FC2ブログ

    「ショートショート」
    SF

    政治芸術家

     ←聞いて極楽 →楽観的に
    「よくもまあ……」

     わたしは大統領の政治手腕に対して、内心、半分賞賛し、半分呆れていた。よくもまあ瀬戸際外交の危険な海をうまく泳ぎ渡るものだ。大統領が、「政治芸術家」といわれているのもよくわかる。

    「お待たせした」

     大統領は執務室でわたしに向き直った。

    「伝記を書いてくれるというのはきみかね」

     流暢な日本語だった。この独裁者が親日家だというのはほんとうのことだったようだ。

    「伝記というか、日本をはじめ世界の人々に、大統領の生き方そのものを生のかたちで伝えたいと考えているんです」

     半分はほんとうで、半分は嘘だった。わたしが本を出させてもらっているきわもの出版社が打ち出した企画が、どういうわけか大統領の目に留まり、取材を認められたのだ。出版社は、切れる最高のカードということでわたしを切った。カードとしては、文句をいうことなどできず、この一触即発のいつ戦争になってもおかしくない国へやってきたというわけなのだ。

    「タイトルは決めたのかね?」

    「すべては書き上げてからですが、まず『政治芸術家』以外にぴったりとしたタイトルはないと思いますね」

     わたしは言葉を選んでしゃべった。大統領はうなずいた。

    「そう。わたしにとって、政治は芸術だ。そこできみに質問だが、芸術とは、なんだ? 日本人なら、即答できるはずだと思うのだが」

    「日本的なものの考えかたでいいのなら、そうですね。芸術とは……芸術は……」

     その瞬間、わたしは自分が完全に狂った、危険な男を前にしていることを悟り、顔面から血の気が引くのを覚えた。

     電話が鳴り、受話器を取った大統領はうなずいた。

    「アメリカからの宣戦布告がきた。これでわれわれも遠慮なくミサイルが撃てる。さて、さっきの質問の答えだが、芸術とは、なんだ? わからない顔はしていないようだが?」

    「芸術は……」

     わたしは日本人なら誰でも知っている有名なフレーズで答えた。

    「爆発だっ!」

     そのとたん、外の景色が真っ赤になり、窓ガラスにひびが入った。

     この狂える政治家がじらしながらも待ち望んでいた、全てを爆破し粉砕するアメリカ軍の攻撃が始まったのだ。
    関連記事
    スポンサーサイト



     関連もくじ一覧 ▼ 
    総もくじ 3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ 3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ 3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ 3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 風渡涼一退魔行
    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    もくじ  3kaku_s_L.png 焼肉屋ジョニィ
    もくじ  3kaku_s_L.png ご意見など
    もくじ  3kaku_s_L.png おすすめ小説
    【聞いて極楽】へ  【楽観的に】へ

    ~ Comment ~

    Re: 美沙さん

    ウケてくださってありがとうございます。

    このショートショートは、もうネタがなくて「ブラック・ジョーク」「一発ギャグ」のつもりで書いたんですが、あまり笑ってくれる人がいなかった、という……(^^;)

    不謹慎にも

    吹きました。すごくよくまとまっていると思います。アメリカに先制させるところまで持っていく手腕は確かに自己満足の極地を味わえるのかもしれません。

    Re: LandMさん

    わたしもそんなやつに投票はしたくないです。国をどんなにされるかわかったもんじゃないので。(^^;)

    問題は、外面からでは見分けがつかないことでしょうか? ほんものの人物とエセって……。

    そこが民主主義の難しいところですね。


    個人的にはグッゲンハイムの本筋の続きを読みたいです。あれから歴史はどうなったんだろう? 楽しみにしてますね~。

    う~~む、爆発にもっていくかあ・・・。
    政治が芸術と自負する人に投票はしたくないなあ。。。
    いや、その側面はあると思いますけどね。ただ政治の場合のその絵にいろんな人が絵を描いて、ぐちゃぐちゃになった産物ですから、完成度が低いような。まあ、それをひっくるめて芸術であり、それを愛する政治家をすごいですけどね。

    1700記事突破いたしました!!いつもポール様のご愛読誠にありがとうございます!!何か小説のリクエストがありましたら、またどうぞ。多分、できるなら今ぐらいしかないので。グッゲンハイムシリーズを始めると暫くできなくなるので。これからもがんばります!!
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【聞いて極楽】へ
    • 【楽観的に】へ