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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと君のための冒険(児童文学・特別長編・完結)

    エドさんと君のための冒険 3-6

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    第三章 森の冒険 6

     ふたりと二頭は、道を進んでいきました。駄獣にも、欲しいもの……おいしそうなえさやきれいな水が見えるのでしょうか、エドさんたちは暴れださないように引いて歩いていくのが精一杯でした。

    「この二匹にはめさせるための口輪があってよかったです。かわいそうだが、放っておいたらどんな危険なものを食べてしまうかもわからない」

     エドさんはいいました。

    「そうだな。毒草、毒キノコ……危険はできるだけ避けなくてはならん」

     ミスター・エレクトリコはそういいましたが、やがて、ふと立ち止まりました。

    「どうしました?」

    「しっ……」

     自分の唇に指を当ててエドさんを黙らせると、老奇術師は目をつぶりました。

    「エドくん、きみには、なにか聞こえないか? 鳥や獣や虫の出す音といった、この密林の当たり前の音とは違う、なにか……人の声のようなものが」

     そういわれて、エドさんも耳を澄ましました。

    「聞こえる。聞こえます。かすかに!」

     エドさんは答えました。

    「誰か、旅人がいるのでしょうか?」

     そういってから、エドさんは自分の間違いに気がつきました。

    「そうです。……そうですね。これは、こう考えるしかないでしょう。これまで、目に訴えかけるだけだった幻覚が、今度は、音を伴い始めた、と」

    「わしも同意見だ」

     ミスター・エレクトリコはエドさんに向き直りました。

    「とんでもない森だ。あの辞書に、ここの抜け方を聞いておかなかったのは、きみの失敗だったかもしれないな」

     エドさんはしばし考え、そして力なく笑いました。

    「そうですね。……でも、わたしにはこうも思えるんですよ。あの辞書は、『旅程表』に書いてあったことをしゃべるだけだったんじゃないか、とね。なにせ、生まれながらの『辞書』ですから。知識は山ほど書いてありますが、応用はわたしたち、使う側に任されることになるんじゃないかって」

     ミスター・エレクトリコはやれやれ、と首を振りました。

    「世の中、どのみちこうなるということか。さて、これからだが……」

    「声のほうに進みましょう」

     エドさんはきっぱりといいました。老奇術師は、驚いたような目をエドさんに向けました。

    「危険ではないのかね?」

     エドさんは首を横に振りました。

    「危険なのは承知ですが、声がするということは、それだけ、この難所の奥に向かっているということではないでしょうか。つまり、目的地である『嘆キノ峰』に対して接近しているということではないかと」

     老奇術師は考え込んでいましたが、やがてうなずきました。

    「一理あるな。しかし、悪魔の罠ということは考えられないかね」

     エドさんはまた、首を横に振りました。

    「あの『地獄の国税局』にも、わたしたちがどう反応するかまでは読みきれないはずです。やつがなにか企んでいるとしたら、わたしたちを疑心暗鬼にさせるか、それともここぞというときに勝負手を打ってくるという形をとるのではないでしょうか」

     ミスター・エレクトリコは再び深く考え込む表情を見せました。

    「疑心暗鬼か。わしらは、その罠にはまりつつあるのかもしれないな。エドくん、きみの判断を尊重しよう。この旅は、きみの旅なのだから」

     エドさんはアリントンとモルデカイ、二匹の手綱を取りました。

    「行きましょう」

     ふたりが声のする方向を向いたとき、ふいになにかが目の前を横切りました。

     エドさんは思わず叫びました。

    「……グレン!」

     それは、緑の森の村で、一年にわたってエドさん夫妻の心をなぐさめてくれた、あの醜い小妖精、グレムリンのグレンに間違いありませんでした。

    「待ってくれ、道を教えてくれ、グレン!」

     エドさんがグレンの飛んでいく方向に足を踏み出しかけたとき、ミスター・エレクトリコにぎゅっと腕をつかまれました。

    「最初に決めたとおりに行く。そうだね」

     抗議しかけたエドさんは、老奇術師の厳しく真摯な表情を見て黙り込みました。


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    Re: 山西 サキさん

    「夢いっぱいの異世界冒険もの」を書こうとしたらRPG風になってしまい、頭を抱えています(^_^;)

    ほんとは「指輪物語」とか「ナルニア国物語」とかの路線を狙っていたのですが、うまくいかないものですね。

    今月末には大団円になるはずですからお楽しみに~(^_^)/

    良いテンポで進んでいきますね。
    まるでロールプレイングゲームです。
    あ、それがモチーフでしたね。
    先が気になってしかたありません。
    グレンが登場しているし、誰の声が聞こえてるんだろう?

    エドさんとミスター・エレクトリコ、2人同時に見えないものは幻影、ということで良いんじゃないの?。なんて思ってましたが。
    でも今度は2人同時に聞こえていますねェ。
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