球上の貧しい地域を中心として、雲もなければ雨も降らない地帯が広がっている。このままでは砂漠になってしまう。だからきみたちには、雲を食べるのをやめてもらわなくてはならないんだ。わかるかね?」

     ぼくにはわからなかった。また、空にあのおいしい雲がかかったら、誰よりも早く手を伸ばして、食べるんだ。

     お説教じゃ、おなかはふくれないもんね。
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    ~ Comment ~

    Re: レバニラさん

    そういや聞いた話ですが、「ガキ刑事」の山上たつひこ先生は、辞書の「女」という文字だけで(以下削除)

    それにしても、虹とか雲とか、食べたらどんな味がするのか、と思うときがあります。幼少時に読んだ童話では、むちゃくちゃうまいそうですが……。今考えるとあれはどう見ても死の隠喩だったな。うむむ。

    そういえば、自分もオカズに飢えていた小学生の時分に、窓の外から見える雲の形が女性の姿に見えた瞬間に自慰をした記憶が・・・ごめん嘘。

    でも辞書でHな言語を探して興奮してたくらいだから、本当に雲がそういう形に見えたならやってた可能性は高いですね、
    だから豊かな時代に生まれた自分でも、この物語に登場する少年たちの気持ちは充分に分かる気がします。

    Re: 矢端想さん

    わはは。まあわたしも不道徳なところは不道徳ですので(笑)。

    公衆道徳は守りましょう(笑)

    > 赤信号で道路を渡ったり
    やっぱりそこにきたか! クルマがこなければわたってもいいんだよ(笑)。大阪じゃ普(略)
    誰の利益にもならない正直さは無意味だと思うのであります。子供の頃、万事にバカ正直すぎた反動で少し不良になってしまった部分もありますが。世の中なんてこんなもの、っていう達観。さすがに子供が見ているときなど渡らずにグッと我慢するのですが。
    結局は嗜好とかこだわりが人それぞれってことでしょうね。

    なんにせよ、信号は守った方がいいことは認めます、ハイ。

    Re: 矢端想さん

    どんなトラブルに巻き込まれるかわからないので、みんながしている不道徳には目をつぶってしまうヘタレだったりします(汗)

    それでも赤信号で道路を渡ったりはしたくありません(^^;)

    こうして考えると、しょせん「公衆道徳」とは「趣味嗜好」ではないのか? などという結論に達してしまったり(笑)

    僕は、皆が当たり前のようにやってる不道徳にいつもひとりムスっとして周りからは「何をひとり怒ってるんだ?」、と変人扱いされる類の男です。でもすでに、あまり我を通すとギクシャクして「和」を乱してしまうことも学んでいるので、結局嫌われたくなくてみんなに同調しているヘタレな男です。これも社会人としての処世術です。
    あと、肉体的煩悩が強くて結局「まあいいか」と思っちゃうのもネックですが。

    ホームのベンチに残された空き缶のためにそこをみんな避けて座るとか、本当にイラッときます。でも恥ずかしいので(自意識過剰)、人が減ったときとか電車に乗る直前に、できるだけ自然体を装いパッと拾ってパパッと捨てに行きます。

    Re: マーサさん

    腹が減った人の前に食い物をぶら下げて、「ガマンしろ」っていわれても難しいですよね。

    「やめるのは 自分以外の 誰かから」とほほほ。

    Re: YUKAさん

    雲だけの話でもないですね。人間は雲に手を出してしまいました。石油、石炭、天然ガス……どうしてもペシミスティックになってしまいますね。

    とほほほ。

    Re: ダメ子さん

    自分を見ていてつらつら思うのですが、人間、易きに流れるものなんです。雲が食べられるのなら、毎朝ついひと口つまむという誘惑に抵抗できると思えません。悪魔の思うがままです。とほほほ。

    Re: 火消茶腕さん

    「神様のふりした悪魔のしわざ」です。ほんとうの神様だったら、額に汗してパンを獲よ、というでしょう。

    もっとも、ああいう状況の子どもたちにそれをいうのは酷すぎるのも事実ですが。

    雲がないなら作ればいいじゃない

    そういえばドラゴンボールZで、あの世にいる悟空が
    「ハラへったなあ~。仕方ねえ、これでも食うか!」
    とか言って、ヘビの道の雲をガツガツ食ってたのを思い出しました。

    それはともかく、皆がしてはいけないことをしている場合、
    みんなもやってるし…と思うか、
    だからこそ自分はやらないと思うか、というところですよね。
    一人から始まったのと同じように、
    一人がやめれば、次第にやめる人も出てくるのかなあと。
    まあいざ実行するとなると、なかなか難しいわけですが。

    こんばんは^^

    雲の代わりになるものってなんだろうって考えて
    海の水だの空気だの言われても地球は滅びるなぁと。

    どっちにしても滅びるしかないのか?^^;

    皆がやるから自分もやらざるを得ない…
    そうやって人類は滅んでいくのだろうなあ
    なんて思う私は悲観的過ぎ?

    読ませていただきました。

    この空の彼方からの声って、どう考えても悪魔のしわざにしか思えないんですけど。神様ですか?

    人間だけが滅ぶならまだしも、地球の生態系がめちゃくちゃになってしまう。

    Re: LandMさん

    ハネス・ボクという人に「夢の国を行く帆船」というファンタジーがあり、そこの主人公は、大恐慌時代のなにも買えない世界で、「夢」を食べておなかをいっぱいにするそうであります。

    ファンタジーの名作だそうですが、まだ読んだことがありません。それを頭に置いて書いたのに、どうしてこんな夢も希望もない作品になっちゃったんだろう(^^;)

    Re: レルバルさん

    そ、そんな夢も希望もないことを(ってわたしがいうか(^^;))

    霞を食え!!って感じになりそうですけどね。
    こうなると。ああいや、空気を食え!!ですかね。
    土だけを食べて生きていく人もいるので、それはそれであながち無理ではないかもしれませんね。

    もうこれは空に戦艦浮かべて伸ばしてくる手を片っ端から叩き落とすしかないですねぇ……。
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