「ショートショート」
    SF

    樹林墓地

     ←それが殺人というものでしょう →同根
    「わたしたちの県で初の樹林墓地を造られるそうですが、順調に行っているようですね」

     インタビュアーからマイクを向けられて、担当者の男はどこか薄笑いを浮かべて答えた。

    「ええ。かなり昔に東京都が、いいモデルを作ってくださいましたからね。われわれもそれにあやかろうというわけで」

    「墓地に納骨したい、というかたは多いんですか?」

    「一万人の募集が、全て満杯ですよ。ありがたいことです」

    「募集は、公平に行ったんですか?」

     担当者の男は、首を横に振った。

    「いえ。こないだの原発事故で、亡くなられたかたを中心に埋葬させていただいております。あの原発事故では、埋葬地やそのための経費に困っておられるかたが多いですから、われわれがそうしたかたの受け皿になろうと」

     インタビュアーは感銘を受けたようだった。

    「素晴らしいことだと思います。あの事故は、福島第一やチェルノブイリをしのぐ悲惨なものと……え?」

    「放射性物質についてはご安心ください。この樹林墓地の周りは、プールのようにコンクリートで覆われています」

     インタビュアーはほっと息をついた。

    「そうですよね。それで、そうした被災者の霊をお慰めするために、どんな木を植えられたんですか?」

     担当者の男は叫んだ。

    「実のなる木です!」

    「は?」

     インタビュアーは凍りついた。

    「この墓地では、さまざまな、食べられる木の実がなる木を植えます。当然、収穫した実は処分しますがね、表向きは」

     担当者の男の声はもはや憎悪を隠してはいなかった。

    「しかし裏では、検査をかいくぐって、木の実が外へ持ち出されるでしょう。そして、時が流れて、事故も風化し、やれやれと喜んでいる、あの電力会社の幹部の子どもたちの口に入ることになるんだ。それが、スリーマイルからも、チェルノブイリからも、福島第一からも、なにも学ばずに、ただ高給をもらって、この未曽有の人災になにひとつ責任を取らなかったやつらへの、正当な贈り物となるんだ」

    「は……話していいんですか」

    「わたしの余命は後三年だそうです。脅迫罪で捕まろうとかまいやしません」

     担当者の男は妙に青白い顔でいった。

    「報道してくれたっていいんですよ。むしろそのほうがいい、やつらに『見えない敵』から狙われる恐怖をたっぷりと味わってもらえるんだから。それでも、われわれが被った、『風評』に比べればささいなもんだ」

     担当者はにやりと笑った。

    「わたしも、死んだらここに眠ることにしてるんです。どうですか? フルーツでも」

     インタビュアーは震えることしかできなかった。
    関連記事
    スポンサーサイト



     関連もくじ一覧 ▼ 
    総もくじ 3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ 3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ 3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ 3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    【それが殺人というものでしょう】へ  【同根】へ

    ~ Comment ~

    Re: 山西 サキさん

    もうネタもストックもないのでその日見たニュースをもとにショートショート書いている状態(^^;)

    昼のうちは暑さにやられてあたまがくるくるくるでしたが、夜になると落ち着きました。

    明日は映画を見に行くつもりです。リフレッシュリフレッシュ!(^^)

    こんばんは~
    ブラックで怖いですねぇ。
    タイムリーでとても面白かったです。
    サキはインタビュアーも被害者の1人かと思ってました。
    インタビュアーも最後にニヤッと……

    サキは今のところ暑さにやられずにおります。

    Re: 真城 青瑛さん

    人間の憎悪には果てがないものであります。こういう憤懣を抱えている人は多いと思います。なんとかそれを破壊的でない方向に持っていかなければならないのですけど、うまくいったためしは……(´・ω・`)

    Re: LandMさん

    風刺もSFという文学形式のやるべきジャンルのひとつではあるのですが、「その他」に分類すべきだったかなあ。

    憎悪の連鎖はおっかないですよね。今も日本がその泥沼にハマっていますが。

    訪問についてはすみません、スマホの電池残量が減ってきたこととこの夏の暑さで、なかなか……先立つものがないので、機種変までこの電池パックで乗り切るつもりでして(^_^;)

    日本人に反抗する度胸があれば、あり得ないことでもないと思います…

    死ぬ前に何かやってやろうという人は覚悟が普通とは違いますね

    ・・・SFより風刺のような気がしますけどね。
    憎悪が語り継がれるのが人の歴史ってものですけどね。
    ・・・そういう話を私も書いているのか。

    最近は忙しいのか体調を崩されているのですかね。お体ご自愛ください。また訪問楽しみにしておりますね。
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【それが殺人というものでしょう】へ
    • 【同根】へ