「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと君のための冒険(児童文学・特別長編・完結)

    エドさんと君のための冒険 4-4

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    第四章 山の冒険 4

    「それはそうでしょう」

     エドさんは、乾いた笑みを浮かべながら答えました。

    「わたしは気がついてしまいましたからね。あなたの正体についても、この世界のことについても」

    「気がついた?」

    「そうですとも。あなたは悪魔だ。テリーさんも悪魔だ。あの辞書も悪魔だ。蟻たちもみな悪魔だ。この世界に来て、わたしが目にしたものは、すべて悪魔だ」

     ミスター・エレクトリコは、呆然としたようにそう語るエドさんを見つめていました。

    「この世界のすべてが、わたしにこの山を登るようさしむけていたんだ。わたしは操られてこの山を登って……」

    「待ちたまえ、エドくん」

     ミスター・エレクトリコは、エドさんの言葉をさえぎりました。

    「きみはほんとうに深刻な勘違いをしている。いや、人間ならばそう考えるのも無理はない。無理はないのだが……間違っているものは間違っているのだ」

     エドさんは疲れた薄笑いを浮かべました。

    「どこがどう間違っているというのですか」

    「まず、この世界のすべてがきみをこの山に登らせようとしていた、ということ、これは正しい」

     ミスター・エレクトリコは、なにかいおうとしたエドさんをさえぎりました。

    「しかし、その理由が違うのだ。なぜなら、この山は、きみが思うような、罪の山ではないからなのだ」

    「だったらなんなのですか」

     そう尋ね返したエドさんに、老奇術師ははっきりとした声でいいました。

    「きみの恐怖だ」

    「恐怖?」

    「恐怖という言葉がしっくりこなかったら、恐れだ。不安だ。それがこの山のほんとうの正体なのだ」

    「わたしがなにを恐れているというのです」

     ミスター・エレクトリコはかぶりを振りました。

    「それはわしの答えることではない。きみが自分の胸に問うことだ」

    「悪魔の存在はどうなります」

    「悪魔はいなかった。いや、いたのかもしれん。だが、いたとしてもそれは、きみをこの山に向かわせるために、きみが自分で作り出したものだったのだ」

    「わたしが?」

     エドさんの声は、先ほどまでの自信を失い、わずかに震えたものになってきました。

    「わしはいったはずだ。この世界に存在するすべてのものが、きみをこの山に登らせるためのものだったと。悪魔がしたことはなんだね。きみの前に課題を作り出し、そしてそれを通過させることだ。いわば、きみやわしが悪魔と呼んでいたものは、きみにとっての道しるべのようなものだったのだ」

     エドさんは混乱してきました。

    「悪魔が、道しるべ……?」

    「きみが、この山を飽きずに登っていられるのはなぜだね。わしらが悪魔と呼んでいたものが、最後にはわしらの目を開いたからではないか。やつがきみをほんとうに絶望させたいのだったとすれば、あのままわしらを放っておいて、きみに『妻との溝の存在を確かめることすらできない』ようにしていればよかったではないか」

     ミスター・エレクトリコは、一呼吸おいていいました。

    「悪魔はきみだ。きみの弱い心だ」

     エドさんは頭ががんがんしてくるのを感じました。

    「きみは自分で越しがたい壁を作り出し、旅をやめるよう自分に仕向けていたのだ。それでも、きみは心の奥底で葛藤を続けていた。そのために、壁を突き崩せるだけの、『納得できる理由』を作っては、旅を続けてきたというわけだ。壁はどんどん厚さを増し、最後にはきみは『絶望』することで自分をだました。きみの絶望は、ほんものの絶望なんかではないのだ」

    「なんでそんなことがいえるんですか!」

     エドさんは、追い詰められたように叫びました。老奇術師は、自分を手で指し示して答えました。

    「わしがいるからだ。わしがこうして、ここまでついてきているからだ」

    「あなたは」

     エドさんの声は消え入りそうでした。

    「あなたは、自分をなんだというのですか」

     ミスター・エレクトリコは、自信に満ちた声で答えました。

    「きみが必要としていたもの……希望だ。明るい前向きな心。わしはそれなのだ」


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