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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    エドさんと君のための冒険(児童文学・特別長編・完結)

    エドさんと君のための冒険 終章

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    終章 君のための冒険

     病室のベッドの脇で、エドさんは、汗と涙にまみれた顔のクロエさんと、その手に抱かれた、産湯につかりたてで元気に泣いている双子の赤ちゃんとを、なにか偉大なものを見るような思いで見つめていました。

    「よくやった……よくがんばってくれた、クロエ!」

     エドさんはそれだけをいうのが精一杯でした。あふれてくるものが多すぎて、言葉にならなかったのです。

    「あなたの子供たちよ。あなたと、わたしの……」

     クロエさんも、それ以上の言葉が出ないようでした。

     短い沈黙の後、先に口を開いたのはエドさんでした。

    「クロエ。実は、きみに謝らなくちゃならないことがある。わたしは、きみが子供を産むということが、怖くてたまらなかったんだ。おかしいだろ? そのうえ、その不安を紛らわせるため、きみのことを、取り替えることができるようななにかみたいに思ってしまったんだ。どういうことかは説明しにくいんだけれど、こんなことを考えるなんて、わたしは夫としても、父親としても失格だな」

     クロエさんは汗まみれの顔で笑いかけました。

    「そんなことで父親失格なら、わたしは母親失格だわ。痛みと苦しさから、子供を産むのに、どうしてこんな目に遭わなくちゃならないんだって、ちらっと考えてしまったの」

    「なんだ、そんなことを気にしていたのか」

    「あなたこそ」

     ふたりは、顔を見合わせると、声を上げて笑い始めました。

     笑い終えてから、エドさんはいいました。

    「きみに、伝えておきたい話があるんだ。待っている間、心配していたせいか、不思議なことを体験……いや、考えてしまったんだよ。わたしと、きみが抱いている息子についての、長い長い話だ」

     クロエさんもいいました。

    「わたしも、あなたに伝えておきたい話があるの。気が遠くなりそうだったお産のときに、どこかで体験した、長い長いお話。そこには、わたしと娘が出てくるのよ」

     ふたりは、心の底から笑いました。難しい顔をした看護婦さんが、笑うふたりの手から赤ちゃんを取り上げて、新生児用のベッドへと向かいました。

     看護婦さんは、ベッドにいまだ泣き止まぬ赤ちゃんふたりを寝かせると、いつもは決して崩さない難しい顔を、ちょこっと緩めて、ほほ笑みました。それもつかの間でした。看護婦さんは難しい顔に戻ると、せかせかと歩き始めました。始まったのです、いつもと同じ、病院の忙しい日常が。

    エドさんと君のための冒険・了


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    ~ Comment ~

    Re: ダメ子さん

    ダメ子さんなら登りきれますよ。

    問題はわたし自身で……中の人さんの助けを借りないといけないかもしれません(^_^;)

    中の人さんが助けを求めておられたときは、わたしがお力になりたいです。精神世界で(^_^)/

    お父さんおめでとうございますです

    私も精神世界に行ってみたいと思いましたです
    でも私じゃ登りきれなさそうかも…
    と早くも山の力にやられて?
    前進!前進!

    Re: 山西 サキさん

    いえいえ~誰にもうっかりミスはありますよ(^^)

    わたしは海外ファンタジーで、同じひとりの人物をふたりの別の人物だと思い込んで途中までなんの疑問もなく読んでいたことがあります。恥ずかしい話ですが(^^;)

    なんて作品だったかなあ。

    失礼しました。

    確かに双子ですね。
    どこを読んでるんでしょうね?
    きちんと書き込んであるにもかかわらず読み込めてませんでした。
    恥ずかしいです。
    自分の作品が書き終わってホッとしすぎたでしょうか?
    気合いを入れておきます。

    Re: 矢端想さん

    ありがとうございます。

    いや、長編を発表し終わった後のウーロン茶の味は格別であります。

    ……来週からの更新どうしよう(^_^;)

    あっ、肝心なこと書くの忘れた!

      完結おめでとう。


    ・・・失礼失礼。

    Re: レバニラさん

    それは目標が2ヶ月間ですから、そこらへんは量と時間を計算して書きます。天上での話をもっと書く予定が、息子と対話した時点でこれ以上長くしても蛇足だ、と気がつき、第四章が短くなってしまったのは誤算でしたが。

    この長編はこれで終わりですが、もしかしたら、またなにかの拍子にエドさんがひょっこり現れるかもしれません。どこでどう、とはわかりませんが……なにしろ気まぐれな作者ですので(^_^)

    Re: 山西 左紀さん

    ありがたいご評価をいただいて実に嬉しいです。

    最高の結末になるよう、がんばって書いた甲斐がありました。

    クロエさんはクロエさんで、生まれてくるのが不安な娘を励ましていたんでしょうね。

    子供が男か女かお悩みのようですが、……「双子」です(^_^)

    ちょっとわかりづらかったかな(^_^;)

    Re: limeさん

    お褒めのお言葉、恐縮です。

    ラストシーンは映画っぽく締めてみました。看護婦さんを気に入ってくださってありがとうございます(^_^)

    エドさんには辛い旅だったかもしれませんが、かわいい双子の赤ちゃんを得て、辛さ以上の喜びがあった、とわたしは信じます。

    前作で妊娠を書いた以上、出産まで書かなくてはウソだろう、ちょうど期間もぴったりだし……と書いてみましたが、喜んでもらえてほんとうにありがたいです。書いて良かった!

    Re: 矢端想さん

    ♪カラーテレビにしたって
     色はいろいろあるでしょ
     男と女にしたって
     色はいろいろあるのよ

    と、歌の文句にもあります。

    矢端想さんは矢端想さんです。

    それでいいではないですか(^_^)

    ああ、これで物語は完結なんですね。
    漠然とですが、何かまだまだ続くものかと思ってましたよ(^^;

    何はともあれ、お疲れ様でした。

    とても良かったです。
    ご出産おめでとうございます。
    こういう結末に持って行くんですね?エドさんもクロエさんも幸せそうで良かったです。一層夫婦の絆が強まったようです。
    エドさんの冒険の結末としては最高に上手くいったように思います。
    自分の子供が生まれる…これってある意味、母親になる者にとってはもちろん、父親になる者にとっても究極の大冒険なんでしょうね。
    でも生まれた赤ちゃんは男の子?女の子?
    あれ?

    出産は、女の仕事、と思われがちですが、エドさんのように苦悩して、自分の息子たちを手に抱くのだとしたら、これもりっぱな一つの出産ですね。

    そして、このお話の裏に、クロエさんのもうひとつの冒険があったのかと思うと、遥かな広がりと深みを感じます。

    最後の看護婦さんの描写が、なんとも好きだなあ。

    辛いけど、優しい冒険でした。
    エドさん、ポールさん、お疲れ様でした^^

    女と違い、男は自分の子が産まれたという「身体的実感」がない。
    母体から白いもんと赤いもんにまみれながら小さな手足をばたつかせて出てきた「生き物」に目を見張る。
    そして「ああ、これがオレの子なんだ、オレの子なんだ」・・・と、理屈で感動する。

    ・・・そんな男は冷たい人間なのでしょうか。
    今まで思ったことのない類の「可愛い」という感情が初めて芽生える瞬間ではあるのだが。

    (また嫌われる・・・)

    Re: カテンベさん

    恐縮です。<(_ _)>

    男親といってもさまざまなパターンがあるでしょうが、わたしならこういう考えになるだろうなあ、と思いながら書きました。

    エドさん一家に幸あれ、であります。(^_^)

    Re: LandMさん

    お帰りなさい~(^_^)/

    わたしも冒険とは縁のない生活をしています(^_^;)

    ちょっとは縁が欲しかったりします(笑)

    グッゲンハイムも読みに行きますね~!

    こんにちは

    絆がより強固になったんでしょうね
    男親て多かれ少なかれエドさんみたいな心境になるんでしょうね(^^)

    最後まで読ませていただきました。ついでに帰りました。お待たせしてすいませんでした。LandMです。
    う~~む、読んだ限りはパンドラの箱の中を旅しているようなかんじですね。この中から希望を見つけるかどうかはその人次第なんでしょうね。私だったら、そもそも冒険しないでしょうね・・・というヘタレなことになると思います。

    Re: 黄輪さん

    ありがとうございます。

    第三章から第四章にかけては、エドさんにとっての「モルドール」みたいなものだったのです。あそこを書かなくては、ラストシーンを書くことはできない、そう考えていました。

    詳しくは明日の「あとがき」で書きますが、ミスター・エレクトリコは、魔術師ガンダルフのイメージを強く受けています。映画だけではなく、「指輪物語」はかなりわたしに影響を与えていたようです。

    また、ミスター・エレクトリコという名前は、ブラッドベリからの引用でもあります。悩めるエドさんを導く存在として、あれ以上の名前は思いつかなかったのです。

    書く前はいろいろ悩んでいましたが、結果的にはわたしの作品でも稀なほど筆が進んだ物語でもあります。

    がんばった甲斐があればいいのですが……。

    長編お疲れ様でした!
    今までのシリーズの集大成、楽しく拝読させていただきました。

    ただ、3章の終わりから4章の始め、読むのがしんどく感じました……。
    あれだけの強烈な不安、不遇、不信感。
    よくあそこから立ち直れたな、と。
    自分だったらそのまま押し潰されてしまいそうです。
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