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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと君のための冒険(児童文学・特別長編・完結)

    エドさんと君のための冒険 1-3

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    第一章 海の冒険 3

     エドさんがこの「熊ひげ丸」に乗ってから、ようやく太陽も自分が動かなくてはならないということを思い出したようでした。日は落ちて夜になり、日はふたたびのぼって朝になりました。

    「それにしても」

     エドさんは木の椀に入ったラム酒をちびちびやりながら、熊ひげ船長にいいました。

    「なんとなく、一日の時間が、伸びたり縮んだりしているような、変な感じがするんだけれど、わたしの気のせいですか?」

    「気のせいじゃないさ」

     熊ひげ船長は、まじめくさった顔でいいました。

    「ここは、海の中でもとびきりの難所、迷いの海だ。あまりにだだっ広いため、太陽も星も気まぐれに動き、泳ぐ魚までもが、自分がどこに向かっているのかわからなくなってしまうといわれている」

     エドさんは、それを聞いてむせました。

    「げほっ、げほっ、それじゃ、わたしたちは、ここで迷子になってしまったということですか!」

    「ははは、それっぽっちのラム酒で顔を青くするもんじゃないぞ。大丈夫だ、おれはこの海を何度となく航海している。星や太陽が酔っ払っても、風のにおいをかぐ船乗りたちには、自分がどこを航海しているのか、手に取るようにわかるのさ」

    「ほんとうですか……?」

     エドさんは、すがるように熊ひげ船長を見つめました。

    「ほんとうだとも。それに、この海を越えないと、おれの目的地にはたどりつかないんだ。やっかいだが、しかたがない」

     熊ひげ船長もラム酒を飲みました。

    「その、目的地って、どんなところなんですか?」

     エドさんはおそるおそる尋ねました。

    「天国みたいないいところだぞ」

     熊ひげ船長は目を細めました。

    「珍しい香料や、うまい酒、それにうっとりするような金銀細工のある街さ」

    「ははあ」

     エドさんはぼんやりとうなずき、そして当然の質問をしました。

    「いったい、なんていう街なんですか?」

    「『虹ノ都』」

     熊ひげ船長はそういうと、空気のにおいをかぐかのように、鼻から息を大きく吸いました。

    「風を追っていけば、虹のふもとにたどりつくんだ。おれたちはそこで積荷を売って、お宝を買って帰る。それが商売というものなんだ。みんな儲かって、幸せになれるんだ。海賊をやっていたころには、とうてい味わえなかった幸せだ」

    「そんな宝物と交換するのは、いったいどんな宝物なんですか?」

    「布だよ。絹布だ。虹の都のある国では、土壌のせいか、蚕のえさになる桑が育たない。そんなわけで、絹織物はびっくりするような高値で売れるんだ。そのために、この船にはどっさりと絹が積んであるというわけさ」

    「すてきですね」

     エドさんは、ほっと吐息をつきました。熊ひげ船長が、ほんとうに海賊をやめたことが嬉しかったのです。

    「だが、危険もある」

     船長はまじめな顔になりました。

    「危険?」

    「積荷が貴重だと、それを狙ってくるやつもいる、ということだ。そのために、おれたちもおれたちで、それなりに武装しなくちゃならないというわけだ」

    「海賊ですね」

     エドさんもまじめな顔になりました。

    「だが、まあ、この海にいる間は、ある程度なら安全だ。風のにおいがわかる海賊は、俺の知っている限りでは、ひとりもいない。なぜなら、風のにおいがわかるほどの船乗りなら、普通に商売をしたほうが儲かることをよく知っているからだ。海賊なんて、思うほど儲かるもんじゃないんだ」

    「そうでしょうね」

    「だから、安心して、船旅を楽しんでくれ。それが、おれの、心からの感謝のしるしだ」

     熊ひげ船長はほほ笑みました。

    「船長」

     船室の扉が開いて、航海士が入ってきました。

    「どうした」

    「見張りが、遠くに船影を見つけました。まっすぐこちらに向かってきます。すれ違うようですが、思うよりも早い船足です」

    「監視を続けろ。おれも行く」

     熊ひげ船長はラム酒をひと息で飲みほして、航海士とともに船室を出ました。


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    Re: ぴゆうさん

    海での冒険はまだほんのとば口にすぎません。手に汗握る冒険を、是非お楽しみください!(^_^)

    NoTitle

    大航海時代ってロマンがあるよなぁ
    船乗りたちの高揚感とか
    そのまま乗り移ったようにワクワクしてしまう。
    風を読むなんて楽しさ倍増
    ファンタジーの海はどんなだろう。

    Re: 風波 涼音さん

    あと、記事を多く書きすぎたせいで、「All Titlelist」と「Novel List」が機能不全を起こして役立たずになっている、ということも付け加えておきます……。

    Re: 風波 涼音さん

    えっ? 読めませんか? 読むのに制限はかけていませんが……。

    PCでお読みなら、左端の「MAIN」でウィンドウを開き、「エドさんのふしぎな毎日」のカテゴリから「探偵エドさん」を開けば、一覧が出てくるはずです……とこう書いていてあまりの煩雑さに自分自身で後悔している(汗) もっと簡単に読めるようにするんだった。

    海賊さんですが、正確には「もと海賊」です(^_^) 「海賊たちが来た日」の事件で改心し、カタギの船乗りになったのであります。自衛のための大砲は積んでいますけど。

    ちなみにここらへんのイメージは、ワ○ピースではなくホーンブロワーやボライソーです。時代が違う? いいのっ!

    今晩は

    先日読み始めたエドさんシリーズ今読めないんですね?
    あれから数話読んでたんですが、もしかしてこの海賊さんたちはあの時の海賊さんでしょうか?
    最初はどうなるのかと思いましたが、良い海賊さんに拾われてエドさん良かったですね。
    海賊さん本当にすっかり足を洗ったのでしょうか?
    気になります。

    Re: 矢端想さん

    船長以下乗組員は全員もと海賊、乗っている船は武装商船、ときたらもうそれしかないじゃないですか。お楽しみに(^_^)/

    とはいえ、バトルの内容はご想像とはかなり異なるかもしれませんが……(^_^;)

    この世界ですが、なんでもアリのファンタジー世界です。なぜそんな世界なのか、については、ごにょごにょ(^_^;)

    Re: limeさん

    応援してくださってありがとうございます。応援がなかったら2ヶ月間の長距離を走り通せる気がしません(^_^;)

    一章二週間12日の四章もしくは五章構成です。だから分量的には、これまでのエドさんとほぼ変わりはありません。だからできるはずだ! と思っていますが、はてさて……。

    大丈夫かなわたし(^_^;)

    カタギの船乗りとはいっても、貿易商自体がバクチみたいな商売ですからねえ。まあ、彼らにはほかにできることもないのでありますな。まあそういうことで(^_^)

    「日よ、ギベオンの上にとどまれ。月よ、アヤロンの谷にやすらえ」(ヨシュア記10:12)
    ・・・こういう、歴史上一日だけ日が沈まなかったことがあったという記述がありますな。不思議なことも起こるものです。
    地球の自転が止まったとしたら世界中で大変なことですから、これはむしろ時間軸の外側に自分たちの世界を移動させたということでしょうか(つまり時間を止めた)。この海域もその類でしょうか。時間と空間が因果律から解放された海域。
    ・・・と、話を戻して、もしや海賊対もと海賊のバトルがみられるとか?

    そうか、あのボトルシップの海賊たちですね。
    今はカタギの船乗りなのかあ。

    エドさん、それにしても大変なところに入り込んでしまいましたね。これからどんな冒険が始まるのか、楽しみにしています。
    2ヶ月で完結。ってことは・・・。
    次回も応援しますよ^^
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