「残念な男(二次創作シリーズ)」
    虐待(二次創作中編・完結)

    虐待 2-1

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     2

     ほうほうのていで試写会場にたどり着いたときは、もうなんとでもなれ、という気分だった。こんな日なのだから、劇場を間違えている可能性もあるな、そんなことを考えて、おそるおそる掲示板を見た。

     ここで間違いなかった。びっくりするほどの大きな目から、真っ赤な血の涙が流れてくるポスター。そこには、大きな字で「虐待」と書いてあった。

     わたしは受付にチケットを渡し、パンフレットをもらって中に入った。

     頭の中はさっきの女のことでいっぱいだった。くそっ、どうしてわたしはいつもいつもこうなのだ。帰りに、どこかの安酒場に入って浴びるほど飲んでやる。やけ酒というのも、たまにはいいだろう。もらった給料から飲んでいるのだ、わたしの金だ。

     席は早いもの順だった。すでにあらかたのいい席は埋まっていた。空いているとしたら、最前列の端、首を変なふうに傾けないとまともにスクリーンが見られない席くらいのものだった。

     わたしは天を呪いながらその狭くて堅い椅子に座った。

     パンフレットを読む気はなかった。映画を見る前は、事前に情報を仕入れないというのがわたしのやりかただった。そのほうが楽しい。

     時計を見た。そろそろ上映だ。サングラスを外し、携帯の電源を切った。

     会場のおしゃべりがやんできた。照明が暗くなる。

     ブザーが鳴った。わたしは首を気にかけながら、スクリーンを見つめた。

     映画が始まった。

     スクリーンに最初に映し出されたのは、暗黒だった。わずかな光でより強調された、いやになるほどの闇。これを演出として撮っているのなら、なかなかのものだ。

     やがて、少しずつ、セリフが聞こえ始めた。どこかで聞き覚えのある声である。その内容は、子供と母親の会話だった。いや、会話ではない。おびえる子供に、母親が次から次へとひどい罵倒を投げつけ続けているのだ。

     わたしは、まさか、と思った。

     暗闇に真紅の文字で、「虐待」というタイトルが浮かび上がった。

     わたしはごくりと唾を飲んだ。

     神経をかきむしるかのような激しいピアノ曲が鳴り響き、一気に画面が切り替わった。

     ふたりの人物が映っていた。わが子をなじり、暴力を振るう母親と、泣き叫び、謝ることしかできない子供。

     わたしは叫びそうになった。

     間違いない。

     鬼気迫る表情で、娘に激しい暴行を加えている母親は、わたしがついさっき電車の中で助けた、あの女に相違なかった。
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    ~ Comment ~

    Re: 卯月 朔さん

    だからR-15映画ですから! お芝居ですから! 

    ちなみに映画のモデルは、原作に忠実に映画化したら俳優の好演(怪演?)により映画賞を総なめにした、わたしが開始五分で見ていられなくなった「愛を乞うひと」と、映画会社としては「涙の感動闘病もの」にするはずだったのが、監督と脚本の暴走により「血も凍るホラー映画」になってしまい、わたしが「予告編」だけで見ていられなくなった「震える舌」です。

    ……誰がわかるんだ(^_^;)

    この映画、こわい、こわいよう……(((( ;゚Д゚)))

    タイトルど直球の内容で、しかもあの女の人は試写会に呼ばれたお客じゃなくて女優だったとか! こわいお母さん役、こわい(((( ;゚Д゚)))

    こういうのは、本当、いやですねえ……

    女のひとの用事って、舞台挨拶なのかな? ここからどうなっていくのか、もうまったく予想がつかなくなってます><

    Re: LandMさん

    いま、児童虐待に関する本を読んでいますが、ページを繰るたびに陰鬱な気持ちになります。

    自分には手に余る問題を取り上げてしまったか、と思わないでもないですが、なんとか完結させたいものです。

    さて、真っ白な原稿と格闘するか……(^^;)

    親の虐待は結構。。。
    深い問題なんですよね。
    心理的状況など追うと、結構・・・。。。
    死ぬとか栄養失調とか痣が残ると表面化しやすいですが。
    そうでないと、表面化しないのが常ですからね。

    シングルだと子ども親がいないと自分がどうなるのか?
    ・・・そこまで考えて、何も言えないと言うのは多いですからね。
    後は罪の文化と恥の文化の兼ね合いもありますね。
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