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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと君のための冒険(児童文学・特別長編・完結)

    エドさんと君のための冒険 1-8

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    第一章 海の冒険 8

    「なんだ、探偵、知り合いなのか?」

     熊ひげ船長は意外そうにいいました。

    「知り合いというほどじゃありません。でも、ずっと昔、わたしが子供のころに出会ったことがあるんです」

     部屋の中、飲み物が入った三つのジョッキが載ったテーブルについていた、神秘的な服装をした老婆は、歯をむいて笑いました。

    「覚えていてくれたとは嬉しい限りじゃ。あのときくれてやった保安官バッジは、どうしたかな? ……いや。いわんでもいい」

     エドさんは頭を下げました。

    「すみません。たぶん、なくしました。今あるのは思い出だけです」

    「それだけあれば、普通の男にはじゅうぶんじゃ。まあ、そんな安ぴかものはどうでもいい。お前たちにどうしても忠告せねばならんことがある。まずは座れ」

     エドさんと熊ひげ船長がテーブルにつくと、ジョッキのひとつを取り上げた老婆は、ひと口飲んで唇を湿しました。

    「探偵。あたしがお前を呼んだのは、お前に危機が迫っているからだ」

    「危機? 生命の危険ですか?」

    「生命の危険というよりも、精神の危険じゃな。それがもとで、お前、熊ひげとかいったな、お前の船も危険にさらされることになるじゃろう」

     エドさんは首をひねりました。

    「いったい、どんな危険なんです?」

    「それについて詳しく語ることは、あたしにはできん。予言者としての約定がそう定めているのじゃ。あたしにできるのは、ほのめかしと謎かけだけ。予言というものがもしもわかりやすいものばかりならば、これら世界のバランスが崩れてしまいかねないからな」

    「婆さん、おれの船の危険ってなんだ、いったい」

    「この世のもののふりをした、この世ならぬものじゃよ」

     老婆の答えに、熊ひげ船長はうなり声を上げました。

    「ちっとも、説明になってないじゃねえか」

    「わたしには、わかるような気がする」

     エドさんはつぶやくようにいいました。

    「この婆さんのいっていることがか? おれにはさっぱりだ。それよりも、危機とやらをどうやって避ければいいのか、そっちのほうを知りたいね」

     老婆はジョッキの飲み物をもうひと口飲んでから、船長の言葉に答えました。

    「熊ひげ、風のにおいさえとらえられれば、危険は避けることができるじゃろう。だが、お前さんにそれだけの勇気があるかな?」

    「風のにおいがわかれば、危機は乗り越えられるのか。だったら、楽なもんだ。今のおれにはそれがどうしてもできないってことを除いてだがな」

     熊ひげ船長は苦々しげにそういうと、ジョッキをつかみました。

    「婆さん、これ、飲んでいいか? のどがからからだ」

    「お前を救うものがあるとしたら自制心じゃな。忘れるでないぞ」

     熊ひげ船長は鼻を鳴らして、その飲み物をぐいっと飲みました。

    「甘くてすっとする酒だねえ!」

    「鼻炎に効く草と果物で作った酒じゃ。すっとするのも当たり前じゃ」

    「わたしに迫っている精神の危機とはなんですか」

     エドさんは老婆に尋ねました。

    「語るわけにはいかんが、つらく、悲しいことじゃ。お前さんが、二度と立ち直れないくらいに悲しいことじゃ」

    「避ける方法はありますか」

     老婆はうなずきました。

    「ある」

    「それは?」

    「それを話すのはあたしの仕事じゃない。探偵、お前さんが自分で手がかりを探し、答えを突き止めなくてはならん。お前さんがじゅうぶんに賢明であれば、やり遂げられるじゃろうが、失敗の危険性も同じくらいにある」

     エドさんは考え込みながら、ジョッキを手に取り「いいですか」といいました。老婆はうなずき、エドさんはひと口飲みました。

    「熱い! 苦い! これ、コーヒーじゃないですか!」

    「そういうことじゃよ。あたしは忠告したからね。介入しすぎかもしれんが、やるだけのことはせんとな。では、自由にお帰り」

    「あっ! まだ聞きたいことが……」

     エドさんがそういったとき、ふたりは自分たちが、乗ってきたボートの中に座っていることに気づきました。

     船長が嬉しげに叫びました。

    「風のにおいがわかるぞ!」


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    Re: ぴゆうさん

    予言の内容が簡単にわかってしまったら小説の間がもたない(笑)

    小保方さんのあれも、発見というより予言か錬金術の一種ですな。とほほ。

    NoTitle

    予言の真理をついてますよね。
    本当、曖昧でどうとでもとれる。
    後は自分次第つうことでしょうか。
    黒ひげ船長もエドさんも
    これからの旅が容易でないことを覚悟したでしょうね。
    どんな冒険が始まるのか

    海はいいなぁ~
    しばらく行ってない。
    海は怖いけど惹かれるんだよねぇ〜
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