名探偵・深見剛助(冗談謎解きミステリ掌編シリーズ)

    大陸棚鳴動殺人事件

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     いったい誰が、こんな面倒くさい殺人事件を起こしたんだ。

     赤塚刑事は歯噛みをする思いだった。

    「深見さん、現場は完全な密室状態です」

     シリーズ名探偵である深見剛助も、同じく苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

    「見りゃわかります」

    「そりゃそうでしょうが、説明くらいさせてください。犯行現場は、ごく小さな部屋です。もとは、工具などが入れてあったそうです。これが、現場を映し出した写真です。よく見てください、鍵が内側からかけられていることが理解できると思います」

    「そうでしょうね」

    「そして、ここに写っているのが、被害者の謎の男です。よく見てもらえれば、背中の、自殺では不可能な位置にナイフが突き立てられていることがおわかりでしょう」

    「結論をいっていいですか」

     深見剛助は、いつもの様子からは想像もできない、いらいらとした口調でいった。

    「犯人は、この密室で殺人を犯した後、扉に内側から鍵を、なんらかの方法でかけて脱出したんですね。それだけのことです」

    「その方法がわからないからこうしてご足労願っているんじゃありませんか」

    「密室の鍵のかけ方くらい、警察の捜査で解き明かしてくださいよ。わざわざ素人探偵なんか呼ばなくても」

    「小説の展開上、深見さんが捜査に乗り出さないと解決しないトリックが使われているんですよ。きっと。だから、どうか捜査に協力してください」

    「警視庁の管轄する事件とはいえ、どうしてこんなことに」

     深見剛助は肩を落とした。

     東京都心と小笠原諸島を結ぶ長大な地下トンネルの中央付近で事件は起こった。それだけならまだいいが、犯人は、ご丁寧にも、トンネルの全線に渡って、爆薬でもって破壊、封鎖してしまったのだ。

     トンネルの再掘削には、少なめにみても、シールドマシンを使って二十年以上の時間がかかることは確実だった。

     小説の名探偵とワトスン役として、シールドマシンの後を、手がかりを探しつつ、一歩一歩前進して二十年。作者は、この事件をライフワークにしろとでもいうつもりなのだろうか。これでは、他の事件を手がけられないではないか。そのうえ、捜査中にもいつ落盤や浸水の危険があるか……。

     深見剛助も、赤塚刑事も、頭を抱えた。

     しかし、最後に待ち受ける真相に、彼らは耐えられるだろうか。

     作者としてもすまないとは思っているのだ。

     トリックは、密室にはなかった。

     『写真』にあったのだ。

     自分たちの長年の労苦が、インチキな一枚のトリック写真にあったものだと悟ったときの彼らの怒りのことを思うだけで、わたしは書く手が鈍るのを覚えるのである。


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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    なんかこうして旧作を振り返ると、深見剛助ものって、「空間」の趣向よりも「時間」の趣向のほうが多用されている気がしてきた。

    「空間」がうまく使えれば、視覚的にわかりやすいトリックができるんでしょうけどねえ。

    とはいってもアリバイ工作を考える頭もないですが(^^;)

    NoTitle

    警視庁ならではの事件ですね(笑)
    最後は、「恩讐の彼方に」みたいになるかも。
    トンネルが再びつながった、島民たちの喜びの声に、老いさらばえた深見剛助も赤塚刑事も犯人と手を取り合って泣きながら、
    「いいんだ……何もかもこれで……」
    みたいな。

    ……イヤ、何一つ良くないか(^_^;)

    Re: 小説と軽小説の人さん

    笑っていただければ幸いです(^^)

    昔、中学の国語の授業で夏目漱石の話題になったとき、先生が「夏目漱石はイギリスで神経症になっていたが、ユーモア小説を書くことでそれを克服したんだ」といっていましたが、実際に書いてみると、「ユーモア小説でも書くほうは追いつめられるぞけっこう!」という気分になりました(^^;)

    神経がつぶれないうちになんとか自分を取り戻したいと思います。

    途中参加でしたが、シリーズ最初から読んでみます。

    つまり、犯人は写真を撮った人?

    何にせよ、冒頭から終わりまで笑いが止まりませんでした。
    • #10603 小説と軽小説の人 
    • URL 
    • 2013.06/01 16:54 
    •  ▲EntryTop 

    Re: ダメ子さん

    捏造写真よりくだらないトリックだったら関係者全員泣きますな。「隠し部屋」とか「秘密の抜け穴」とか(笑)

    二十年もかけてしまえば
    いまさら写真が捏造だったと言われても信じないで
    なんらかの死体消失トリックを疑い始めそう…

    Re: YUKAさん

    話の都合上、名探偵には謎を解く義務があるのです。

    そのためだけにいる存在ですからねえ……。

    やはり東野圭吾先生の「名探偵の掟」は偉大な作品だったなあ……。

    Re: LandMさん

    この問題でいちばん笑ったのは、東野圭吾先生の「名探偵の掟」で、密室の謎に苦しむ探偵に投げられた、「そんなこと、犯人を捕まえてから聞き出せばいいじゃない」というセリフです。冷静に考えたらそうだよなあ。

    連載小説、完結しましたか! 読みにうかがいますね~。

    こんばんは~^^

    >深見さんが捜査に乗り出さないと解決しないトリックが使われているんですよ。きっと。

    で、笑ってしまいました^^
    確かにね~~。物語がね~~って^m^

    それにしても。。。
    作者は神とはいえ、確かに書く手が鈍りそうです(笑)

    ・・・まあ確かに。
    警察が知りたいの犯人であって、トリックではないんですよね。動機もトリックもどうでもいいから、本物の犯人をつかめてくれればいい。というのは真理としてのセリフがありますね。
    隧道の光の連載終わりました。
    今まで読んで頂きありがとうございます!!
    また連載はしますのでこれからもよろしくお願いします。
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