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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと君のための冒険(児童文学・特別長編・完結)

    エドさんと君のための冒険 2-6

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    第二章 街の冒険 6

    「おれを探していたんだそうだな」

     ランプのおぼろな明かりが灯るこの店内で、エドさんとテーブルを挟んで座っている男は、デイヴさんと同じ顔をしていました。しかしランプのせいか、その顔には、暗く重苦しい「なにか」が深々と刻まれているように見えるのでした。

    「どうせ、あの兄貴が依頼したんだろう? 探偵なんかに依頼するのは、兄貴のように金を持っているやつくらいだからな。それで、お前はいったいなにをしに来たんだ。兄貴がおれに復讐しようとでもいうのか」

    「依頼者についてはお考えの通りです。しかし、復讐などという考えはお捨てになってください。わたしは、あなたのお兄さんからごく簡単な用を頼まれただけです」

     エドさんの答えに、男……サム教授は、骨がきしむような声で笑いました。

    「簡単な用か! 簡単な用とはね。こんなおれに、なにかをすることができると、探偵、お前は本気でそう考えているのか? こんな薄汚れた賭博場でとぐろを巻いているこのおれに?」

     エドさんはうなずいて、この穴蔵のような店……賭博場「魔女の一撃」の様子をぐるりと眺め回しました。

     エドさんにとっては、あまり長居したくはない場所でした。蒸し風呂のような室内には、パイプの煙と、アルコールと汗のにおいと、そしてどこかぴりぴりした、人をいらいらさせる空気が立ち込めていたからです。

     エドさんが、「賭博場」という考えに至ったのは、「王冠亭」で人々が「王冠と錨」のテーブルに群がっていたからでした。サム教授はチェスは苦手だったようですが、エドさんが前にいた世界では、実の兄を殺すという危険な賭けを平気で行なった男です。そのような、のるかそるかの勝負を好む人間ならば向かうのは賭博場に違いない、という発想が的中したのでした。

    「兄貴がなにをおれにさせたがっているのかわからんが、おれはそんなものどうでもいい。とっとと帰れ」

    「話を聞くだけでも」

    「もうじゅうぶん聞いた。それでもまだ話したいというのなら……」

     にやりと笑ったサム教授は、ふところからさいころを三つ取り出しました。

    「勝負と行こう。『王冠と錨』だ。やりかたは知っているな?」

     エドさんは大きく息を吸いました。

    「やりましょう」

     サム教授は唇の端を吊り上げるようにして、のどでくっくっといいました。

    「そうでなくっちゃな。さて、どこか一箇所に賭けろ。金貨があったら、それを出せ」

     エドさんは、胴巻きから金貨を一枚取り出すと、テーブルに描かれた図形を見ました。そこには、さいころの各面に描かれた模様と同じ絵が、ひとつひとつ描いてありました。王冠、錨、スペード、ダイヤ、ハート、クラブ。エドさんは、「王冠」が描かれたます目に金貨を置きました。

     サム教授は、エドさんにさいころを手渡しました。

    「振りな」

     エドさんは、目をつぶって振りました。さいころは、かたかたと音をさせてテーブルの上を転がり、やがて止まりました。

     サム教授は、口笛を吹きました。

    「ついているな。探偵」

     エドさんは目を開きました。三つのさいころは、すべて「王冠」の目を上にして止まっていました。

     エドさんは、ほっと息をつきました。

     サム教授はエドさんにいいました。

    「本来だったら三倍付けだが、代わりにお前の話を聞いてやる。いったい、兄貴は、おれになにをさせようというんだ?」

     エドさんは、ふところから、デイヴ氏が渡してくれた「金のキング」と「銀のクイーン」の駒を取り出しました。

    「この、どちらかひとつを、あなたに受け取ってほしい、そうデイヴさんはおっしゃっていました」

     サム教授は乾ききった原野のような目でふたつの駒を眺めていました。

    「どちらかひとつ?」

    「はい」

     エドさんがうなずくと、サム教授は顔を憎々しげに歪めました。

    「兄貴というやつは、これだから腹が立つんだ! 善意のかたまりのような顔をして、おれが欲しいものは絶対に渡さない! ふん、あっちがそう来るなら、こっちにも考えがあるぞ」

     サム教授はテーブルからさいころを取りました。エドさんは背筋がぞっとしました。


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    ~ Comment ~

    Re: ぴゆうさん

    それは誤解です。デイヴさんはそこまで陰湿な人間ではありません。

    今も最後のチャンスに望みを託し、弟を救おうとしています。問題は、弟がそれに対してどう反応するかです。

    詳しくは次回以降を……。

    NoTitle

    この兄弟には根深い確執あるようで
    絶対に欲しいものはくれないって
    何か、ある気がする。
    気前がいいようで、実は意地悪。
    嫌なタイプみたいだ。

    Re: LandMさん

    まあ、割が合わない仕事であることも確かですが、ほかにエドさんには自分のこの状況についての頼れる手がかりがないのです。

    溺れるものは藁をもというやつです。

    はたして、エドさんはこの依頼を完遂できるでしょうか? 来週の更新をお待ちください!

    う~~む、この仕事は結構損な仕事なような。
    いや、ある意味探偵らしい仕事か。
    あまり真っ当な依頼があるわけがないか。真っ当な理由があったら、警察などにいくわけですから。
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