「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと君のための冒険(児童文学・特別長編・完結)

    エドさんと君のための冒険 1-12

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    第一章 海の冒険 12

     エドさんは、どこかぼんやりとした顔で、船の横に見える陸地を眺めていました。

    「ジャガイモとビスケットには、もう飽きたって面をしてるな」

     熊ひげ船長が、笑っていいました。

    「『虹ノ都』までは、どのくらいの距離があるんですか?」

    「陸地伝いに進んで行けば、もう間もなく見えてくる。遅くとも今晩までには港に停泊できるだろう。余計な回り道をしちまったが、もうこれでひと安心だ。で、なにを考えていたんだ?」

    「これからの、身の振り方を考えていたんです」

     熊ひげ船長は、うん、とうなずきました。

    「おれたちと一緒に航海を続けよう、という気になった顔じゃないな」

    「それも考えました。でも、わたしにはなにか、どうしてもやり遂げなくてはならないことがあるように思うんです。それを見つけるまでは、どこかに腰を落ち着けるわけにはいきません」

    「それで、考えは決まったのか?」

    「ええ。船長のお話では、『虹ノ都』はそうとうに栄えた都市のようですね。そんな栄えた都市には、わたしの置かれた状況に対して、助言をしてくれる、知識と知恵のある人たちが多く住んでいるんじゃないかと思うんです。ですから、わたしはその街でしばらく、手がかりを探してみたいんです」

     熊ひげ船長はどこか物悲しげにほほ笑みました。

    「そういうと思ったよ。『虹ノ都』に着いて、絹布を売ったら、給金を払ってやる。お前さんのやってくれたことに比べたらたいした額じゃないが、それでもかつかつ暮らせばそれなりの生活費にはなるはずだ」

    「ありがとうございます」

    「そうそう、あの街には、有名な知恵者の先生がいるんだ。『生き字引』って呼ばれている。あいにくと面識はないが、お前さんのような珍しい人間には、会って知恵のひとつも貸してくれるんじゃないかと思うぜ」

    「そんな人が……ありがとうございます」

     エドさんは頭を下げました。

    「よせよ。まあ、おれがお前さんだったら、とりあえず、小ざっぱりした服を買うところだな。そんななりじゃ、この船の中ではいいかもしれないが、街を歩くのにはちょっとなんだぞ」

     エドさんは、あらためて、自分のかっこうを眺めました。ぼろぼろのシャツとズボン。たしかに、学者の先生に会える姿ではありません。

    「まあ、なんだ、難破だとかしていなければ、来年の今ごろは、おれの『熊ひげ丸』がまた絹布をどっさり積んで、この街にやってくる。なにも収穫がなければ、それから船に来るがいいさ。そのときは、水夫の仕事をみっちりと仕込んでやるぜ。もっとも、お前さんが水夫なんかになったら、船はあっという間に沈没して、幽霊船になっちまうだろうがな!」

     そういうと、熊ひげ船長は、大笑いしました。

    「まあ、それはいいとして、この船が出港した後の、あの街での当座の宿だが、『王冠亭』という宿が安くていい。主人も働き者の正直な男だ。おれの名前を出せばそれなりのことはしてくれるだろう」

    「助かります」

    「ただし、『王冠と錨』というさいころ賭博には手を出すなよ。有り金全部を巻き上げられちまうぞ」

    「賭博は嫌いです。それならばチェスのほうが面白い」

     ふん、と熊ひげ船長は鼻を鳴らしました。

    「それならば、『王冠亭』の常連客に、チェスが三度の飯よりも好きだという、陰気なやつがいたな。そいつと仲良くなれるかもしれない。かなりの金持ちだそうだから、友達になっておいて損はないだろう」

     熊ひげ船長は陸を眺めました。

    「そら、『虹ノ都』が見えてきた」

     エドさんは舷側から身を乗り出すようにして、叫びました。

    「すごい!」

     目の前に広がるのは、巨大な城壁でした。そのところどころから、いくつもの尖塔が顔を覗かせています。そしてなにより、丘の上に立っているのでしょうか、壮麗な石造りの城の姿が、はっきりと見えるのでした。これだけの都市を作り、維持するのに、どれだけの富が必要なのか、エドさんには想像すらつきませんでした。

     船はゆっくりと港に向かって進んでいきます。エドさんの新しい、そしてより困難な冒険の舞台を目指して。


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    Re: ぴゆうさん

    手がかりがないと話の進めようがないので(^^;)

    友人には「ゲームのテキスト?」と辛らつなことをいわれたです(^^;)

    反論できなかったわたしもわたしですが(^^;)

    NoTitle

    熊髭船長がとてもいいアドバイスをくれる。
    新しい街に来た時、何もわからないって困るんだよね。
    引っ越したばかりの時を思い出しちゃったよ。
    今はパソコンで調べたりができるからいいけど、
    それでも知っている人が教えてくれるのが一番だよね。

    Re: けいさん

    この次はシティ・アドベンチャーですよ(^^)

    こういう話、いっぺんやってみたかったんです(^^)

    ふたたび、再会が待ってますよ(^^)

    NoTitle

    おお。いきなりの海洋アドベンチャー。
    熊ひげさんたちとの再会が嬉しかったです。

    もう、最初っからエドさん、試される試される。
    でも、相変わらず冴えていました。さすが。
    危機を脱して陸上へ。

    次はどうなる。

    Re: 青井るいさん

    SF色は今回かなり薄くしています。そのかわりにミステリ色のほうが濃くなっているかな(^^)

    連載はまだ半分というところですので、無理しない範囲でお読みくださいね~(^^)

    というか敵を強くしすぎた。今は物語の収拾をつけるのにてんやわんやです。たはは(^^;)

    エドさんの自分探し冒険。と言った感じでしょうか。
    海賊と言われるとパイレーツ・オブ・カリビアンが脳裏にちらつく僕ですが、なるほど戦わない勇気ですか。エドさんらしい解決法。(なのか?)
    きっと、あの不思議船も後々……。
    ここにポールさんのSFが加わるとどうなるんだろう、と期待一杯です。ほぼリアルタイムで読破、完走します。無理をされない程度に頑張って下さい。

    Re: LandMさん

    まあだいたい250枚くらいを目指している作品ですから、「壮大」な話になるかどうか……ですが、かならずや読者を満足させる作品にしてみせます(^^)

    ちなみに海洋ロマンはこの第一章で終わりです。第二章は一転して、シティアドベンチャーになります(^^)

    第三章、第四章ではさらに趣向を変えた冒険がありますので、乞御期待(^^)

    ・・・むむ。ポールさんらしい、壮大SFの香りがしてきましたね。あるいはファンタジーでしょうか。長編は味があるので楽しみに読ませていただいております。海には夢がありますね。今の世界は海に夢もロマンもないですが、昔は空白を埋めるための果てしなき夢であるものですからね。その夢は果てることがないですからね。面白そうです。

    Re: limeさん

    二か月かけての長編児童文学とはいっても、裏を返してみればもう四分の一は終わってしまったということでして。(^^)

    自分に課した締切が怖い。(笑) ハードだなあこのスケジュール……。(^^;)

    ずっと船の旅というわけではなかったのですね。
    これからが、旅の本番ですか。
    長いファンタジーな予感。二ヶ月ですもんね。
    エドさんが、忘れてしまってることが、全ての鍵??
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