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    「ショートショート」
    SF

    怠け者

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     その朝も、ぼくは疲れていた。いつものことだが、どうしようもないほどの疲れだ。なにせ、布団から起き上がって顔を洗いに行くのさえもおっくうなほどの疲れなのだ。ぼくという人間は、どんな簡単なことでも、せっつかれながらも休み休みでないとなにもできない、生来の怠け者なのである。

     肩を叩き、あくびをかみ殺しながら、顔を洗いに階下の洗面台へ行った。階段を下りてひょいと見ると、父と母の寝室の扉はまだ閉じていた。めずらしいこともあるもんだ。怠け者のぼくの親とはとうてい思えないほどの働き者である両親は、朝の四時だか五時だかにはもう目が覚めていろいろやっているはずなのに。

     歳も歳だし、やっぱり疲れているんだろうな、めんどくさいけど、今日の朝食はぼくがトーストでも焼こうか、と思いつつテレビをつけた。

    「臨時ニュースを申し上げます……」

     いつもとは違うアナウンサーが、ぼさぼさの頭とよれよれの服には似合わない深刻な顔でいった。

    「T市の研究施設から漏れ出した、人体を疲労させ、昏睡させる働きのある新種の微生物は、なおも増殖中であります……現時点である程度の免疫ないし耐性を持っていると思われるのは、これまで『疲れやすい』『怠け者』と呼ばれていた一群のグループであり……彼らは慢性的に疲れていたために、この微生物にも……」

     アナウンサーはそこまでしゃべってから、昏倒した。

     ぼくは叫んだ。

    「父さん! 母さん!」

     ぼくたち、病的なまでに疲れやすい怠け者どもが、新人類として新たな文明を再び築き上げるまでには、それはそれは長い時間がかかりそうだった。考えるだけでもくたびれるくらいに。
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    ~ Comment ~

    Re: 火消茶腕さん

    そこらへんを詳しく書くと悲惨になりすぎるのでよしました。

    これでも「復活の日」や「トリフィド時代」の流れをくむ正統派の「破滅テーマ」SFなので……。(ホントか?(^_^;))

    Re: ダメ子さん

    世の中には「無用の用」というものがあるのだ、と信じて自己の存在理由を正当化してます。

    だから韓非子的な国家社会主義は嫌い。

    読ませていただきました。

    とりあえず、この主人公のぼくが、父さん、母さんをどうしたのかすごく気になります。

    介護ってすごく疲れますよね。ほっとくならそんなに疲れないだろうけど。病院も機能していないだろうし。さて。

    環境の変化によって私みたいな人も
    必要になるかもしれない

    私の生きてるうちには来なさそうだけど…

    Re: 安田 勁さん

    この作品を書いたときは、もうなんというかやたらと疲れていました。マイナス要素が積み重なったらこうなっちゃった、という(^_^;)

    アリさんに叱られるかもしれませんが、なにか疲れを取るストレッチでも探そう……(^_^;)

    100匹の働きアリを観察すると、実際に働くのは80匹で、残りの20匹は何もしないんだそうです。
    で、働かない20匹のアリを隔離すると、今まで働かなかったアリたちが働き出すとか何とか。
    いわゆる働きアリの法則とかいう現象なのですが、耐性を持った「怠け者」達もこの状況下だと働きだしたりするんでしょうかね。
    でもそうなると「怠け者」が「働き者」になってしまって、微生物の餌食になっちゃうのかな。
    いや、「怠け者」達はもう既に免疫を持ってるんだから、「働き者」になっても微生物の影響は受けないのかな。
    いやいや、慢性的な疲労感が免疫システム構築の一助となっているんだから、働く/働かないは関係ない?
    いやいやいや、そもそも…

    こんな妄想しながら楽しんでます。
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