「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと君のための冒険(児童文学・特別長編・完結)

    エドさんと君のための冒険 1-11

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    第一章 海の冒険 11

     時間が、ぎしぎしときしみながら流れていくようでした。

     海賊船は、まっすぐに「熊ひげ丸」に向かってきます。海賊船の大砲が、ちかっと光り、もうもうとした煙が上がりました。砲弾が飛んできます。

    「恐れるな!」

     熊ひげ船長は怒鳴りました。砲弾は、「熊ひげ丸」をぎりぎりでかすめ、海に落ちて、大きな水柱を立てました。

    「敵船、なおも接近中! 信号旗が見えます! 『停船セヨ』!」

     悲鳴のような見張り員の声に、熊ひげ船長は答えました。

    「無視してやれ! やつがいないかのようにふるまうんだ!」

     海賊船は、さらに大砲を撃ってきました。今度は船首の二門の砲がちかっと光り、水柱もふたつ上がりました。

     エドさんは心臓が激しく暴れるように打つのを感じていました。あれは単なる威嚇射撃なのか、エドさんが推理したように、実体のない幻影のようなものなのか。

    「敵船、来ます! すれ違う針路です!」

     エドさんはぐっとこぶしを握り締めました。海戦ではすれ違ったときが勝負なのです。そのときこそ、左右の舷に据え付けられた無数の火砲が、一斉射撃をするときなのです。

    「取り舵! あの船にぶち当たるコースで行け!」

     熊ひげ船長が叫びました。舵のほうからは、悲鳴のような声が上がりました。

    「今、なんと?」

    「命令だ! 探偵の話じゃ、あの船は幻影みたいなものだそうだ! 幻影におびえていたなんてことが知れ渡ったら、海の男として、永遠の恥さらしだ! 根性見せろ! ぶち当たれ! 勇気のあるところを見せてやれ! 復唱はどうした!」

    「は、はい! あの船にぶち当たります!」

     舵取りは奥歯をがちがちいわせながら舵を切りました。

     海賊船の大砲が、次から次へと火を吹きました。砲弾が、不吉な音を立てて飛んできます。

     「熊ひげ丸」の両舷を挟むように、水柱がいくつも上がりました。

     熊ひげ船長は叫びました。

    「探偵!」

    「は、はい!」

     エドさんはその大声に、直立不動になりました。

    「お前さんのいうとおりらしい」

    「え?」

    「あの距離であれだけ売って、帆の一枚さえ破ることができないなんて、普通じゃ考えられねえ。相手がよほど下手くそか、おれたちがよほどついてるか、それともあいつが幻影か、だ。おれは幻影に賭けるぞ!」

     水夫たちも、敬愛する船長のその声に、いくらか生気を取り戻したようでした。

    「斬り込むつもりで前進!」

    「へいっ!」

     船は海賊船に向かって突進して行きました。波と風が船を揺らし、海賊船は、その甲板にいる乗組員の姿が見えるくらいにまで近づきました。斬り込み隊でしょうか、幽鬼のような顔をした男たちが、ロープや銃や短剣を持ってこちらをにらんでいます。

    「ぶつかるっ!」

     水夫の誰かが悲鳴を上げた……瞬間、海賊船の姿はかき消えて、おだやかな海と優しい風が、熊ひげ丸を揺りかごのように揺らしていました。

     熊ひげ船長は、額の汗をぬぐいました。

    「やれやれ、寿命が三年は縮んだぜ」

    「わたしもですよ」

     エドさんも答えました。すべては終わったというのに、どうしても足が震えて止まらないのでした。

    「探偵、おれたちが生きて『虹ノ都』にたどりつくことができたら、それはすべてお前さんのおかげだよ。ひどいことをいって、すまなかった。おい! この紳士のために、ラム酒……いや、ワインを持って来い! 今日は全員に、ラム酒の配給を五割増しだ!」

     船中が、どっと喜びの声に沸きました。エドさんは、次から次へとやってくる水夫たちに、握手されたり、肩をどやされたりして、たいへんな時間を過ごしました。

     交代のためマストから降りようとしていた見張り員が、その足を止めました。

    「陸が見えるぞお!」

     熊ひげ船長をはじめ、乗組員たちのほとんどが、舷側に近寄りました。

     間違いありません。陸地です。小島どころではない広い陸地が、はっきりと見えます!


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    ~ Comment ~

    Re: ぴゆうさん

    第二部は打って変わってシティアドベンチャーです。

    やっぱり探偵には海よりも町のほうが向いているな、と書いていて思いました(^^;)


    航海するだけで命がけだった昔の船には乗りたくありません(笑)

    NoTitle

    陸が見えた時、船乗り達の興奮を考えると
    凄いだろうなと想像する。
    旅をしてから、そんなに時は経っていないけど、陸を見ると安心するよね。
    飛行機に乗って着地すると物凄く安堵するもの。
    それの百倍くらいかしら

    陸には何があるのだろう。
    ポールの想像力を楽しみにしよう。
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