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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと君のための冒険(児童文学・特別長編・完結)

    エドさんと君のための冒険 1-2

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    第一章 海の冒険 2

     海のかなたに見えるその点は、じれったくなるほどの動きで、水平線をのろのろと進んでいました。

     エドさんは、夢中で叫び続け、暴れ続けました。からからになったのどからはもうかすれ声しか出てこず、振り回し続けた手足もだんだんと疲れて動かなくなってきました。

     黒い点は、やがて、その動きを止めました。エドさんの心に、絶望に似たものが広がり始めました。見捨てられてしまうのか、そんな思いが心にきざし始めたのです。

     しかし、それは勘違いというものでした。海のかなたの黒い点は、少しずつ、少しずつ、しだいに大きくなってきたのです。ずんずんとその姿をはっきりとさせてきたそれは、一隻の帆船でした。

     どこかで見覚えのある形の船だな、エドさんはそう思いました。でも、どこで見たのか思い出せません。

     その間にも、船はすべるように近づいてきました。肌に感じるこんなわずかな風で、ここまで船を操ることができるとは、船長はかなりの腕の持ち主に違いありません。

     やがて、船は沖に停まりました。ボートが降ろされてくるのが、遠目にもはっきりとわかります。

     助かった、と、エドさんは砂地にへたりこみました。

     四人ほどのこぎ手を乗せて、ボートはエドさんのいる無人島へとすいすいと進んできました。乗っていたのは、いずれもひげをぼうぼうと生やしたむくつけき男たちでしたが、エドさんには、救いの天使でもあるかのように見えたのでした。

    「探偵のエドか!」

     島にボートをつけたこぎ手のうち、もっとも力の強そうな男が、倒れたエドさんの顔を持ち上げ、じろじろと眺め回しました。

    「はい。わたしはエドですが……」

     そう答えたとき、エドさんは、目の前の男をどこで見たのか、はっきりと思い出しました。そうです。別の街で、自分の事務所にとつぜんやってきた、あの男たちの一団。

    「あっ! 海賊の!」

     そう叫んだエドさんに、相手の水夫は、げらげらと笑いました。

    「なにいってんだ。海賊をやめさせてくれたのはお前さんじゃないか。おれたちの船、『熊ひげ丸』で熊ひげ船長がお待ちだぜ。さあ、乗った、乗った! こんなところにいたら、干しあわびになっちまうからな!」

     水夫たちに抱えられるようにして、エドさんはボートで船へと送られていきました。

     それにしても、なんという素敵な船でしょう。エドさんはかつて自分の事務所で、部屋中の海賊たちを吸い込んでいった、ボトルに入ったこの商船の模型を思い出しました。今見るそれは、ボトルに入ったよりも何百倍も、何千倍も大きく、実用的で、美しく、輝いているかのように思えるのでした。

     船べりでは、あのなつかしい熊ひげ船長が、エドさんを迎えてくれました。海賊をやめたい、とエドさんに話していたときの、どこかぎらぎらしたあの目ではありません。その視線は穏やかで、そして満足した光をたたえていました。

    「よう、探偵、元気にしてたか」

     熊ひげ船長は、エドさんを強く抱きしめると、甲板中を歩き回りました。

    「お前さんがこの船を売ってくれたおかげで、商売は繁盛、おれも海軍からにらまれなくてすんでいる。ほんとに、みんな、お前さんのおかげだよ。今日も、見張りがこいつであたりを見回していなかったら、お前さんはあそこで干しだらになっていたところだぞ」

     熊ひげ船長は、そういうと、腰にぶら下げた立派な望遠鏡を軽く叩きました。

    「しっかし、それにしてもわかんねえなあ。あの町の事務所とやらから離れて、あんな無人島で、いったいなにをしていたんだ?」

     エドさんは首を振りました。

    「わたしにもわからないんだ。気がついたら、あの無人島にいたんだよ。お願いだから、どこかもとの世界に帰る道が見つかるまで、この船においてはくれないか? 水夫の仕事も、覚えるから。船はいつも人手不足だって、なにかの本で読んだ覚えがあるんだ」

     それを聞いて、熊ひげ船長は、わっはっはっと大笑いしました。

    「お前が水夫を? お前を水夫にしたら、この船はあっという間に、海の底に沈んで幽霊船だ。心配しなくても、お前はおれの船のお客様だよ。上等の船室を用意してやるから、まあ待っていろ。お前が好きなところまで、連れて行ってやるぞ、探偵!」

     エドさんはほっとしました。しかし、その後で、どこで船を降りるべきなのか、まったくわからないことにも気づいたのでした。


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    Re: ぴゆうさん

    かなり、昔のエピソードや登場人物たちが出てくるので、覚えていないとつらいかもしれません(^_^;)

    でもこれも必然性があって……まあゆっくりとお楽しみください!

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    NoTitle

    こうやって懐かしい人達が出てくるのもシリーズものの楽しさ。
    エドさんの交友関係の広さも見どころになるのでしょうか。
    楽しみです。

    Re: YUKAさん

    長編ですので(^_^)

    いちおう、一章につき二週間のペースで、

    第一章「海の冒険」
    第二章「街の冒険」
    第三章「森の冒険」
    第四章「山の冒険」
    終章

    を予定しております。

    予定は予告なしに変更されることがあります(ひでえ(笑))

    なるほど!
    繋がっているのか~~♪

    で、どこへ行くのでしょう。
    確かに冒険の匂いがする^m^

    愉しみです♪
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