「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと君のための冒険(児童文学・特別長編・完結)

    エドさんと君のための冒険 3-4

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    第三章 森の冒険 4

    「エドくん、きみはほんとうに顔が広いな」

     蟻の群れの後をついていきながら、ミスター・エレクトリコは感に堪えたようにつぶやきました。

    「アリオくんの精神世界……考え始めたら頭が痛くなりそうです」

     エドさんはそう答えました。

     頭が痛くなるかどうかはさておき、アリオの率いる蟻の群れは、なんなく分岐点がどこにあるかを見つけ出しました。ここだといわれた木と藪の中に足を踏み入れてみると、そこはたしかに道になっています。幻影の本物そっくりなことに、エドさんは驚くばかりでした。

     いつの間にか、幻影は消え、エドさんの前には細いながらもたしかに道が続いているのがわかるようになりました。

     アリオと群れが、動きを止めました。

    「どうしたんだい?」

     エドさんが問いかけると、アリオは残念なように答えました。

    「ぼくたちの縄張りは、ここまでなんです。ここから先は、よく知りません。なんでも、この道を進んでいくと、『惑ワシノ園』と呼ばれるところに行き当たるそうなんですが」

     エドさんは「旅程表」を読みました。

    「分岐点ヨリ道ヲタドルコト一日、『惑ワシノ園』に至ル。『嘆キノ峰』ヲ目指ス旅人ハ、一刻モ早クソノ場所ヲ抜ケネバナラヌ。コノ森ガ『混迷ノ森』ト呼バレルユエンハ、『惑ワシノ園』ガ在ルタメナリ」

     エドさんはアリオにうなずきました。

    「ここまで連れてきてくれただけでも感謝しているよ。自分が、道を間違えていないことがわかっただけでも、大きな収穫だ。なにか、お礼をしなくちゃな。ちょっと待っていてくれ」

     エドさんは、駄獣の背にある荷物から、宿でテリーさんの奥さんであるアンさんが焼いてくれた、ビスケットを一枚取り出し、割りました。蟻にも持ち運べる大きさのかけらをいくつか、群れの前に置いて、頭を下げていいました。

    「ひどく固いけれど、甘くて栄養のあるビスケットだ。アリエットさんによろしく」

     アリオは喜んで答えました。

    「ありがとうございます! 妻も喜ぶと思います! なにせ、女王ですから、栄養ある食べ物がないといけないんですよ」

     もと来た道を去っていくアリオたちに、エドさんは手を振りました。

    「さて、エドくん。わしらはわしらの道を進もうか」

    「そうですね」

     エドさんは前を見ていいました。

     「旅程表」には、「惑ワシノ園」についてのさらなる説明が書かれていました。旅に出る前、エドさんはその記述を何度も何度も読み返していました。

    「『惑ワシノ園』デハ、旅人ハ自ラノ求メテヤマナイモノニ出会ウ。サレド、ソレハ己ノ心ガ生ミ出シタモノナリ。誘惑ニ負ケ、欲望ニ駆ラレシモノハ、森ノ中ヲサマヨイ、道ヲ失イテ二度ト森カラ出ラレヌモノナリ」

     もし、この記述が正しければ、悪魔の作る幻影に加えて、この森自体の生み出すなにかをも相手にしなくてはならないことになります。エドさんは、果たして自分がそれに打ち勝つことができるかどうか、どうしても自信がないのでした。

    「ミスター・エレクトリコ」

     エドさんはいいました。

    「なんだね?」

    「もし、道を踏み外しそうになったら、わたしを止めてください。あなたの培ってこられた経験があれば、わたしを正しい道へ引き戻すことができると思うんです」

     ミスター・エレクトリコは、エドさんの肩を叩きました。

    「それは、わしも同じだよ、エドくん」

    「同じ?」

     奇術師はほほ笑みました。

    「きみが自分のためにやることは、わしにとっても、とても重要ななにかではないかと思うのだ。わしのほんとうの身体というものがもしあるならば、そいつはなにも気づかんかもしれん。だが、ここでわしがきみに協力することは、そのほんとうの身体にとっても、なにかプラスになることではないか、そんな感じを覚えているのだ。わしはわしのやるべきことをやる。それがなんだかわしにもよくわからんが、そこから足を踏み外すことがあるようだったら、きみに支えてもらわねばならん。おたがい、持ちつ持たれつというところだな。行こうか、友よ」

     エドさんと奇術師は、駄獣を引いて歩き出しました。自分を誘惑するものとはなにか、エドさんは不安を覚えるのでした。


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    Re: カテンベさん

    自慢じゃないけどわたしも誘惑には弱いです(^_^;)

    絶版本とか絶版ボードゲームとかを目の前にちらつかされると、つい財布の紐が……(^_^;)

    カロリーが高いことがわかりきっている惣菜パンが目の前にあると……(^_^;)

    六根清浄、六根清浄!(^_^;)

    こんにちは

    誘惑に負けるとダメなところ。
    悪魔が欲望を抑えるなんてなさそうですし、誘惑に負けまくりな気もしますから、ここで囚われ人になっていたりして(^^)
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