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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと君のための冒険(児童文学・特別長編・完結)

    エドさんと君のための冒険 2-2

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    第二章 街の冒険 2

     これはどうしても、デイヴさんとやらに会ってみなくてはならない、エドさんはそうつぶやきながら、この『虹ノ都』の大通りを歩いていました。街の地理を身体で覚えることが目的でした。たとえそれができなくとも、大学の位置だけは確認しておきたかったのです。

     エドさんは苦もなく大学を探し当てました。拍子抜けするくらい楽なものでした。門番に、入ってもいいかたずねると、門番は、紹介なしでは、学生でも教職でもない人を構内に入れることはできないのだ、と、丁寧な言葉でしたがはっきりと断りました。

     エドさんは肩をすくめ、適当に街をぶらつくことにしました。まずは、物が手に入る雑貨屋と、軽い食事と噂話が手に入りそうな居酒屋、そのふたつについて、適当な店を見つけようと決めました。

     店はあっさりと、手ごろなものが見つかりました。ですが、エドさんの顔は、困惑していくばかりでした。

     どういうことでしょう。街を歩いていると、自分の目指していたところにたどりつくことはできます。しかし、どうしても、その位置関係を、一枚の街の地図として頭に思い描くことができないのです。

     露店のひとつで、道行く人々が食べている黄色く甘酸っぱい果物を買って、同じようにかじっていたエドさんは、内心、途方にくれていました。

    『どういうことなんだ? こんなこと、わたしの探偵としての生活でも、初めてだ。もしかしたら、単に忘れているだけかもしれないが、それでもめったにない事態には違いない。この街は、いったいなんなのだ?』

     残った皮と種をごみために捨てて、再びエドさんは雑踏の中を歩き始めました。丘の上にある城か、そこに近い尖塔を目指すつもりだったのです。

    『高いところからなら、この街がどうなっているかを一望できるはずだ。そうしたら、中でも目についた建物に向かって歩いてみよう。目に付くような建物には、人が集まるだろうから、わたしがどこへ行くべきなのかについての手がかりもつかめるかもしれない』

     エドさんは歩きました。しかし、道はあっちへ行ったりこっちへ曲がったりして、歩けども歩けども、ちっとも街を見渡せそうな場所にはたどり着くことができません。

     エドさんは忍耐強いほうでしたが、足が棒になるほど歩き回り、へとへとに疲れきって、とうとう音を上げました。あきらめて、「王冠亭」に戻ろうと決心したとき、エドさんはこともあろうにその「王冠亭」のまん前に立っていた自分に気がついたのです。

     エドさんはのどの奥でうなりました。事態を歓迎してうなっているわけではありませんでした。この街の、どこか得たいの知れなさに、いらいらするものを覚えてのうなり声でした。

     扉をくぐり、「王冠亭」の食堂の椅子にがっくりと腰を下ろしたエドさんは、満足げに鼻歌を歌いながら仕事をしているテリーさんに尋ねました。

    「すみません。この街の、地図はありませんか? いろいろと見てまわりたいのですが、どうも道に迷ってしまって」

     テリーさんは、「ちょっとお待ちください」というと、カウンターの隅に据え付けられている本棚から、一冊の分厚い革表紙の本を取り出しました。

    「これが地図ですか?」

     本を受け取ったエドさんが開くと、そこにはびっしりと、建物の名前とそれに関する覚え書きがいくつもいくつも書き記されていました。ページを繰っても繰っても、地図は出てきません。

    「これしかないんですか?」

     テリー青年は残念そうに首を振りました。

    「この街、ごちゃごちゃしているでしょう? 地図はないんですよ。その代わりに、その一覧表があります。そのとおりに目印を探していけば、誰でもすぐにその場所にたどり着くことができますよ。この本は、この街にいるどの家にも備えつけられています」

    「それでも、地図がなくちゃ……」

     テリー青年は声を潜めました。

    「噂ですがね、これは、この街を治める代々の市長のお考えによるものらしいんです。もし、この街が戦争に巻き込まれたり、海賊の襲撃を受けたりしたとき、街をほんものの迷路にしておいたほうが、逃げるにしても戦うにしても有利に働く、ということだそうなんですよ」

     そういって、テリーさんは笑いました。

    「まあ、この街の歴史で、海賊に襲撃されたとか、よその国の軍隊に攻め込まれた、なんてことは聞いたことがないんですけどね」


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    ~ Comment ~

    Re: ぴゆうさん

    イメージとしては、昔の映画の舞台にもなった、現アルジェリアのカスバです。

    そういえば、昨日実家で、CSの音楽番組を聴いていたとき、「カスバの女」がかかったんですが、よく考えたらアルジェリアに対してとても失礼な歌だったんだなあ、と思いました。なんせ「ここは地の果てアルジェリア」ですもんねえ(笑)

    森進一の「襟裳岬」に激怒した襟裳岬在住のかたのような人がアルジェリアにいたら、やっぱり激怒するんだろうなあ(笑)

    NoTitle

    もうね、頭の中に
    街の雰囲気が浮かんできました。
    真っ直ぐな道がない。
    どれも狭くて、石畳。
    特徴があるのは看板くらい。
    其の看板を外してしまえば、全て似通っている。
    敵が攻めてきても戸惑うばかり。
    海賊が跋扈している世界。
    よそ者に親切である必要はないよね。
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