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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと君のための冒険(児童文学・特別長編・完結)

    エドさんと君のための冒険 4-7

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    第四章 山の冒険 7

     エドさんには、自分の旅が終わりに近づいてきたことがわかりました。もはや指呼の間となった山頂に、ほんのわずか、輝く光のようなものを認めたからです。

     遠目には、それは人のような姿をしているように見えましたが、誰なのかエドさんにはわかりませんでした。

    「クロエ!」

     エドさんは叫びました。

    「そこにいるのはクロエなのか! わたしだ、エドだ! きみの夫の、エド・マクファースンだ! きみだとしたら、わたしはきみに話さなければならないことがあるんだ! どうしても!」

     エドさんの声が聞こえたのか、その光るシルエットは、わずかに身じろぐようにゆらめきました。

    「待っていてくれ! すぐに、そちらに行くから!」

     エドさんは足を速めました。しかし、どうしたことでしょうか、歩めども歩めども、光のもとへはたどり着けません。もどかしく思えば思うほど、見えない壁のようなものができているようなのです。

     エドさんの胸に、消え去ったはずの不安が、また首を持ち上げてきました。

    『クロエは、そんなにもわたしに会いたくないのか……?』

     エドさんの耳に、「地獄の国税局」のあのいやらしい声で、笑い声が聞こえてきました。しかしそれはかえって、エドさんの心に火をつけたのでした。

     エドさんは、自分の両の頬を、手で激しく叩きました。深々と息を吸い込むと、大きな声で歌を歌い始めました。

    「……道はでこぼこ、身体はくたくた、されどわれらが心は進む。前進!」

     歌いながら歩むと、いくらか光の人影に近づけた感じがしました。エドさんは、ほっとするとともに、なぜだか嬉しい気分になってきて、さらに大声で歌いました。歌いながら歩を進め、斜面を登りました。

    「……道はでこぼこ、身体はくたくた、されどわれらが心は進む。前進!」

     歌えば歌うほど、嬉しく楽しい気分は強くなってきます。

    「……道はでこぼこ、身体はくたくた、されどわれらが心は進む。前進!」

     その光るシルエットは、しだいにエドさんの目にもはっきりと見えてきました。

     エドさんは目をこすりました。

    「クロエ……じゃないのか?」

     それは青年男性の姿をしたシルエットでした。シルエットは、山頂付近の岩に、居心地が悪そうに座っていました。

    「誰なんだ?」

     エドさんはゆっくりと近づいていきました。もはや歌を歌う必要も、見えない壁を感じることもありませんでした。『嘆キノ峰』という言葉が嘘に思えるほど、心は浮き立っています。それにしては……あのシルエットは、どうしてあんなに、不安げにゆらめいているのでしょう?

     ようやく山頂にたどり着いたエドさんは、自分に対し顔をそむけたそのシルエットに近づき、そっと手を取りました。

    「……よかった。きみは、クロエに似たんだな。わたしに似ていたら、どうしようかと思っていたんだ」

    「ぼくが誰だかわかるんですか」

     青年はつぶやくようにいいました。

    「わかるとも。きみは、わたしとクロエとの間に生まれようとしている、子供だ。きみを通して、わたしとクロエとはつながっているんだ。もっと早めに気がついてしかるべきだった。だが、もう大丈夫だ。わたしがここにいる。わたしは……」

     青年は顔をそむけました。

    「どうしたんだ?」

     エドさんは、驚いて、顔をそむけた青年に問いかけました。

    「お父さん、ぼくは、お別れをいうためにお父さんを待っていたんです」

     青年はいいました。

    「ぼくは生まれてはいけないんです」

     エドさんは愕然としました。

    「なんてことをいうんだ!」

     青年の肩を揺すって、エドさんは叫びました。叫んだ後で、我に返りました。

    「……なぜだい。きみは、どうしてそんなことを考えることになったんだ」

     エドさんは柔らかい声でいいました。青年は答えました。

    「妹を守らなくちゃいけないからです」

    「妹?」

     エドさんは目を丸くしました。丸くした後で、すぐにそれがなにを意味するのかを理解し、歓喜の声を上げました。


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    ~ Comment ~

    Re: ツバサさん

    この物語は、ここからの数節を書きたくて書いたといっても過言ではありません。

    エドさんと青年との対話を、どうかお楽しみください!

    なるほど、エドさんとクロエさんとの間の子供ですか~。
    それにしても青年の「妹を守らなくちゃいけないからです」という言葉が気になりますね(゜゜)
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